2 挨拶の代償
式も終わり、家に帰ろうと敷地を出た瞬間···また、人とぶつかった。
「おい···お前。2回目だぞ。気をつけろ。」
「あぁ···ごめん。あと、お前じゃない。時雨碧。」
「時雨も俺の名前覚えろよ。」
「覚えろと言われても···そもそも名前聞いてない。」
「そうか···俺の名前は氷見零。零でいい。」
ここで何と、不良の名前が判明。やったぁ。
「わかった。零ね。」
さて、そろそろ帰ろう。
そう思い、歩いていると、背後から声を掛けられた。
「そこのあなた。止まってください。零も。」
この人、誰?
そう思い、隣にいた零の顔を見ると···すごく嫌そうな顔だった。知り合いかな?
「あの···」
「あぁ···失礼。まだ、名を名乗っていなかったね。僕の名前は氷見雫。零の兄だ。」
新入生代表挨拶の人だ。
兄ってことは双子かな。
「何だよ···雫。」
「さっきはよくも挨拶を邪魔してくれたね?」
そうだった!ドア蹴破ったんだった。
···弁償かな?
「挨拶の代償として、1発殴らせてください。」
何、この人。考えが物騒過ぎるよ。
てか、挨拶の代償大きいな。
「···何でお前なんかに殴られなきゃなんねぇんだよ。逆に殴らせろ。」
「何でですか。」
「誰も聞いてない上に長ったらしい挨拶すっからだよ。」
「長ったらしい···だと?」
「そうだ。バカは要約が出来ねぇからな。だから無駄に話が長ぇ。てか、挨拶邪魔されたぐらいでキレすぎなんだよ。」
「···邪魔されたぐらいで?お前にとってはそうかもしれないけど、少なくとも···僕にとっては屈辱なんだよ。自分が馬鹿じゃないと思うのなら、それぐらい理解しろよ!馬鹿!」
この兄弟、すっげぇバチバチだな。
巻き添え食らう前に逃げよう。