紀元前20万年頃 地球・アフリカ大陸北東部 ゴウド 出会い
灼熱の太陽が果てなき砂漠を照らしている。すっかり干からびた一本道を、50人程の人間が歩いていた。その一群は二つに分けられる。50分の10は武器を持った兵士であり、また40はその兵士たちに連行される罪人であった。
その罪人たちの中に、一人の青年がいた。名をゴウドという。この時27歳。罪人たちの中では最年長であった。その意識はとうに真っ暗な闇の中へ消えかけ、既に惰性だけでどうにか足を動かしていた。
「おい、おい!足を動かせ」
兵士に槍で小突かれ、ゴウドはハッと目を覚ました。そしてその時張り詰めた緊張が一瞬解け、彼は倒れ伏した。灼熱の砂漠をほとんど飲まず食わずで数日間歩き続けていた彼の身体は限界を迎えていた。
「ゴウドさん!」
盟友たちの叫びを遠くに感じながら、ゴウドは今度こそ本当の闇の中に落ちていった。
せめて水だけでもいいから彼に分けてやってくれと叫ぶ罪人たちを顧みず兵士たちは先を急がせる。
「あんたらに苦労はかけない、せめてゴウドさんを運ばせてくれ」
「今は先を急ぐことが最優先だ。そうだな、帰りに骨が残っていたら埋めておいてやる」
「そこをなんとか…」
「お前たちはこれから死神の口の中に入るんだ、早いも遅いもないだろう」
「それでも、」
兵士はそれ以上話を聞く気がないらしくゴウドを縛っていた縄を解くと最も口うるさい二人、ゴウドの再側近であったティグスとラームをより強く縛った。
一方、地面に倒れ伏したゴウドは、地下の奥深くから届く脈打つような音を感じていた。既に仲間は遠く離れ、自ら立ち上がる体力は残されていない。その時だった。突如としてゴウドが倒れていた周辺が陥没した。ティグスやラームはその時にはもう相当な距離を進んでいたが、地面の陥没が引き起こす轟音は彼らにも届いていた。
「あれは…なんだ?」
濛々と立ち込める土煙の中から、いくつもの影が姿を現した。本来の数十倍にまで巨大化したトカゲやサソリ。それらは皆一斉に、王都-この場にいる人々の故郷-の方角へ駆けていった。
「王都まで数日かけて引き返す備えはない。一度洞窟までこのまま行くぞ」
一行の足はしかし、心待ち早まったようであった。
ゴウドは地下をまっすぐ落下し続けていた。彼は、自らの体を誰かが受け止め衝撃から救ったことを感じた。