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第1章:ゲーム設定

「さて、人間。我と『げーむ』なるものをしよう」

「……ゲーム?」


 とても曖昧な言葉だった。

一体何のゲームとなのか。

何がしたいのか、何を僕に望むのか。

そして、それは言葉だけじゃなかった。

話相手の顔や姿も見えなければ、周りの風景もまた曖昧。

そうして気付く。


(ぅうん? これは、夢……?)

 そう、夢。

でもそのくせ、リアルに物を考える事を奇妙に感じるけど、気のせい?

目を覚ますと夢の内容を覚えてないように、この夢もまた忘れるのかな?


「夢か……そう捕らえても構わん。確かにお前の夢を介しているが……まぁ、人間の認識など所詮曖昧なもの。ただ己を納得させる理由が欲しいだけであろう?」


 そう言って、クツクツと笑う何か。

僕を人と呼ぶからには人意外の何かのはず。

…………とってもメルヘンな考え方だ。

ちょっと自己嫌悪。


まさか、これがゲーム脳!?

……………………どうせ、夢なら深く考えるのはよそう。

もっと前向きに考えよう。

ゲーム……面白そうじゃないか。


「……いいよ。それで、僕は一体どんなゲームをすれば良いの?」

「面白いな人間。理由を求めていたと思ったら、その矢先に逃避か?」


 またクツクツと笑う『何か』。

逃避? 何の事か分からない。

こちらに伝える気の無い自己完結ぎみの話されると、こっちもムッとする。


「すまぬすまぬ。我は説明に向かぬゆえ、詳しくはこいつに聞いてくれ。では、またな」

「ちょっと、待って! こいつって誰!?」


 自分以外を認識するのも難しいこの世界で、どうやって探せばいいのか。

しかし、既に『何か』は消え去ってしまったようで返事はない。

こいつっと言っていたから、そう遠くではないと信じたいけど。

取り合えず、当てずっぽうに探し回るってみる?

そう思って歩き始めようとした。

すると、


「それでは、どこからご説明致しましょうか?」

「うわっ!」


突然、そんな声が後ろから聞こえてきた。

慌てて振り返るも、そこに姿はない。

でも、声は確かに聞こえた。

ということはそこに誰かが居る……もしくは、居たということ。


「誰? どこにいるの?」

「その質問には答えかねます。第一の質問ですが、私にはあなた方の考える固有名詞も一般名詞も御座いません。第二の質問ですが、やはりあなた方の感覚では捕らえられず、しいて言うならば……後ろ、でしょうか?」


 応える声は即答。

そして、彼女? が言うようにその声は後ろから聞こえて来た。

僕は背後を向き質問する。


「えっと、それで僕は一体何をすれば良いの?」

「それは初めにすべき事でしょうか? 過程の事でしょうか? 最終目標の事でしょうか?」


 やはり、その声は後ろから聞こえる。

過程? 目標?

それほど声を交わしてはいないけど、ロボットみたいな人だな。


「大雑把でいいよ。詳しく説明して欲しい時はこっちから言うから。後、せめて話す時ぐらい僕の前に居て欲しいな?」

「貴方にはある世界を支配するものを倒して頂きたいのです。それと、申し訳ありませんが、私は貴方の考える『前』に行く事は出来ません。……ご説明致しましょうか?」

「ううん。言いたくないのなら別にいいよ? (それに説明が長そうだし)」

「そうですか、お気遣い痛み入ります。そういう存在だと思って下さい」


「それで、えっと。その……ボス? を倒せば良いんだよね。あれっ? でも、それだと僕一人で遊ぶゲームのように思うけど?」

「いえ、一人でも出来ますが、基本的に皆さんは団体で行動しておられます」

「僕以外にも人がいるんだ?」

「はい。あなた方の世界の方は数百人ほどでしょうか」

「じゃ、その人達と一緒に攻め込めば良いの?」

「いえ、それは出来ません。……RPGと言うゲームをやった事がありますか?」

「あるよ。……つまり戦闘参加人数が決まってるってこと?」

「近いです。どちらかといえば行動人数が決まっています。……パーティ人数と言った方が分かりやすいですか?」

「どっちでも良いよ。それって何人?」

「基本的には男性なら3名まで、女性なら5名までの計8名です」

「女の子の方が一杯入るんだ?」

「はい。その分基礎能力が男性に比べて劣ります」

「そっか、じゃ・・・・・・」




 そんな感じで、細かい事はほとんど聞き流してしまったけど、大体分かった気がする。

後は実際にやっていった方が早いかな。

「他にご質問は御座いますか?」

「いいや、取り合えずやってみる」

「そうですか。ではくれぐれも本名を名乗る事がないように、それと魅力を上げるのを忘れないで下さい。それでは、私は次の方の下に向かいますので失礼致します」


 彼女? (結局、性別は分からなかった)が立ち去った気配がした後、僕の前にパネルのようなものが現れた。

中央に僕の顔が小さく出ていて、その横に数字が羅列している。

数字はステータスで、貰ったポイントをそのステータスに振り分け、その上で現在の僕の能力を元に作成したステータスをプラスするらしい。

Lvはなく、ゲームがはじまれば僕の行動によって微妙にステータスが上昇するらしい。


 ステータスはそれぞれ、

攻撃力

防御力

魔法力

素早さ

器用さ

魅力

の六つ。


選択肢としては、戦士系か魔法系かバランス系かな?

男性は500ポイント、女性は300ポイント。

僕は男なので500ポイントの振り分けだ。


「やっぱり、男なら戦士かな? でも、魔法で一気に敵を倒すのも良いよな。いや、ここは魔剣士みたいなカッコ良さもまた…………」

 取り合えず上から順番に100ポイントずつ振った状態で、暫くウロウロと歩きながら考えていると、地面に何か光る物を見つけた。


「何だろう? バッチ?」

 拾い上げてみると、表面には女の子の絵があり後ろは黒いバッチというか、チップ? のようなものだった。

こういう感じのものは大概が可愛い女の子が描かれているけど、これは普通の女の子が描かれている。

決して可愛く無いわけじゃない。よく言えば控えめな守ってあげたくなるような感じ、悪く言えば余命宣告を受けましたみたいな感じだ。

しかも、どこかで見たことがあるような……


「あ、そっか。これだ」

 僕の顔が映し出されている画面の部分とこのチップが似ている。

横に並べてみるとよく分かる。書かれている絵が違うけどその他はほとんど一緒だ。

大きさも上に重ねると……


「うわっ! 何だ?」

 チップを重ねるとチップは画面に沈んで行き、やがて完全に画面内に取り込まれてしまった。

触ってみると、画面に凹凸はなく硬い感触が返ってくる。

あちらこちら弄ってみたけど変化はなく、僕が映っていた部分はその女の子になってしまっていた。

もしかして、これが僕の操作するキャラになった……とか?

だとしたらこれは凄い気落ちする。

明らかに弱そうなキャラになってしまった。


「それはないよ……はぁ」

 大きなため息をついてしまったのも無理はないと思う。

スライムにすら負けそう。

設定が細かすぎて忘れてたけど、これは夢なのにリセット出来ないとか。


「これで行くしかないのか。……あれっ?」

 画面を確認するとステータス振り分けポイントが300余っていた。

既に振り分けているものと合わせると800ポイント。


「……はぁ。挙句の果てにバグ」

 あまりにも酷すぎる。

ゲームの中身は期待できそうにないなぁ。

まぁ、所詮僕の夢だしね。


 もう考えるのも面倒臭かったので、僕はひとつだけ一切振っていない魅力に、残りの300ポイント全部を振ってステータス変更を終えた。




 その後、僕は他の設定も適当終えて最後の契約文を読み飛ばして決定を押した。

契約という文字にもう少し慎重になるべきだったかもしれないけど、夢の中だし普段もあまり読まないタイプなので、この時は全く気にしていなかった。


「…………?」

 決定を押しても何も画面に反応がない。

三度ため息をついた時、僕の体は浮かび上がった。

いや、その表現は正しくない。

正確には上に向かって落ちて行った。

でも、この表現も正しくはない。

何せ何処が上なのか下なのかも分からない。

落ちているだけのように感じるし、前後左右に揺れている気もする。

僕は気持ち悪くなって、吐いた。

吐いたはずだった。

でも、吐しゃ物はなく本当に吐いたのかも分からない。

痛みはない、苦しくない、ただ気持ち悪い。

思考はちぢれ、涙を流し、その感触を得る事もまた出来ず、僕は気を失った。

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