1 その日、事件は起きた。
最悪だ。まさか、入学式でこんな目に遭うとは···
入学式で酷い目に遭った少女。
その名前は、時雨碧。
サラサラの茶髪で、碧という名に相応しい、アパタイトの様な青い色の瞳の少女は、今···困惑していた。
事の発端は数十分前の事。
本日から、名門校···私立椿学園高等部へ入学し、青春を謳歌しようと意気込み、学園の敷地内へと足を踏み入れた瞬間···!
何と···ゴリゴリの不良とぶつかってしまったのだ。
少女の学園生活は───詰んだ。
「これから3年間、きっとパシリなんだろうな···もうダメだ。いざとなったら学校辞めよう。」
「···おい。聞こえてんぞ。」
「あっ···聞こえてましたか。」
これは大問題だ。まさか、本人に聞こえていたとは。
チャイムが式の始まりを告げる。
待って、周りに誰もいない。体育館はどこ?どうしよう。
「···体育館はこっちだ。」
「あの···色々とすみません。」
この無言の時間がとても気まずい。
この金髪って地毛かな?それとも染めてんのかな。
「···敬語。」
「えっ···敬語?ですか。」
「···その敬語、やめようぜ。」
「何故、敬語を辞めるという発想に?」
「俺···敬語嫌いなんだよ。」
迷子になったら案内してくれるし、不良は何だかんだ面倒見が良かった。
そして、不良は敬語が嫌いだった。
「···着いたぞ。」
「ありがとうございます。」
不良は、中に入らずに立ち去って行った。
「あの、参加しないの?」
「···しねぇよ。俺の居場所はそこには無いからな。」
「行こうよ。せっかくの入学式なんだから。」
「···しょうがねぇな。行くぞ。」
「えっ、ちょっと何やって···あぁ!」
その瞬間···不良は、ドアを蹴破った。すごく大きな音を立てて。
「···何故壊す必要が?」
凍りつく会場の空気。
一瞬にして私達を見てくる教師達。
「先生。私は止めました!」
「···せっかくの入学式なので派手に登場しようと思って。」
しかも、新入生代表の挨拶の途中だった。
本当は私が入試首席だったから、挨拶する予定だったんだけど···面倒臭かったから断っといた。
あと邪魔してごめん。新入生代表の人!
「ちょっと、零。何なんですか。」
「···お前の挨拶なんて誰も聞いちゃいねぇよ。」
「ちょっと、火に油を注ぐ様な発言しない!挨拶の途中なのに余計怒らせるだけだよ。」
「あなたもあなたで、すごく失礼ですけど。」
「···式には出たから、俺はここで帰らせてもらうわ。」
「えっ、待って。自由すぎない?」
「···じゃあな。雫。」
そう言い残し、不良···いや、零は本当に帰って行った。
「そこのあなたは?」
「私ですか?」
「そうですよ。あなた以外誰がいます?」
「先生?」
「···確かにそうですけど。とにかく、席に戻ってくださいよ。僕の挨拶の途中ですよ。」
あ、そうだった。式の途中だった。
「すみません。」
席に行ったら隣の人に変な目で見られた。
これは友達作りハードモードかも。