第三話 天才
第三話 天才
「今日の空は青いね~。」
私は家のベランダで空を見上げている。
「そうですね。」
隣にいる奏汰が空を見上げながら同意をしてくる。
私は四女の奏恵、隣にいる奏汰と双子で姉です。
「はぁ~あ!、早くお兄様帰ってこないかしら?」
私はため息交じりで縁側に寝そべる。
「姉様も早く帰ってこないでしょうか?」
奏汰も同じようにつぶやく。
「って言っても二人が出ていって、まだ、二時間しか経ってないですけど。」
奏汰が家の時計を見てうなだれる。
「うに~~!、お兄様成分が足りないです!早く、GO!TO!HOME!!して下さい!お兄様~~!!」
私は起き上がり空に向かって叫びました。
近所迷惑極まりないですが。
私達がお兄様、お姉様と呼んでいるのはもちろん蒼杜お兄様と蒼唯お姉様の事です。
他の兄妹には普通に兄さん、姉さんと呼びます。
なぜお兄様とお姉様には敬愛呼称で呼ぶのか?
それは、ある事がキッカケでそう呼ぶようになってしまったのです。
それまでの私達は当時かなり生意気な兄妹だったと思います。
お兄様やお姉様の事を[この人]や[アナタ]なんて呼び、一度も兄と姉の敬称で呼ばなかった程に生意気で、今思うと吐気がするぐらい昔の自分達に嫌気がさします。
そこまでヒドイ私達がここまで改心するとは兄妹みな思ってもいなかったのではないでしょうか?
そんなあるキッカケとは何だったのか?それは、10年前まで遡ります。
私は目をつぶり当時の事を思い出す。
10年前...
「ちょっと!奏恵ちゃん!、奏汰くん!、どうして皆と遊ばないの?」
母親らしき人が私達を呼び止め話かけてくる。
「逆に、どうして私達がアノ人達と遊ばなければならないんですか?」
と逆に尋ねる。
母親は困ってしまい少し俯きながら答える。
「どうしてって…あなた達はまだ子供で兄妹皆で遊ぶ方が楽しいでしょ?」
私は母親に向かって呆れ顔で答えた。
「そんな子供に対して、ありきたりな答えなんか聞いてないです。むしろもっと私達が納得できるような答えが聞きたかったです。」
母親は少し泣きそうな顔になり黙ってしまった。
「話がそれで終わりなら、私達はもう部屋に戻ります。」
私は母親にそう言って背を向け部屋に戻ろうとする。
後ろで母親が手を差し伸べている事に気付かず。
奏汰はそれに気づいて私に話かけてきた。
「奏恵姉さん?よかったの?」
私は聞き返した。
「何が?」
奏汰はうつむいてしまい答える。
「ううん、なんでもない...」
そう言って黙ってしまい私の後ろを付いてくる。
私達は当時まだ5歳ではあるが周りから[天才児]などと持て囃されており天狗になっていたんだと思います。
本当の[天才]が身近にいる事を知らずに。
「ホントここの家族は、バカばっかり。」
私は愚痴りながら部屋へ戻ろとしている。
部屋に戻る途中、一番上の兄と姉に出会いました。
兄が私達に話かけてきました。
「お?、奏恵、奏汰、俺たちと一緒に外で遊ばないか?」
と兄が私達に誘ってきましたが
「結構です!」
私は、それをハッキリ断りました。
すると姉側も私達に話しかけてきました。
「う~ん、でもたまには外で体を動かさないと体に悪いよ?」
それでも私はハッキリと答える。
「本当に結構です!」
と言い放ち兄達を睨む。
兄達は諦めた様子でため息をつき答えました。
「ふう、わかった。でも、遊びたくなったら外においでよ。」
兄がニコッとして親指で外を指している。
でも私はそれを無視して奏汰を引っ張り、また部屋へ戻ろうとする。
私はあの二人が嫌いです!
嫌いになった理由としては、少し昔ですが私はチェスにハマっていたのです。
そのチェスで、親や一番上の兄妹以外の兄と姉に勝負して一度も負けたことがなかったのです。
そして、一番上の兄と姉にもチェスで勝負を誘いましたが一回も受けてくれませんでした。
それどころかあの人たちは
「それより外で一緒に遊ぼうぜ。」
などと言うものですから私は心の中で
(ああ、この人達は、私に負けるのが怖くて臆病なバカなんですね。)
と思い込み私は二人を失望しました。
それからはこの家族で私と奏汰以外は頭の悪い家族だと思い込み始めたのです。
だから、私はここの家族に何も期待しないことにしたのです。
特に一番上の兄と姉には。
そこまでが私の生意気時代だったころの話です。
そして、その後に起こるある事をキッカケに私が改心した出来事が起こるのです。
その日は父親が不在で、夕食は父親が居ない状態での夕食となりました。
ゴハンを食べている最中、母親が私に話しかけてきました。
「ねえ?奏恵ちゃん?もう少し他のお兄ちゃんとお姉ちゃん達と仲良くできないかな?」
また、その話かと思いながら母親が続けて話す。
「お兄ちゃんも、お姉ちゃんも、奏恵ちゃんと仲良くしたいって思ってるんだよ。」
私は段々とイライラしてきた。
遂には、私は持っていた箸を母親に投げつけ言い放つ。
「しつこいです!、私は仲良くする気なんてないんです!」
箸が母親に当たり軽い悲鳴をあげる。
「きゃっ!」
母親はそのあと口に手を押さえポロポロと涙を流し始めた。
私はそれを見てバツが悪くなったのか奏汰の手を引っ張り部屋に戻ろとした。
途中で「待て!奏恵!」という声が聞こえたが私は無視してそこから立ち去った。
私達は部屋の中に入り、奏汰が不安そうに私を見てしゃべりかけてきた。
「姉さん?」
私はイラつきながら聞き返す。
「何?何か言いたいならハッキリ言いなさいよ!」
奏汰はビクつき顔を下へ向ける。
その時、部屋のドアがノックされた。
ノックと同時に一番上の兄の声が聞こえてきた。
「奏恵?、お兄ちゃんとお姉ちゃんだけど、話かあるから入ってもいいかな?」
話なんてどうせさっきの事で説教しに来たんだろうと思い
私は少し考えたが、どうでもいいと思いそっけなく返事をする。
「どうぞ…。」
そう答えると兄と姉が部屋に入ってきた。
兄と姉が部屋の真ん中に座り、私達を手招きしてきた。
私達は渋々それに応じて部屋の真ん中に座り込んだ。
私達が座ると兄が口を開き始めた。
「え~っと話って言うのは…、いや、ちょっと待てよ。」
そう言って兄は腕を組んで考え込んでいる。
考え事が終わったのかまた、口を開いた。
「よし!話の前に、奏恵と奏汰!、俺たちとチェスで勝負しないか?」
私は不意な言葉に驚いてすっとんきょうな声が出てしまった。
「はあ~!?」
この人は急に何を言い出すんだ?と思いながら兄が話を続ける。
「いいだろ?、ほら、結構前にお前達が俺達とチェスやりたがってただろ?」
前はそうだったかもしれないが、今は別にやりたいと思わない、そう返事をしようとしゃべる前に兄が立ち上がった。
兄は部屋を見渡し、部屋の中に置いてあるチェス盤を取りに行った。
取りに行ったチェス盤と駒2セットを私達の前に置いた。
兄と姉が駒を並べて、兄が口を開く。
「ほら、やろ?」
私はため息をついて渋々答える。
「はぁ、わかりました。やればいいんでしょ?やれば。」
そう言って兄がニコッとして答える。
「よし、じゃあ奏恵は俺と対局で、奏汰は蒼唯と対局な。んでっもってお前たちが先手でいいぞ。」
私はまた、ため息をつきながら白のe2ポーンを掴みe4へ進める。
奏汰も同じ駒を同じ場所に置く。
兄と姉の手番になった時、兄が口を開く。
「俺達が勝負と言った以上ちゃんと勝敗条件を決めないといけないな。」
兄が続けて条件の事を話し出す。
「まず、お前たちの勝利条件は奏恵か、奏汰どちらかが俺達に一局でも勝てたら勝利。」
「そして、俺達の勝利条件は…俺達が納得して投了したら勝利だ。」
私は一瞬思考が停止した。
意味がわからなかった。
(はい?どういうこと?、最初の勝利条件はわかる。次のこの人達がリザインしたら勝利ってどう言う意味?、普通に考えたらそっちがリザインしたらこっちの勝ちでしょ?)
私は困惑した表情で尋ねる。
「そちらのおっしゃた勝利条件の意味がよくわからないのですが?」
兄は答える。
「やればわかるよ。」
兄はそう言ってそれ以上なにも言わなかった。
(なによそれ?つまり何?、そっちが都合が悪くなると勝手にリザインして、俺たちの勝利とか馬鹿なこと言う気ですか?)
「じゃあ、俺達の手番だな。」
そう言って兄達は黒の駒を進めて行く。
そしてこの後、私達はこの人達の言った勝利条件の本当の意味を知る事となる。
第三話 天才 終
第四話 本当の天才 続
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今後も「兄妹みな神様になりました」略してみな神をご愛読お願い致します。