第五話 真ん中が普通とは限らない
第五話 真ん中が普通とは限らない
「うっわぁ~!今日の天秤座の運勢最悪じゃん!」
アタシは今、星座占いアプリで自分の今日の運勢を占っている所だ。
「何々、まず[アナタは本日人生最大の不運が訪れるでしょう]、は?」
(なに、冒頭から不吉な事書いてんの?大丈夫このアプリ?)
「で、次は、[道を歩く時、最大の不運が訪れる。前を向いて歩きましょう。]、ザックリしてんなぁ。」
アタシは今学校の通学途中を歩いている所だ。
ふと後ろからアタシを呼ぶ声が聞こえる。
「お~い!蒼華姉!待ってよ!」
後ろから走ってアタシの所まで来ている奴がいる。
アタシは神月 蒼華で、後ろから走って追いかけて来るのはアタシの双子の弟で、神月 蒼汰、アタシたちは10月20日生まれの16歳、高校2年生だ。
アタシを追いかけてきた蒼汰が近くまで来る。
次の瞬間、蒼汰が足を躓き前のめりで倒れようとしていた。
そして、アタシとの距離が近いためか不運にもぶつかってしまう。
ただぶつかり方が悪かった。
なんと蒼汰の額がアタシの顔面めがけてぶつかってきたのだ!
アタシは鼻を押さえ、蒼汰は額を押さえて悶絶している。
「うぅっ、ぬぉ!?、アンタねぇ、朝からケンカ売ってんの?」
「うぉぉ!、い、や、違うぅ!」
アタシたちはそこで数分程そこで悶えていた。
痛みがやっと引いてきたとこでアタシたちはまた学校へと向かおうとしていた。
「ああ、もう朝から最悪!」
「ごめんて、ワザとじゃないんだから。」
「だからってあのタイミングはないわぁ~」
アタシは愚痴っていた。
「けど、もしかしてあの占い当たってんじゃね?」
アタシはふと思い出した
「占い?」
「そうそう!、なんでもアタシら今日の運勢、人生最悪らしいよ。」
「まさか~」
信じてない蒼汰は笑っている。
「いやいや、だってさっきアンタとぶつかった時ある意味当たってるし。」
「ちなみになんて書かれてたの?」
「そういや、まだ1個しか見てないけど、道を歩く時、最大の不運が訪れるとか、なんとかって。」
「あははは!、確かに不運だ!」
蒼汰は馬鹿にして笑っている。
そんな馬鹿にしながら歩いている次の瞬間アタシたちは同時に足で何かを踏んだ感触に気付いた。
何かを踏んだ事にアタシたちは固まる。
「ねえ、蒼華姉?」
「...何?」
「何か踏んだ?」
「いや、見たくない!」
だが、見て確認せざるを得ない。
アタシたちは恐る恐る足元へ目線を向ける。
目線を向けた先に最悪のある物を踏んでいた。
その最悪のある物とは?
なんと蒼汰は犬のウ〇コを!
そしてアタシはそのウ〇コをしたであろう野良犬のシッポを踏んでいた!
アタシたちはまた恐る恐る野良犬へ目線を向ける。
野良犬はグルルゥと唸って威嚇している。
アタシたちは青ざめソロォーっと足を上げ、逃げる準備をした。
次の瞬間「バウッ!」っと吠える犬と共にアタシたちはダッシュでその場から逃げた。
そしてもちろん怒った野良犬が追いかけてくる。
「いやぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
アタシたちは悲鳴を上げて逃げた。
「ちょ!、なんで!?あんなとこに犬がいるの!?」
「知らないよ!」
「ってかあの犬、マジ怒りすぎでしょ!」
「そりゃ、怒るでしょ!」
「よし!蒼汰!アンタ囮になりなさい!」
「ふざけんな!」
「もう!いやぁぁぁ!!」
アタシたちは全力で犬から逃げた。
アタシたちが犬から逃げてようやく振り切る時にはちょうど学校に着いたときだった。
「ぜぇっ!はぁっ!、も、もう来てない?」
「はぁっ!はぁっ!、たぶん」
アタシたちは息を切らしその場でうなだれている。
「はぁっ!なんで朝からこんな目に?」
「ぜぇっ!とにかく学校に着いたからよしとしよう!」
アタシたちは息を整え校舎へ向かおうとする。
「って言うか、アンタ臭うんだけど?」
アタシは自分の鼻をつまんで蒼汰に教える。
「そういや俺、犬のウ〇コ踏んだんだった!」
蒼汰は肩からガックリさせている。
アタシはそのまま昇降口から教室へ向かおうとし
蒼汰は昇降口前の手洗い場で靴を洗おうとしていた。
「アタシは、先行ってるからね!」
「あいよ」
と言ってアタシたちはその場から別れた。
それからアタシは教室に着き、朝のホームルームをしていつもの授業を受け、放課後のホームルームまで過ごした。
今日の授業などはいつもと同じで普通通り...のはずなのに、なぜか今日に限って、教科書が無かったり、ノートを違う教科のノートに書いたり、消しゴムを落として机の角に頭をぶつけてみたり、
お昼のお弁当がひっくり返っててぐしゃぐしゃになってたりと散々だった。
アタシは放課後のホームルームが終わって自分の机で深いため息をついてうなだれていた。
「はぁぁぁぁっ!、何?今日、ほんと厄日?」
そんな事をボソッと言っていると、アタシの机の前に3人の友人女生徒が来た。
「やっほー、蒼華!」
「おつかれ~蒼華!」
「蒼華っち、大丈夫?」
今日のアタシを見ていた友人達が心配そうに声を掛けてくれた。
「ヤバい、今日ほんとダメな日だわ!」
普段のアタシを知っている友人なら確かに今日のアタシはおかしいと思うはず。
「そうだよね。いつもの蒼華っちならそんな小さいミスしたりしないもんね。」
「そうそう、栞先輩と同じで、完璧美少女っていわれるぐらいだもんね。」
アタシは美少女と言われ少し照れる。
「ちょっと、皆そこまでは言いすぎだよアタシだってミスする時はミスするし」
と弁明をした。
「あ~でもさ、占いを信じてるわけじゃないけど、今日のは信じると思うような事ばかりだわ。」
アタシは話題を変え今日の出来事が占いのせいと思うように話をした。
「占い?」
「そうそう、最近入れたアプリのやつなんだけど、ほらこれ。」
アタシはスマホのアプリアイコンを指差して友人達に見せた。
「あーこれ知ってる。」
「私も知ってるよこれ。なんでも的中率99%って言われるやつだよね。」
「そうなの?」
アタシは最近入れたから知らなかった。
「ちなみに蒼華って何座?」
「天秤座だよ。」
「ふむふむ。」
友人が自分のスマホでアタシの星座占いを確認している。
「げっ!、ヤバいじゃん今日の天秤座!」
「何て、書いてんの?」
他の友人が聞く、そう言えばアタシも最初のやつ以外全部見てなかった気がする。
「え~っと。」
友人が最初のやつを言った後他の見てない記事を聞く。
「[今日のアナタは普段普通の事がまたっくできないでしょう。違う事にチャレンジして運気を上げましょう。]と」
「[朝の通勤、通学そして帰りは運命の分岐とも言えます間違えれば最悪の未来になるでしょう]だって。」
「なに、それ?最後とかイミフなんだけど?」
「だってそう書いてるもん」
確かに最後はよくわからない、未来が変わるほどの何かが起きるって事?
「あ~!でも、恋愛運はいいこと書いてるっぽいよ。」
「なになに?、[今日アナタが好きだと思う人と手を繋ぐ事が出来れば、その人と結ばれるかもしれません。積極的に手を繋いでみましょう。また、運気が回復するかもしれません。]...」
「「「......」」」
3人が黙って神妙な表情をしている。
「好きな人と手を繋ぐ...」
「手を繋いだら恋人...」
「恋人=結婚?」
最後は違うと思うが3人がおかしい
「ど、どうしたの?3人共?」
そう言った瞬間
「「蒼華!」」
「蒼華っち!」
アタシはビクッとし返事する。
「な、なに?」
「「「蒼汰君は、今何処!!」」」
3人同時に聞いてくる。
(いや、何処と言われても知らないよ!)
そう思っていると教室の外、廊下から何か地響きみたいな音が聞こえてくる。
まるで獲物が逃げてそれを何人もが追いかけているような。
そしてその地響きが教室を横切る時、悲鳴みたいな声がする。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
その声は蒼汰だった、蒼汰が女子生徒に追いかけられ逃げているようだ。
その声を聴いた友人3人が目の色を変える。
「今の声!、蒼汰君!?」
3人は猛烈な勢いで教室から出て行く。
「まってぇ~蒼汰君~!!」
「蒼汰きゅ~ん!私と結婚して~!」
3人はそう言って蒼汰を追いかけて行った。
アタシは3人を呆気にとられ廊下を見ていた。
すると目の前が急に薄暗くなる。
アタシは顔を見上げた。
そこには何人もの男子生徒が立っている。
男子生徒が口を開く。
「ね、ねえ蒼華さん、噂で聞いたんだけど、今日僕達が好きな人と最初の人に手を繋ぐと恋人になってくれるって本当かい?」
鼻息を荒くして聞いてくる。
「ちょっと、待て俺が聞いたのは、恋人じゃなくて嫁になってくれるだったぞ?」
「いや、違うぞ!俺が聞いたのは、俺が豚になって蒼華さんが調教してくれるって話だぞ!」
男子生徒がそんな噂を聞いたらしい。
(まて!まて!まて~!、何その噂?、ってか逆でしょ?アタシが好きな人だよね?それよりも最後キモイんですけど!?)
アタシは全身に鳥肌が立ち、そう思いながら男子達を見る。
そして男子達は鼻息をさらに荒くしてにじり寄ってくる。
アタシは全身に冷や汗を書きながら席を立ち、そして一気に男子達の横をすり抜け廊下までダッシュで逃げる。
そのまま廊下をダッシュで逃げると男子達も追いかけて来る。
「蒼華さ~ん!待ってくれ~!」
「蒼華た~ん!僕と合体しよ~!」
「蒼華ちゅわぁ~ん!この僕に愛の鞭を!いや本物の鞭でぶってくれ!」
そう言って追いかけて来る男子達
アタシは今日の出来事を振り返り段々とイライラしてきた。
そして男子達に罵詈雑言を言う
「ざけんなし!テメェーら不細工が鏡みてこいや!、そしていっぺん転生し直して出直してこい!ってかそこの豚!キモイんだよ!キ〇玉潰すぞ!!」
とアタシは逃げながら両手で中指を突き立てた!
だが
「きたきたきたぁぁ!」
「あっふ~~ん!!いい!」
「おっほぉ~!、もっと!もっと言ってくれ!」
アタシは更に全身に鳥肌が立ち青ざめる。
「ひっいぃぃ!」
(ムリ!ムリ!気持ち悪い)
アタシは全力で逃げる!
全力で逃げた先で同じく逃げている蒼汰と合流する。
「そ、蒼華姉助けて!」
「あほか!アタシを助けろ!」
アタシたちは追いかけられながら、学校の外まで出ていた。
そしてあらゆる場所を行ったり来たり、路地裏等を逃げてようやく逃げきる事が出来た。
「はぁっ!、はぁっ!、もういない?」
「はぁっ!、はぁっ!、たぶん!」
アタシたちは息を切らし周りを確認している。
「てか、ここ何処?」
アタシたちは逃げながら知らない場所まで来ていたようだ。
「わからないよ、とにかく何処か大通りに出たらわかるかも?」
蒼汰が道の先を指差して答えた。
「そうね、とりあえず此処から離れましょ。」
アタシたちはその場から離れるように歩き始めた。
歩き始めて数分たち突き当りのT字路に差し掛かった。
「どっち?」
「う~ん、わからないけどこっちじゃない?」
まるで迷路のような住宅街をアタシたちは進み、どこか冒険をしているような感覚になりアタシたちは少し面白くなっていた。
しかし
「あれ?ここさっきも通らなかった?」
「そうだっけ?じゃあ今度こっちに行ってみよ!」
アタシたちが先ほど通った似たようなT字路があり今度は逆の方向へ進もうとする。
そして曲がった先でアタシたちは立ち止った。
いや、立ち止まる理由があった。
その立ち止まる理由とは、アタシたちは足で何かを踏みつけたのだ。
そしてその踏みつけた物は、ここ最近踏んだような一緒のような感触だった。
「…ねえ、蒼華姉?」
「…黙れ!」
「蒼華ねぇ~!」
蒼汰が涙声で何度も呼ぶ
アタシは目をつぶり天高く顔を上げる。
「そう何度も何度も、同じ事が起きるはずがない!!」
そしてアタシは目を開き勢いよく顔を下げ足元を確認する。
だが現実は厳しくデジャヴと思わせるほどの光景が起きていた。
それは朝と同じく蒼汰は犬のウ〇コをアタシは犬の尻尾を踏んでいた。
「フッ!」
アタシは鼻で笑い蒼汰に目線を合わせ頷く。
そして犬の確認をせずアタシたちは勢いよくその場から離れてダッシュで逃げた。
だが案の定、犬も追いかけてきた!
「バウッ!バウッ!」
犬は怒って吠えながら追いかけて来る。
「きゃぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
アタシたちはまた叫びながら逃げた。
「こんなデジャブいらないんだってば!」
「なんで?また踏んでんだよ!」
「知らないわよ!」
「てかあの道あそこで曲がらなかったよかったじゃん!」
曲がる道を間違えた?
だが
「もう遅いわよ!」
そうもう遅い!、踏んだという事実は変わらない。
「よし!、アンタ囮になりなさい!」
「だから!ふざけんな!」
アタシたちは逃げながら言い争う。
そして走り続けて開けた場所が見えてくる。
「蒼華姉!大通りだ!」
蒼汰が指を指す。
「あそこまで行ければ!」
そして大通りに出た瞬間それは起こった。
「うわっ!」
蒼汰が足を引っかけ躓きこけたのだ。
仕方がないことだがアタシたちは今日一日中走り続けている。
誰だって走り続ければ疲れる。
疲れば足にだってくる。
アタシは立ち止まり振り返る
「蒼汰!」
だがアタシは立ち止まる場所が悪すぎた。
立ち止まった場所は車道だった。
当然だが
パッパァ~~!!
横から車のクラクション音が聞こえる。
「蒼華姉!!」
アタシは車の方向へ振り返る。
(うそ?アタシここで轢かれて死ぬの?あそこの道を曲がり間違えたから?)
(これが最悪の未来?いやだ、やだよ!アタシまだ好きな人と手を繋いでない!)
アタシは目を瞑り走馬灯が頭を横切る。
もうぶつかる!アタシは諦めた瞬間だった。
だがその瞬間アタシは何かに腕を引っ張られ何か暖かい物にぶつかり抑えられている感覚になった。
車にぶつかった感覚ではない、まるで人に抱きしめられている感覚だ。
アタシは恐る恐る目を開ける。
目を開けると目に見えたのは誰かの胸板だった。
アタシは車に轢かれる寸前に誰かに助けられていた。
蒼汰ではない、蒼汰はうつ伏せで犬に頭をかじられていたはず。
じゃあ誰?
アタシは顔を見上げその人の顔を確認する。
その人はとても見知った顔で毎日見ている人だった。
「大丈夫か?蒼華?」
その人はアタシの兄の蒼杜兄だった。
蒼杜兄を見たアタシは急な安堵感になり目頭が熱くなる。
「あお兄?、あお兄!!」
アタシはあお兄に抱き着き涙が抑えれなかった。
「うわぁぁぁ!あお兄!、怖かったよぉ!」
「よしよし、ほら、もう大丈夫だから。」
「うわぁぁぁぁん!」
アタシは少しの間あお兄の胸で泣いていた。
横で蒼汰が助けを求めていた。
「蒼杜兄、俺も助けて!」
そういや忘れていた。
蒼汰はまだ犬とじゃれついていた。
あお兄はアタシを立ち上がらせアタシから離れ蒼汰を助けに行く。
「ほれワンコもうあっちにお行き」
あお兄は犬を持ち上げ降ろしあっちに行けとお尻をポンっと叩いた。
犬は走って何処かに行ってしまった。
「蒼汰も大丈夫か?」
蒼汰に手を差し伸べ立ち上がらせる。
「うん少し痛いけど大丈夫。」
蒼汰が立ち上がる。
アタシはここでふと疑問に思いあお兄に訊ねた。
「ねえ?あお兄、どうして此処にいるの?」
「どおしてって、ここは俺が通ってる大学の近くだからだよ。」
あお兄が答える。
「むしろ、逆にどうして、お前達が此処にいるのかだけどな。」
アタシは事の経緯を話す。
「なるほどね、で?車に轢かれかけてった訳だ。」
「うぅ~はい、そうです。」
アタシは車に轢かれそうな所を思い出していた。
あお兄は、たまたま運よく近くにいたらしくアタシが車道に出た瞬間には助けに走ってきたらしい。
「はぁ、でもよかった!俺が近くにいて、じゃなかったら...。」
あお兄はそれ以上何も言わずアタシを心配そうに見つめてくる。
「まぁ、でも二人とも無事でよかったよ。」
あお兄は安堵している。
その時後ろから声が聞こえてくる。
「お~い、蒼杜!私も一緒に帰るから待ってよぉ。」
後ろから小走りで走ってくる人がいる。
その人はアタシの姉で蒼唯姉だった。
「あれ?蒼華ちゃんに蒼汰くんがいる?どぉしてここにいるの?」
あお姉が疑問に尋ねてくる。
アタシはあお兄と同じくまた事の経緯を話す。
あお姉は顔が青ざめアタシをペタペタと触ってくる。
「ちょっと!大丈夫なの?ケガは?、痛いとこない!?」
「だ、大丈夫、ケガとかないから。」
そして、あお姉が抱き着いてくる。
「もう!心配させないで!」
「うん!ごめん、本当もう大丈夫だから、ね、あお姉。」
アタシはあお姉の背中をポンポンと叩く。
「ほら、蒼唯。蒼華も大丈夫って言ってるんだから、帰るよ。」
あお兄があお姉に帰ろうと促す。
「うん、わかった!皆で帰ろ!」
あお姉がアタシから離れた。
「蒼華!今日は災難だったみたいだし、ほら!」
あお兄が手を差し出してくる。
(あっ!)
アタシはふと占いの事を思い出す。
[今日アナタが好きだと思う人と手を繋ぐ事が出来れば、その人と結ばれるかもしれません]
(兄妹だから結ばれることはないけど、今日ぐらいはいいよね!)
アタシは顔を赤らめあお兄の手を取る。
「うん!」
アタシはあお兄と手を繋ぐ。
「あ~ずるい!お姉ちゃんも手繋ぎたい!」
あお姉が手を繋いでいるとこを見て顔をむくらませている。
アタシは手をあお姉に差し出す。
あお姉はうれしそうに手を掴もうとしてくる。
が、アタシは手を避けて上に躱す。
あお姉は、が~んってな感じの表情で涙目になっている。
あお姉のこういう所が本当に可愛い!
アタシは、あお姉の後ろを指を指す。
指を指した場所に忘れ去られていた蒼汰がいた。
あお姉は後ろに振り向き
「あ!蒼汰くん!蒼華ちゃんがいじわるするからお姉ちゃんと手を繋いで帰ろ!」
と蒼汰に抱き着く。
「わ、わ!ちょ!、蒼唯姉わかったから!」
と顔を赤らめる蒼汰。
とてもうれしそうだなと思った。
あお姉は蒼汰から離れ手を繋いでいる。
蒼汰もアタシと同じく今日は散々だったはず。
だから
(蒼汰にも分けてあげなきゃね。)
アタシ達は手を繋いで家に帰ろとした。
(アタシたち、周りから見たら恋人同士とかに見えるのかな?)
と少女恋愛チックなことを思いつつその後は何事もなく家に着いた。
家に着き玄関を開け中に入ると。
「お兄様~!お帰りなさ…」
勢いよく玄関まできた少女が急に固まった。
この子はアタシの妹、奏恵だ。
奏恵が急に固まった理由を考えた。
(あ!)
アタシは直ぐに気づいた。
アタシはまだあお兄と手を繋いでいた。
「あ、あのね、これは違うの!」
アタシは、おあ兄から手を放し言い訳をする。
奏恵がゆらりと動き始めた。
「お兄様、お姉様!あと蒼汰兄さん、私蒼華姉さんと話しがあるので先に上がってて下さい。」
「え?ああ、わかった。」
三人は玄関を上がり各々散らばる。
蒼汰は合掌して此方を向いていた。
(ごめん!蒼華姉!)
(この!裏切者!)
アタシ達は目で会話をする。
そして奏恵が話しかけてくる。
「さて、蒼華姉さん?」
「は、はい!」
「先程、お兄様と手を繋いでましたよね?、まるで恋・人・同士みたいに!」
奏恵が血の涙を流さんばかりの勢いで聞いてくる。
「いや!だから、あれは、その…」
アタシは上手い言い訳が見つからない。
本当に今日はついてないアタシは今日一日どれだけ不幸な目にあっただろう。
そう思いながら奏恵がため息をつく
「はぁ、まあ今日はもういいです。」
「へ?」
アタシは奏恵を不思議そうに見る。
いつもならあお兄の事になると包丁でも持ってきそうな勢いなのにどうしたのだろうか?
「蒼華姉さん、天秤座でしたよね?だから、今日だけは許します。」
アタシはその一言で察した。
この子も占いの事を知ってて、そしてアタシの事を心配していたのかもしれない。
だからアタシは
「ありがと!奏恵!、心配してくれたんだね。」
アタシは奏恵に感謝の言葉を言う。
「べ、別にそんなじゃありません!、ただ蒼華姉さんの不幸がお兄様達に迷惑かけてないか心配だっただけです。」
奏恵が照れて言い訳をしている。
「クスッ!どっちにしろ心配してじゃん。」
「う、うるさいです!、それと!お兄様と手を繋ぐのは今日だけですから、次はもうないですからね!」
「はいはい」
アタシはそう返事をし奏恵が顔をむくらませている。
アタシは奏恵をなだめながら一緒に玄関から上がりリビングへ歩いていく。
本当に今日一日いろいろありすぎた、死ぬかもしれない思いまでした。
これが最後だと思いたい。
でも、アタシが本当の不幸だと思ったのは今日ではない。
本当の不幸だと思う出来事があるのはまだ先だがそれを今のアタシは、いやアタシ達は知らない。
今の幸せと思う時間は確実に減っている。
「本当今日一日は人生最大の不幸だったな。なんてね。」
第五話 真ん中が普通とは限らない 完
第六話 可愛いイタズラ 続
よろしければブクマやお気に入りにしてくれると嬉しいです。
一人でもいればその人の為にも書き続けれる意欲にも繋がると思いますのでお願いします。
もしここまで読んで頂けたら下の★★★★★にも評価頂けたらとても嬉しいです。
今後も「兄妹みな神様になりました」略してみな神をご愛読お願い致します。