ヲタッキーズ84 第3.5帝国の野望
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第84話「第3.5帝国の野望」。さて、今回は第3帝国の再興を期するナヂスの物語。
首相官邸高官にスパイ疑惑!スパイ機関の真の目的は?浮上する幻の地底王国、ヲタッキーズの危機w
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 偽りの日々
「ドウェ・カータ。彼女は"地底ナヂス"の大佐」
「"地底ナヂス"?」
「1945年、陥落寸前のベルリンからナヂスの残党が中央アジアに逃げ伸び、地底王国を築いて捲土重来を期している」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「"ヲタ活リスト"がリークされた!」
「2重スパイを働いてるスーパーヒロインのリスト?ソンなリストがあるのか?」
「…以下のスーパーヒロインは買収されている。ヲタッキーズのマリレは"地底ナヂス"のスパイ…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「意味がわかってるの?いつから嘘を?」
「スパイとして潜入したのだから最初からです」
「私達をスパイしてたの?今までのマリレの気持ちは嘘だったの?ねぇどぅなの?答えてょ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ノイズは、1970年代に流行った前衛ロックで、その意味では、ソコはかとなく、レトロフューチャー感が漂う音楽だ。
「秋葉原、くたばっちまぇぇぇ!」
ステージでは裸足でアラサーのセーラー服が、怒号でフロアを威嚇、唾を吐き、客を足蹴にして、天井の梁からダイブ…
その時!
「万世橋警察署!万世橋警察署!全員、その場を動くな!」
「きゃー!」「ポリ公、帰れ!」「造反有理!」
「アンタ達!この女を知ってる?え?アンタはどーよ?ほら、画像を良く見て!知ってるの?」
完全武装の警官隊に混ざってメイド服が1人、スマホをかざしてパンクスに怒声を浴びせかけ、胸倉掴んで詰問してるw
「コイツは、ナヂスの末裔!ココのメイド長だったマリレをハメた女ょ。アンタら、匿ったら一生、蔵前橋よっ!ホラ、アンタ。良く見て!見なさいよっ!」
エアリが女の髪を鷲掴みにしてビリヤード台に叩きつける。
一斉に口をパクパクさせて、無言の抗議を始めるパンクスw
「そう?わかった。逮捕スル!全員逮捕っ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マリレの尋問画像。モノローグが続く。
「1945年のベルリン攻防戦の頃から、国防軍の作戦マニュアルとかを流してた。第3帝国の崩壊は時間の問題だったから、深くは考えなかった。その後、タイムマシンで現代の秋葉原に脱出した後も、ナヂス残党の"地底ナヂス"が接触して来てSATOのデータベースのパスワードとか聞かれた。気がついたら"地底ナヂス"のスパイになっていた。知らない内に私はスパイになっていたの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
国宝級の超天才ルイナによるアキバ工科大学での特別講義。
「…ナッシュ均衡が存在スル。つまり、チキンゲームね。列強各国は、合理的な戦略に一致して邁進し、そして、合理的な帰結として冷戦が深刻化したわ。ゲーム理論家達が、このコトを認識したのは、世界が核廃絶を夢想していた1950年代。ねぇ。今、私達は人の本能的理解を、数式を用いて確認しようてしてる。理性的な人間でも、不利な行動をとるコトがある。つまりこうね。私達が描く数式は、単に現実を数値で表すのみならズ、人間性そのものを解明しつつアル」
ルイナの弁舌が熱を帯びて来る(リモートだけどw)。
「想像して。いつの日か、心の奥底にあるモノを、私達が数式で解き明かす日が来るの…とは言え、次回は数式の話に戻るわね。分割合同についてょ。今日は、ココまで。お疲れさん。みんな、楽しい1日を過ごして!」
ラボのドアに、スピアがもたれかかっている。
彼女は、ハッカーでルイナの貴重な話相手だ。
「あら、スピア。来てたの?テリィたんは?」
「何でテリィたん?…今のゲーム理論の話、分析が少し悲観的じゃナイ?物悲しい講義だったわ」
「え。そうかな?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
モノローグは続く。
「…知らないうちに"地底ナヂス"のスパイになってた。別にナチズムを信奉したワケじゃナイ。もちろん、ネオナチでもナイ。戦友のために出来るコトをやった。それだけです。1945年のベルリン攻防戦以降、もう誰も信じられなくて…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
僕は、第3新東京電力で世界初の宇宙発電所の所長だ。
仕事場は衛星軌道ナンだけど2週間に1回地球に帰還w
「で、テリィ様。今回は"禅"ですか?"悟り"は開けましたか?クスクス」
「ミユリさん、そのクスクスが余計だ。宇宙勤務が明けると受けるカウンセリングで毎回"悟り"を開いてたら、お坊さんの立つ瀬がないょ」
「まだまだ邪念がアリそうですね」←
ミユリさんは、僕の推しでスーパーヒロインに変身スルんだけど、いつもは大人しくカフェでメイド長とかやっている。
「地球に降りるのはウレしいけど、毎回心理分析やら僧院で坐禅やら…カウンセリングに名を借りた拷問だ。勘弁して欲しいな」
「宇宙に逝くと人格が変わる人も多いから…会社は、テリィ様のコトが心配なのでしょう。でも、毎回テリィ様をアキバでお迎えスル私も、テリィ様とどう接して良いのか迷います」
「あ。初めて宇宙遊泳をした時、僕もそう感じたんだ。もっと優雅に表現すると、量子が分離した感じ?量子的乖離状態とでも表現したい…」
「今は違うのですか?」
「うーんソレが残念ながら、地球に降りると収まってしまうンだょ」
ミユリさんは、愉快そうにクスクス笑う。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マリレの相棒、エアリのモノローグ。
「マリレが裏切者とわかって5週間。マリレのノイズ喫茶をガサ入れしたけど、何も出なかった。マリレをハメたドウェ・カータのボスが誰かもワカラナイ。そもそもマリレの自供が引っかかる。何かが絶対的におかしい。たった1度の気の迷いが何だと言う人もいるけど…ソレで死ぬコトもあるし」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
蔵前橋重刑務所の取調室。
「どーする、マリレ?今なら貴女、未だ引き返せるわ」
「…何年もかけて、秋葉原のみんなを騙してきた。ココでヤメたら全てが無駄になるわ」
「…貴女の護送中に何かが起こるカモしれない」
取調官は、ペットボトルの水をコップに注ぐ。
「刑務官のスマホ。短縮ダイアルは6」
マリレが見ると、コップの中に小さな鍵が沈んでいる。
「他には?」
「誰も知らないわ」
「私だけ…ね」
マリレは、手錠をしたママで、コップの水を飲み干す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
蔵前橋通りと首都高上野線が直交スル台東1丁目の交差点。
「BGMにノー・ウェイヴなロックをかけてょ」
「黙ってろ。死語厳禁だ」
「死後は現金?地獄で使うの?コッチは独房で3週間1人だった。会話に飢えてるの。相手してょ」
女囚護送車の中のヤリトリは万国共通だ。その時…
キキィー!
上野線の高架をくぐろうとした女囚護送車の前に黒いSUVが飛び出す。
護送車は急ブレーキ!黒いSUVから目出し帽のテロリストが飛び出す。
「RPG!RPG!」
大胆にも正面からロケット弾を発射、護送車の運転席が爆炎に包まれる。
口の中から鍵を取り出したマリレは手錠を外し看守の音波銃を奪い取る。
「動かないで!動けば…撃つ」
「助けてくれ、幼稚園年長の娘が明日はお遊戯会…」
「ドウェ!もう1人の音波銃を奪って!」
音波銃を手にしたマリレとドウェがバックドアを開けると…ソコは戦場だw
護送車を襲撃したテロリストと警官隊が、激しく短機関銃で撃ち合ってる←
「テロリスト諸君、投降しろ。君達は包囲された!」
刑務所から応援のパトカーが続々到着し次々とテロリストを倒して逝く。
「逃げないとヤバい。行くわょ!」
手錠で足を繋がれたマリレとドウェは高架下へと逃げ込むw
第2章 私は信じる
「テリィたんとミユリ姉様。何で2人はシャワーを浴びた後なの?髪の毛、濡れてるw」
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地よくなったンだけど…モニターの中でルイナは怒ってるw
「やぁルイナ。元気にしてた?徹夜?」
「"テリィたん宇宙にありて秋葉原はコトもナシ"。余りにヒマなんで"グレブナー基底"について論文を描いてみた。恋愛を含む友情の数理解析について、だぞ」
「いつか話してたネットワーク理論?N人ゲームだっけ?ストリートギャングのボス選びで予測が見事に的中したょね。メイドカフェでモテモテに絡まれる利得戦略では結果はイマイチだった」
「あら?もう実践済み?タマには日常で数式を使うのね?」
「メイドさんにウケたくて。あ。ミユリさん、スマホが鳴ってるょ」
ミユリさんはバスローブで黒髪にタオルを当ててる。萌え←
「ミユリです。え。いつ?rog. on my way」
「どうしたの?」
「マリレがドウェと脱獄しました」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「"ワラッタ・ワールドワイド・メディア"ブレイキングニュース、メインキャスターのフジ陸友です。秋葉原市内で激しい銃撃事件が発生し、目下、女囚2人組が逃走中…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その女囚2人組は、神田リバー沿いの廃工場に押し入るw
「マリレ。アンタ、何処で手錠の鍵ゲットしたの?」
「こうなると思って、1週間前から口の中に入れておいた。手錠の鍵はどれも同じだから。看守のスマホも盗んだ」
「先ず足枷を切断ょ。ソコのレンチを取って」
女囚同士で足枷を切断し合う。ドウェが黒電話を発見。
「あ、私。ちょっとヤバいのょ…OK?マリレ、渋谷センター街の連中に助けてもらお?」
「わかった。ソコの布キレ、首に巻いて。ソコのボロもまとって変装しょ?私はバンダナにスルわ…あら?」
遠くからパトカーのサイレン。近づいてくるw
「見つかった?逃げなきゃ!」
1分後。万世橋の警官隊が廃工場に殺到w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。
「遺留品は?」
「手錠の鍵が落ちてました」
「ええっ?」
刑事が証拠袋入りの小さな鍵を示す。驚くラギィ警部。
「護送中を待ち伏せての襲撃です。しかし、警察の応援が予想より早く到着して、激しい銃撃戦になった。アジアンな傭兵2名が死亡。1人が重症」
「アジアンな傭兵?」
「はい。金で雇われた連中です。尋問中ですが、プロらしく口を割りません。マリレ達は、銃撃戦の間に逃走しました。足枷のママ、地下アイドル通り方面へ逃げたそうです」
「その時には、もう手錠は外れてた。でも、足枷は手錠とは別の鍵がなければ外せない」
「となると…切断スル道具がある場所ね」
「警部!神田リバー沿いの廃工場で警報作動!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ルイナのラボ。
「あらあら。ラギィ警部もミユリ姉様も現場に行っちゃったわ。私も車椅子でなければなー」
「しょうがナイょ。ヲタクはインドアで出来るコトをやろ?えっと…追っかけ曲線だっけ?」
「追跡曲線だけど、今回は応用出来ないわ。代わりに、集合被覆問題がおまわりさんの配置とかに役立つカモ」
ゴスロリで車椅子のルイナは、国宝級IQを誇る超天才。
気の合うスピアは、ストリート育ちの天才ハッカーだ。
「10号?被服?私のサイズは…」
「集合被覆問題。夜の海岸を想像して。船の安全のために、灯台を建設するわね。でも、資金の問題もあり、建設数は限られる。でも、集合被覆問題を使えば灯台を建設スルのに最適な場所、つまり、今で言えば、おまわりさんの配置場所を適切に割り出せるワケ…あ、テリィたん!おかえりなさい!」
僕が入って来たのは、このタイミングだ。
「せっかく俗世から距離を置いて、お寺で坐禅を組んでたら突然南秋葉原条約機構からのお迎えが押し掛けて…お坊さん達がカンカンだったw」
「マリレが脱獄したの。ブレイキングニュースは見た?」
「ソレで、集合被覆マトリックスか。でも、宇宙発電所の所長に用は無いだろ?一応、休暇中ナンだけど」
「お友達として呼んだの。悪い?」
「お寺に特殊部隊を寄越すのはな。お坊さんが激ヲコ…」
「今までの事件と何も変わらない。問題を解くのを手伝って欲しいな」
「でも、あらゆる事件には、人的要因が絡む。ソレに、今回は私的な要因も絡むだろ?」
「とにかく!私の知ってるマリレと、今回の行動は全く結びつかないの」
「現実は、時として醜悪だけど、目を背けちゃいけない。むしろ、積極的に受け入れて、その、何だ、ルイナお得意の変数化しちゃえば、ソコから意外なヒラメキとかアルんじゃナイの?責任持てないけど」
「やっぱりテリィたんを呼び出して良かった。ルイナ、頑張るから」
一心不乱に、ホワイトボートに数式を描き連ねて逝く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東京メトロ末広町駅1番線ホーム。
JRの秋葉原駅がアキバの正面玄関なら、メトロの末広町駅は裏アキバの玄関口(裏口?)だ。
観光客は皆無で全員ラフな格好だが、ソコにバンダナと野球帽を目深に被った女囚2人組が…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田リバー沿いにアル廃工場。現場検証中。
「女囚2人の内1人は、まだベルトをしたママですね」
鑑識が証拠袋に入ったベルトを高く掲げる。
「電話をした形跡がアリます。受話器に血がついてる」
「大至急、通話記録を調べます。おい、お前!」
「…全く、何でこんなコトに」
大きな溜め息をつきながら、廃工場を出るラギィ。
外には赤色灯を回転させたパトカーが停車してる。
「ラギィ警部!」
「え。ムーンライトセレナーダー?この事件、貴女達がヤルの?降りても良いのょ?」
「誰かに任せてお昼寝してろって?」
僕の推しミユリさんが変身したムーンライトセレナーダーは白のヘソ出しセパレートのコスプレだ(アラサーなのにw)。
"リアルの裂け目"が開いて以降、アキバでは異次元人の絡む犯罪は、警察とSATOの合同捜査となるコトが多いのだ。
「ううん。気持ちに従うべきょ。一緒にやりましょ?」
「ごめんなさい、ラギィ。"元"ヲタッキーズのマリレは、どうしても私が捕まえたいの」
「わかるわ」
ヲタッキーズは、ムーンライトセレナーダー率いるスーパーヒロイン集団。SATO傘下の民間軍事会社で…僕がCEOだ←
「コレはヲタッキーズの問題。マリレは、私が捕まえます」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
末広町駅では、マリレがトイレに逝くフリをして看守のスマホで短縮ダイアル"6"をプッシュ。しかし、応答はナイ。
「何処なの?カクラ・リンクから連絡がないw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場を回った僕とミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーがSATOラボに戻るとルイナ達は相変わらズ…
「徒歩巡回の変数、居住者不明グリッドに入れてみよっか?」
「そーすると、中央ゾーンの被覆率が落ちるかもしれない。空間計算量のアルゴリズムは?」
「スピアは、いつもソレね…あ、テリィたん!ミユリ姉様、おかえりなさい!現場どーだった?暑い?もう夏?」
いや、梅雨が先だろと思ったら、僕のスマホが鳴るw
「うーん僕がスマホに出ないのは、みんな知ってるハズなのに誰だろ?はい、もしもし?」
「テリィたん?マリレです。姉様は?」
「え。マジかょモノホンのマリレ?脱獄中の?」
「ねぇお願い。姉様に代わって」
「わかった!わかったけど、何で僕にかけたの?」
「テリィたんの電話なら逆探知されるまでの時間を稼げるでしょ?秋葉原の人間なら誰もテリィたんがスマホを使うナンて思わない!とにかく!姉様を!」
「あんまりな話だけどOK。ミユリさん。マリレから」
「ミユリです」
「私の黒幕は、内閣情報官のカクラ・リンクです」
「貴女の黒幕?」
トイレから出たマリレが様子を伺うと、ドウェはベンチで外したサングラス(何処でゲット?)にマブタの傷を写してるw
「ドウェの最初の接触を報告したら、カクラは私に2重スパイをヤレと持ち掛けた。ドウェは首相官邸の黒幕と通じてるから、ソレが誰かを暴きたいと」
「その黒幕って誰?」
「知らされていません。その後、ドウェが蔵前橋に収監されたので、私も一緒に入って脱獄すれば、黒幕の方から接触して来ると考えた。カクラは、手錠の鍵をくれました。ところが、脱獄したら肝心のカクラと連絡が取れません。何か問題が起きたのか。私がハメられたのか」
「マリレ。私は貴女を信じる。でも、今の話が作り話じゃナイと証明出来る?」
「護送車の上級護送官が知ってます。私に、このスマホを渡してくれた」
「多分彼はバックれるわ」
「姉様。私はウソはつきません、秋葉原では。リアルが私を信じなくても、私は秋葉原を信じる。そして、ムーンライトセレナーダー。私は貴女を信じる。貴女が秋葉原の最後の希望なの」
第3章 確率的な正義
万世橋の捜査本部。
「カクラ・リンク内閣情報官は、6週間前から秋葉原に来てるらしいわ」
「と言う情報もマリレは"地底ナヂス"に売ったカモしれない。あぁイヤんなるわ」
「内閣情報官と会います。ソレまで、この件はSATOには内密に」
「了解、ムーンライトセレナーダー。私も上には報告しないわ」
「ありがと、ラギィ」
モニターからアプリでルイナが割り込む。
「私は良いょね?SATOでのステイタスはアドバイザーだから。トラストメトリックを使ってみようと思うの」
「え。心理学で使う奴?集団の仲間からの信頼度を計測スルんだっけ。今、マリレの信用度はゼロだけど」
「テリィたん、システムがファジィだから、そーゆー二者択一にはならナイの。信じるor信じナイ、じゃナイの」
そう逝いながら、ルイナは飲んでいたアイスコーヒーの氷を指2本で摘み出す。あのアイスコーヒー、もう飲めないなw
「ねぇ。この氷、どう表現する?濡れてる、固い、冷たい。でも、そーゆーのは、比較対象がなければ意味がナイ。そこでファジー理論で氷の価値を図るワケ。同様に人の誠実さもファジー理論で計測スル。程度の差はあれ、人は誰でも嘘はつくでしょ?特にテリィたん」←
何か今回はヤタラとイジられるなw
「信頼率の話?ところで、ルイナ。逃走経路を探る方法はどうなったンだ?」
「良くぞ聞いてくれました。集合被覆から面白い副産物が生まれたわ。万世橋への通報や、不審な行動に対応する適応システムが構築出来ちゃった。少し抽象性が高いけど。マップを見て」
モニターに写るアキバの地図上を赤い太線が走る。
「おおお。コレが逃走経路?襲撃現場から神田リバーの廃工場経由で…すげぇ。何でこんなコトがわかるの?」
「テリィたんが若いメイドのいる御屋敷に御帰宅しても直ぐわかルンだぞ」
「私が悪うございました!…で、何で地下鉄の可能性が過小評価されてるの?」
「階段やホームに、必ズ警官が配置されるから」
「赤い太線は末広町駅で消えてる。でも、地下鉄には乗ってない。となると、マリレは未だ地上には出てないってコトじゃナイのか」
自分でも驚いたが、カラダが勝手に走り出す←
「あれ?テリィたんは?」
「うーんアルキメデスみたいに駆け出してったわ」
「全裸で?でも、テリィたんも数学に強くなったモノね」
「悲しみを背負った狩人の顔だったカモ」
「マリレに裏切られて辛いのね。きっと混乱してルンだわ」
ココでルイナは1呼吸おき、敏腕警部に視線を移す。
「ねぇラギィ。中性B中間子を想像して」
「無理。何ソレ?美味しいの?」
「反クオークのような単純物質とストレンジクオークの結合ナンだけど、1秒間に300万回も反転スル。だったら、人の心ほど複雑なモノが変わらないハズがナイ。ねぇ今の私達になぞらえて考えるのにピッタリだと思わない?」
「…とりあえず、テリィたんを追っかけるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
東京メトロ末広町駅。
東京オリンピック以来、末広町〜渋谷間は"地底新幹線"化されノンストップの超特急が運行してるが、その発車間際w
「待て!マリレ!動くな!」
地下ホームに拳銃や短機関銃、ロケットランチャーを構えた警官隊が殺到スル!
ソレを見たマリレとドウェは、変装をかなぐり捨て線路に飛び降り逃走を図るw
「だめ!ドウェ!」
音波銃を警官隊に向けたドウェにマリレが踊りかかる!次の瞬間、対向スル2番線に…
ゴーッ!
浅草行きの地底超特急が入線w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「私が逃した。目の前にいたマリレを見逃したの」
「姉様、落ち着いて!その行動は、何を基準に決定したの?マリレの供述?状況判断?それとも、疑わしきは罰せずと言う論理?」
「何なの?ルイナ、まさか私の行動を数式に?」
「いいえ。トラストメトリックの変数」
「呆れた!ソンな変数にされる位なら、私は何も喋らない!」
「せっかくのデータなのに!姉様、ホントに意地っ張り。ソレも超弩級」
「ありがと」
「でも、姉様は最良の判断をした。過去の実績に基づけば、姉様のなさったコトは確率的には正義」
「確率的な正義?」
「リアルでは絶対な正義も、秋葉原では曲がるコトがアル。まるで、光が宇宙で曲がるようにね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中の東京湾上を疾駆スルSボート。
舵輪を握る艇長はアジアンな顔立ちw
「ずいぶん無口な艇長さんなのね、ドウェ」
「うーん私も声を聞いたコトがナイわ…マリレ、アンタは手錠の鍵を口に入れたママ、何週間も私を待ってた。私は、貴女を信じるコトにスルわ。私達が助け合う限り、地獄に落ちるのは他の奴等ょ」
「大佐、なぜ末広町駅で警官に音波銃を向けたの?」
「ソレは…蔵前橋に戻るくらいなら、死んだ方がマシだと思って」
「…ソレもそうね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カクラ・リンクは高層ホテルに部屋を取っている。
「警部。コレ、煙幕ですょ。内閣情報官って言ったら諜報のトップじゃナイですか。きっと私達の目をそらす作戦です」
「とにかく、ソレをカクラに確かめなくちゃ…ん?臭うわね」
「ヤバ。この臭いは…」
ラムでドアを壊して中に入ると…椅子に縛られたママ拷問された死体。床には血のついた注射器と内閣情報官の身分証。
「クリア!奥には誰もいません」
「ヒドい。薬物を何本も打たれてるw」
「こちらラギィ警部。カクラ内閣情報官、死亡」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィ達は捜査本部に取って返す。
「監察医は、内閣情報官が大動脈弁狭窄症だとは知らない犯人が拷問し、心筋梗塞を誘発したのではないかと」
「首相官邸から、桜田門経由で内閣情報官の任務は、所轄の必知事項にあらズとの通告です」
「何ソレ?裏ではどーなってるの?テリィたん、SATOは何か知らないの?」
「前回からマデラ司令官代理の出番がナイ。どーも僕達は避けられてるみたいだ」
「マリレがスパイだったから?」
「かもしれない。でも、僕はマリレがドウェの管理官だった可能性もアルと思ってる。あるいは、ドウェが自分の身を守るために殺させたのカモしれない」
「ムーンライトセレナーダー、どう思う?貴女のTO、またまたトンでも系の話を始めたけど」
「いつもごめんなさい。カクラ・リンクの死体をどうして見つけてたかも、そろそろ、それぞれ上に報告しなきゃょね?」
ミユリさん、僕のコトをホンキで謝ってるw
「でもね、みんな。もし、マリレの話がホントなら、首相官邸にスパイがいるコトになるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
真夜中の東京湾。富津岬沖に停泊スル半島籍の戦標船に向けて一直線に進むSボートは鮮やかなターンをキメ接舷スル。
「あ、待ってたの。入って」
「そりゃどうも」
「座ってょ。握手しょ?」
AK-47で武装した男達に迎えられ、マリレとドウェがカメラをセットした船室に入ると翠色の髪の女が握手を求める。
「ドウェ。何か問題は?」
「ありません」
「結構」
翠髪の女はうなずき、マリレに質問スル。
「私を知ってる?」
「知るべきなの?」
「ねぇ質問に答えて、ヲタッキーズ」
「ヲタッキーズは、もうクビょ」
「そーかしら。カクラ・リンクは口数の多い女でね。心臓が止まる前に色々と歌ってくれたわ」
「え。な、何の話?」
マリレの横でドウェが面食らってる←
「ドウェ。貴女は騙されてた。マリレは3重スパイなの。SATOをスパイするフリをして、私達にはゴミ情報ばかり送り続けてた」
光速でマリレの音波銃を奪い取る翠色の髪の女。
「カクラの手下が渡したスマホも頂戴」
大人しくスマホを差し出すルイナ。短縮番号は消去済みw
「マリレ?3重スパイってホントなの?」
「私が応えるのもヘンだけど、ホントなの。ねぇマリレ。"
シャンパラパラ"に着くまで演技を続ける気だった?」
「だって"シャンパラパラ"は、プラズマ亜空間に浮かぶ幻の桃源郷で、女子は全員パラパラを踊ってルンでしょ?ソンな国なら私、何だってアリだと思う」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室に女囚護送を請け負ってた民間軍事会社の士官。
「貴官が護送の責任者?」
「Yes sir。急な出動命令で、我が社が護送担当になりましたが、何か問題でも?」
「カクラ・リンクを知ってる?」
「知りません sir」
取調室のモニターにRPGで吹っ飛ぶ護送車の画像w
「仮に、カクラ・リンクから貴官への命令が脱獄の幇助だったとスルわね?」
「小官が裏切り者だと?スパイを脱走させたとでも?」
「カクラ・リンクが殺された」
息を呑むPMC士官。
「極秘任務があったのなら、貴官にも命の危険がアルの。わかる?」
「Yes sir」
「じゃ話を始めましょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数時間後の捜査本部。
「結局、何も歌わなかったw特殊作戦群上がりの口の堅い男だったわ。カクラの人選は的確ね」
「全体が見えてナイだけですょ警部」
「とにかく、マリレの居所を見つけないと」
「探し方を間違えてるカモです。前回、ドウェが企んだのは地底王国"シャンパラパラ"への亡命でした」
「中央アジアの地底に広がる幻の桃源郷?美女が1年中パラパラを踊ってると言う…」
「YES。1945年にベルリンを追われた連中が逃げ込み"地底ナヂス"を名乗り世界征服を狙っています。ドウェ・カータは"地底ナヂス"の大佐で、内閣情報調査室との司法取引に応じ、身柄を"シャンパラパラ"に引き渡される予定だったのです」
誰に聞くでもなく、ラギィは問い掛ける。
「ねぇ秋葉原から地底王国"シャンパラパラ"へは、どうやって行くのかしら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部に併設したルイナのラボ。
「マリレとドウェの2人が地底王国"シャンパラパラ"へ行くコトを仮定した投影分析をヤレ?」
「あ。ドウェだけで良いの。ドウェなら、正体も動機も既知の事実でアルゴリズムを回しやすいでしょ?」
「理屈に合うね。えっと数学用語で何だっけ?不要信号を除去する…」
「テリィたん、クラッター除去?」
「あぁソレだ」←
「なるほど!そーすればアルゴリズムを発展させられそうょ!行かなきゃ!」
車椅子で超スピードを出して、飛び出すルイナ。
後には、僕とヲタッキーズのエアリが残される。
「何かヒラメくと、いつもアレだね…エアリ、調子は?」
「いつものようにヤルだけょテリィたん」
「うーんソレは無理だろ?エアリとマリレは…」
「友情なんてアテにならないってコトだわ」
「試練だね。自分を失望させた親友と、今後どう付き合うか」
「タダの約束スッポカシとは違うわ。マリレは、秋葉原を売った」
「いつもバブルの頃の話で悪いけど、あの頃、何度も聞いたフレーズだな」
「でも、リアルはソンなに単純じゃナイわ」
「なぜマリレがソンなコトをしたのか、せめて知ってやるべきじゃないか?マリレのコトを締め出す前に」
僕の話を聞かズ(いつも聞かないw)ラボを出て逝くエアリがフト立ち止まり珍しくチラ見スル。お?コレはチャンスだw
「親友だった者の務めとしてさ」
第4章 贖罪のマリレ
富津沖の戦標船。僕はリバティシップと呼ばれるこの手の船のヲタクで、実は船籍番号から、この船が映画にも出た核ミサイルのコントロール装置搭載船と知るが…その話は後日w
とにかく!船内は旧式のAK-47で武装したアジアン、と逝っても中央アジア系ナンだけど、傭兵達でいっぱいだょw
「えっと…忘れないように撮影させてもらうわね。最近、物忘れがヒドいのょ。しかし、最初から貴女の正体に気づくべきだったわ。私と貴女は似てる。私は、ネパールで生まれて…」
「ネパール?チベットじゃなくて?確かに中央アジアを制する者は世界を制スと言われ、チベットの…」
「多くの人が地底王国"シャンパラパラ"への入口はチベットにあると思ってる。私の愛読書、オカルト雑誌"ラー"の"幻の地下帝国でヒトラーと握手した!"にも、そう描いてアルけど、ソレはウソ。世界は騙されてる」
「し、知らなかった…」
「ティカイツァ(take it easy)…物心がつくかつかないかの頃から徹底的な訓練プログラムを受けた私は、その後、東京へ送られ、そこで普通の教育を受けて日本人に同化した。医学部に進んけど、医者にはならず、予定通り政府機関に勤めたわ」
「自分探しのモノローグはno thank you。読者が眠くなるから」
「コレから青春編なのに…じゃカクラが答える前に死んじゃって聞き損ねたンだけど、SATOは私の素性を知ってる?私、このママ首相官邸に戻っても平気かしら?」
彼女はマリレの腕にゴムバンドを巻き注射針の空気を抜く。
「ドウェに聞いたら?ずっと私に協力してたのょ?」
「先ずは、超簡単な質問から。貴女のコードネームは?」
「"メキシカンパラダイス"」
「"アラビアンホース"でしょ?レッスンその1。私に嘘は通用しない」
「ごめん!韓流ドラマのタイトルと間違えたわ。テヘペロ」
マリレの腕にスルスルと注射針が刺さる。
女は冷たく微笑み、ドウェは目を背ける。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ!お寺の境内にヘリで着陸スルな!あのホバリングしてる戦闘ヘリも退けてくれ!瞑想の邪魔だ!」
お寺にルイナが出現w特殊部隊の護衛を引き連れてるw
「閃いたコトを伝えようと思ってSATOと回線を開いたけど、急に自信がなくなって。少し考えたくなったの。SATOが求めるコトを提供するのが、果たして最善策なのかが疑問」
「疑問の度に空中機動旅団でお寺に舞い降りるのはヤメてくれ。コレじゃ"地獄の住所録…」
「"黙示録"でしょ?1979年度、カンヌ国際映画祭で最高賞を受賞」
「とにかく!自分の提示した結果がヘンな使い方をされないかが心配なワケだ。原子爆弾でも発明したの?」
「うーん私の理論は正しく、演算も正しい。でも、ソレで秋葉原に正しい結末が訪れるとは限らない」
「以前から悩んで来た問題だ」
「YES。でも、今回はマリレが絡むから」
「そっか。でも、ルイナが提供した解決策でどんな結果がもたらされても、結局ソレは運命だ。そして、どんな運命にも意味がアル。科学は、詰まるトコロ、真理を理解するための道に過ぎない」
「うーん実はアキバ工科大学の基調講演で同じコトを言ったばかりだわ」
「も少し真面目に自分の授業を聞くべきだな」
「確かに。ありがとう、テリィたん…瞑想の邪魔をしてごめんなさい。お坊さん達も」
「もう遅い。破門された」←
「じゃ私に入信して」
「意味不明。ルイナ、僕は沈黙の業で学んだのさ」
「素敵。何を?」
「沈黙の世界は失われた。永遠に」
「悟ったのね。テリィたん」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
マリレは脂汗に塗れて痙攣スル。
かなり、薬の効き目が出ている。
「投与した毒は、致死量未満のツボクラリン。全身の筋肉を弛緩させ呼吸能力を下げる。人から聞いた話だけど、徐々に溺死する感覚だって。でも、その人が死んでしまったから、ホントなのか、もう聞けない」
「じゃ…教えてあげる…全然…効かないわ…」
「貴女も私も自由の戦士。そして、生きるために戦ってる。もし、貴女が私ならどうスル?ソレを考えて、さらに5倍して。そーすれば、貴女が今からどれだけ苦しむかがワカルから」
ガタン!
大きな音を立てて、椅子をひっくり返したのはドウェ。
立ち上がって壁に向かい肩で荒い息。マリレをチラ見。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。SATOラボ。
「ドウェが秋葉原から地底王国"シャンパラパラ"へ行くとすれば、ダイレクト、かつ安全なルートでチベットへ行こうと考えるハズょね?」
「うーんネパール」
「はい?」
マズい。みんなの視線が僕に集まる。特に…ルイナw
「地底王国"シャンパラパラ"は、実はチベットじゃなくてネパールの地下に広がる桃源郷だ」
「知らなかった…ってか、テリィたんは何で知ってるの?」
「ソ、ソレは、実は前シリーズでパラパラの大好きな王女サマと僕は、実は、あわ、あわわわ」←
激マズwすかさず、ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーのヘルプが入る!おおっ婦唱…夫唱婦随だw
「コレは、世界でも数人しか知らない極秘情報ょ。国連と地底王国"シャンパラパラ"は秘密協定を締結してる」
「怪しい!またまた、テリィたんとミユリ姉様…じゃなかった、ムーンライトセレナーダーだけの秘密?この2人って、秘密多くね?とにかく!今や東京湾に捜査網が張られ、自分の家族や友人も監視されてるコトは、犯人は100も承知のハズ。犯人の考えを知るのに、カーマーカーアルゴリズムは、必要ナイわ」
「あー何逝ってんだがワカラナクなってきた。いつもの例え話で頼む」
「かつて、エルンスト・シュトラウスは、全面鏡張りの部屋でマッチをするコトを考えた。光は、鏡から鏡へと反射スル。光の届かない死角が出来るのは、どんな部屋?この問題の解答を40年後にジョージ・トカルスキーが出した。正解は、26面の壁を持つ部屋。私は、この問いと答えにヒントを得て、ドウェの心の暗闇を探った。その結果、彼等は1番近くで安全な"シャンパラパラ"の領土に逃げるとの結論を得た」
「え。メイド通りの裏にある"シャンパラパラ"の秘密領事館なら、既にSATOの監視がついてるけど?」
「ソレより、もっと簡単に行ける場所。中央アジアの国旗を掲げる商船は"シャンパラパラ"の飛び地みたいなモンょね?」
「うーん確かに法的には手が出し辛いわ」
「でね。実は、私のアルゴリズムは"自由で開かれたインド太平洋"を横断が不可能なSボートなどの小型船舶は…」
「待ってくれ。Sボートは航洋性がアル」
「そ、そーなの?沿岸警備の魚雷艇かと…とにかく!反対に重視したのが貨物船。中央アジア船籍の貨物船は、昨日は東京港には1隻だけょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その1隻の中で、翠色の髪の女が超イラついてるw
「ねぇ!どこまでバレてるの?私の名前やスパイ機関のメンバーもバレた?私の仲介役も監視されてるの?情報漏洩の範囲は?」
「あら…何にも知らないわ…枕を高くして寝てて…目が覚めたら…蔵前橋(重刑務所)?」
「ふん。カクラ・リンクが歌ってくれたわ」
「…ハッタリ…ね…拷問されても…口を割らないわ…諜報トップを殺して…タダで済むと思ってるの?」
超イライラ翠髪女は、薬に手を伸ばす。
「お次は"キヌクリジニル・ベンジラート"。主な作用は、アカシジア。静座不能になるわ。じっとしてられなくなるけど、貴女は動けない。あ。変化はソレだけじゃナイわ。痛みの感覚も増幅されるの。注射針がナイフのように感じられるわ」
「幻覚作用…意識障害…運動失調症も…忘れないで」
「良く知ってるわねwじゃ覚悟はOK?」
そのヤリトリを壁に額をつけ目を瞑って聞いているドウェ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「昨夜、富津岬沖に停泊していた中央アジア船籍の"ティカ丸"は、中古自転車を積んで、火曜出港の予定が、今朝出港予定に繰り上がってます」
「"ティカ丸"に積んだ中古自転車の荷主は、ネパールの専門商社ですが、ICPOに拠れば"シャンパラパラ情報部のダミー企業"との情報です」
「ラギィ。SATO司令部から昨夜の東京湾の衛星画像を仕入れて来たわ。ちょっちコレを見て」
ムーンライトセレナーダーが画像を紹介。モニターに"ティカ丸"にSボートが接舷スル赤外線画像が流れる。さらに、Sボートから貨物船に移乗するマリレ&ドウェのclose-up。
「続いて、画像のパート2」
今度は昨夕"ティカ丸"が慌ただしく出港して逝く様子だ。
「ちょっと待って!桟橋に停車してる黒いSUVだけど、拡大出来る?そう、ソンな感じ。コレ、ホイップアンテナ?」
ラギィ警部が指差すSUVの天井に特徴的な形のアンテナがw
「政府の車?ねぇ天井に赤外線マーキングしてナイ?光学処理して」
「やってみます…あ。ありましたw」
「持ち主を調べて!大至急!」
SUVの天井に浮き出た文字は"霞町-KH-69-6"←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
黒いSUV "霞町-KH-69-6"のオーナーは…
「メイソ・ランザ。司法副長官の特別補佐官です」
「特別補佐官?ソレだけの地位なら、どんな極秘情報にでもアクセス出来るわ。スパイ組織の管理官として最適ね。手下のエージェントは?」
「ソレがドウェ?」
「マリレも?」
「とにかく!メイソ・ランザも、ドウェも、マリレも、全員を乗せて"ティカ丸"が出港してしまう!」
ココでモニターからルイナの声がスル。
「SATOの"死海ダイバー"が浦賀水道で頑張ってるから袋のネズミ。みんな!"シドレ"の衛星画像は見てくれた?」
"死海ダイバー"ソレはSATOの海底部隊。"シドレ"はアキバ上空3万6000kmに静止スル量子コンピューター衛星。
「"ティカ丸"出港時の画像から、今回の黒幕もバレた。司法副長官の特別補佐官。大物スパイだわ」
「マジ?ラギィ、早く捕まえてょ!」
「ソレが…外国籍の船に乗船スルには、捜査令状が必要だしソレには外交ルートを通さなきゃ」
「早く通してょ」
「ソレが最低でも数日、あるいは数ヶ月。拒否られる可能性もアルし」
ムーンライトセレナーダーが大きく深呼吸して割って入る。
「…ねぇ私達、肝心なコトを忘れてるわ。マリレが裏切り者かどうか。みんな、マリレの話を信じる?裏切者だと思うなら、とりあえず、海上保安庁に監視させて令状を待ちましょう」
「待って、姉様。もし判断を間違えたら、マリレが死んでしまう」
「うーん」
ココで、またまたルイナが話に割り込む。
「そこで!お悩みのみなさんのためにマリレ専用トラストメトリックを作ったわ。超特急でマリレの人生を丸ごと数式にして演算してみた。ペーパー数枚の数式だけど、スーパーヒロインの命がかかってるw」
「トラストメトリック?何ソレ?美味しいの?」
「マリレへの信頼度を数字で表すために、マリレのあらゆる行動を考慮した。今までマリレが犯したリスクや従った命令に逆らった命令。機密へのアクセス。私達と、秋葉原で共有した秘密、誓い、約束」
「ソレで結果は?」
「そんなのワカってるでしょ?その手を胸に当てて。やっぱり、マリレはマリレだった!私達が知らないマリレなんて、秋葉原の何処にもいなかった」
みんなの顔が輝く。ムーンライトセレナーダーを振り向く。
「ありがと、ルイナ。私はマリレを信じる」
「私も!」「僕も!」「ヲレも!」←
「どっちにしても真実を知りたいわ。突入しましょう」
「私の戦闘ヘリを使って」
ココでモニターの向こうでルイナの護衛隊長が割り込むw
「ルイナ。戦闘ヘリは、貴女の護衛用です。貴女の所有ではナイ」
「では、私が現場に参ります。隊長、護衛をお願い」
「貴女は国家の財産だ。無為に危険に犯すコトは国家として許されない。現場に出るコトは許可出来ない」
ルイナが車椅子でゴソゴソする。
慣れない手つきで音波銃を抜く。
ゆっくり隊長に向けるw
「行くの。お願い」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ!次に誰かに音波銃を向ける時は安全装置をハズしてください!」
「ありがとう、隊長!make my day!」
「コレでValkyrieをボリュームいっぱいで流せればな!」
東京湾上空を低空で飛ぶヘリ内での大声での会話w
UH-60"ナイトレイド"と護衛の戦闘ヘリが2機。
"ナイトレイド"には、車椅子のルイナと万世橋の警官隊とルイナ護衛の特殊部隊を満載。編隊前方にはヲタッキーズ。
「いたわ!姉様、前方に"ティカ丸"。出航準備中!」
「間に合ったわ。エアリは左舷、私は右舷から突っ込むわょ!」
「了解!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"ティカ丸"の修羅場も大詰めだw
「しぶとい!ねぇ私の名前はバレてるの?」
「バレてる…アンタが捨てた子猫の名前も…アンタのおばあちゃんの名前も…全部バレてる…ついでに…アンタのママと私のパパは…デキてる」←
「お黙り!わかった!話す気がないなら、もう誰とも話さないで!最後は塩化カリウムょ!死のカクテルで仕上げだわ!今まで痛みに耐えて、お疲れ様!やっと死ねるわょ!」
ズッと沈黙を守って来たドウェが絶叫。
「マリレ!命を賭けるほどの秘密じゃないわ。喋って!ねぇランザ特別補佐官!マリレは喋る。今から喋るから!」
「ヲタ友は…」
「何?マリレ、喋るのね?秘密を喋るのね?」
「ヲタ友は…他の人が…良かった」
「な、何を言ってるの?」
「最後に…借りが…出来そうょ」
その時…
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
爆音を轟かせヘリ編隊が到着!戦闘ヘリのバルカン砲がエンジンルームを掃射!"ティカ丸"は右に蛇行し停船、上空でホバリングする"ナイトレイド"から次々飛び降りる人影!
「万世橋警察署!万世橋警察署!」
「SATO"チーム6"!」
「ひと足お先にヲタッキーズ!」
船内からアジアン傭兵がAK-47を乱射しながら飛び出して来るが、次々撃ち倒される。船内に飛び込むヲタッキーズw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ランザ特別補佐官、何をスルつもり?」
「さっき言った通りょドウェ」
「待てと言ったわ」
メイソ・ランザが塩化カリウムの注射器をマリレの腕に突き立てる。
ドウェがテーブルの上のマリレの音波銃を斜めに構えランザを射殺。
直後に、背後のアジアン傭兵のAK-47が火を噴き、ドウェを撃ち抜く。
アジアン傭兵は"雷キネシス"の青白い電撃を浴び瞬時に真っ黒焦げw
そして、全死体がスローモーションで同時に崩れ落ちる。
「マリレ!あぁマリレ!」
「姉様、マリレの腕に刺さってる注射器を抜いて!早く!」
「塩化カリウム?息がナイわ!」
ムーンライトセレナーダーが心臓マッサージを始めるw
「ドクター!ドクター!」
「come on マリレ!頑張って!息をして!」
「船は完全に制圧…あぁ何てコト!」
ラギィが絶句。ムーンライトセレナーダーが話しかける。
「お願いょマリレ。コッチょ!秋葉原に帰って来て」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"外神田ER"。あるいは三途の河のコッチ側。
酸素吸入器をつけたママ寝息を立てるマリレ。
「バイタルは安定したけど、薬が抜け切るには、未だ数日かかるみたいょ」
「姉様。私、マリレの腕に刺さった注射器を見るまで、マリレが裏切者だと思ってました」
「ソレはウソ。そして、マリレの命を救ったのは貴女ょエアリ」
「でも、今もワカラナイのです。スパイだったマリレが、実はスパイのフリをしていた。ヲタッキーズのフリまでして…」
「病室に入らないの?エアリ」
「今日は…ヤメておきます」
エアリは、ミユリさんに会釈して病院を後にスル。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良くなっちゃって(僕を含むw)常連が溜まって困ってるw
「まぁ正直言うと、お寺での坐禅にも、少々飽き飽きしてたコトは事実だな」
「だから、破門されて良かったでしょ?テリィたん」
「境内にエアボーンして破門の原因を作ったルイナに逝われたくナイな」
「結局、地底王国"シャンパラパラ"に潜む"地底ナヂス"の目論見は何だったの?首相官邸にまでスパイ機関を潜り込ませて、何をしたかったのかしら。世界征服?」
「いや。ソンな大それた話じゃナイらしい」
「じゃ何なの?」
「聞いた話じゃ、ベルリンで1945年に死んだ独裁者の遺灰からDNAを取り出し、総統を"再生"したかったみたいだょ」
「え。"ジュラシックパーク"に出て来る恐竜みたいに?ソレって、第3帝国の再来だから第4帝国?やっぱり、狙いは世界征服ね!」
「いや。ソコまではスゴくナイらしい。せいぜい第3.5帝国ぐらいかな」
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"蘇る第3帝国"をテーマに、ヲタッキーズに潜む3重スパイ、そのハンドラー、首相官邸に潜む高官ハンドラー、スパイ機関と幻の地底王国を探るスパイ機関のハンドラーなどが登場しました。
さらに、ヲタッキーズに潜む3重スパイ、相棒に裏切られたヒロインの苦悩などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、海外観光客を迎える準備の進む秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。