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一話

「今日の放課後、二人きりで話したいことがあるの。付き合ってもらえる?」


「……別にいいけど」


 学校中から聖女と呼ばれる美少女、涼風悠月(すずかぜ ゆづき)が俺こと天月流星(あまつき りゅうせい)に話しかけてきた。


 俺と聖女は星丘高校の二年生だ。聖女とは同じクラスで、よっぽど大事な用がない限り、会話はしない。そもそも聖女が男子と話しているのを見たことがない。

 それもこれも聖女の友人兼ファンクラブが常に聖女の側にいるから、異性は聖女に近付けないのが現状だ。


 そんな聖女が俺に何の用だろうか。そもそも急用なら今ここで話せばいいことでは? まわりに聞かれたくないのだろうか。


 もしかして、告白か? と、一瞬、馬鹿な考えが頭をよぎった。が、しかし、俺は身長だけは平均より少し高めだが、顔面偏差値は普通。

 成績も運動神経に至っても何から何まで平均の男だぞ? そんな俺が、容姿端麗で成績優秀、その上、目線に困るほどドデカイお胸を持つ聖女から告白など、それこそありえない話だ。


「告白だ! 羨ましすぎる!」

「聖女と会話出来るだけでも死ねるレベルなのに、放課後に呼び出しだと!?」


「……」


 こんな具合にクラス内だけでも聖女は人気者。彼女いない歴=年齢の陰キャとは比べようがないくらい、聖女は陽キャ。そもそも俺とは住む世界が違うのだ。聖女を陽キャ呼ばわりすること自体、ファンクラブからしたら「死刑」に値するんだろうな。


「アンタみたいな陰キャが聖女様と二人きりなんて……! 聖女様を妊娠させる気!?」

「聖女様に何かあれば私たちが許さないから!」


「……」


 今、とてつもなくヤバい言葉が飛んできた気がするのだが、ここで反撃をすると後が怖いから、ここは俺が大人になって聞き流してやろう。


 聖女にはいくつかのファンクラブがあるのだが、その中でも一番厄介なのが、通称「聖女様に近付く男は排除せよ団体(ファンクラブ)」である。彼女たちに目をつけられれば最後、家を特定され嫌がらせを受けるという。それは家族にも迷惑がかかるから是非ともやめていただきたい。


 そんな俺は今年の春から一人暮らしをしている。彼女たちには何がなんでも自宅を特定されないように細心の注意を払おうと思う。……俺自身の平穏のためにも。


「聖女様が害獣を二人きりなんて危険すぎます! 何かあってからでは遅いんですよ」

「私たちが監視しますから、どうぞご命令を!」


「ひどい言われようだな」


 言うに事欠いてクラスメイトを害獣呼ばわりとは、聖女のファンクラブは言うことが違うな。


 しかも、監視とか命令ってワードが教室で飛び交うと、ファンクラブというより、もはや宗教だろ……と心の中でツッコミを入れてしまった。


「みんな、落ち着いて。私は大丈夫だから」


「ですが……!」

「こんなクズと会話したら穢れてしまいますっ!」


 ビシッと親指を立てて、こっちを指さしてきたファンクラブの一人。これは疑いようもなく俺のことだ。いや、むしろ会話の流れ的に俺しかいない。


 ……そうか。俺はクズだったか。もうこの際なんでもいい。それで彼女たちの気が収まるなら俺はどんな酷い言葉も受け止めようじゃないか。


「今日だけは彼……天月君と二人きりにさせてほしいの。私からのお願い、聞いてくれる?」


「聖女様がそう仰るなら……」

「クズつ……天月と放課後のお話楽しんできてください」


「みんな。ありがとう」


「……」


 今、誰かクズ月とか言いかけませんでした? というより、聖女が俺の名前を知っていた、だと? いや、普通ならクラスメイトだから知っていて当然なのだが、まさか聖女から名前を呼ばれる日が来るなんて夢にも思わなかったな。


 普通の男子なら聖女に名前を呼ばれれば失神ものだろう。だが、俺は他の男子とは違う。俺は聖女を尊敬していないし、女性としての魅力も感じていない。

 ましてや異性として好きという感情さえないのだ。それは聖女のことをただタイプじゃないからという理由ではない。


 ……俺は知っている。聖女と呼ばれている涼風の本性が聖女の性格とは真逆であることを。

この作品が面白い!と感じた方は星をマックスで評価をくれると嬉しいです。今後の作者のモチベにも繋がるので、よろしくお願いします。

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