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兄妹みな神様になりました  作者: 戒入三佑
第一節 【過去編】 第一章  兄妹の日常 
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第零話

第零話



「ハァ……ハァ…」

男は息を切らし女を抱えたまま歩いていた。


「……蒼唯あおい?…クス…先に逝くなんてズルい奴だ…」

男の呼びかけに蒼唯と呼ばれる女は返事をしなかった。

女は既に事切れていた。


「…さて、この辺かな…」

男は広い草原に座り込み女を膝に寝かせる様にしてその時を待った。


「…一応張っておくか…」

男はそう言って手を上に上げ自分達の周りに何か膜の様な物を張り巡らした。

その膜はバリアのようなものでそのバリアは誰も入れない物だ。

それと同時に遠くから八人の男女が此方に向かってくるのが見えて来る。

八人の男女が彼等の前に降り立った。


「…蒼杜あおと!もうここまでだよ…終わりにしよう!」

八人の内の一人の女が座り込んでいる男に終わりだと告げる。


「今ここで死ぬか兄さんから出て行くか選べ!」

今度は八人の内の一人の男が彼に問いかける。


「………」

男は何も答えなかった。


「また、黙りか、何か言ったらどうなんだ!」

八人は何も知らない。

彼らのしようとしていた事を何も知らなかった。


「………様ーー!!」

遠くから声がしてくる。

遠くから二人の男女が近づいてくる。

「お兄様ーー!!」

その声は段々と近付き男女は彼等のバリアへとぶつかった。


「なっ!?」

女はバリアにぶつかり八人の前に降り立った。


「え!?奏恵かなえ!?奏汰かなた!?」

八人は驚いていた。

「ちょっと待てお前ら死んだんじゃ!?」


「そんな事はどうだっていいんです!!」

奏恵と呼ばれる少女はそう言って彼等…バリアの前に立ち。


バンッ!バンッ!

少女はバリアを叩いた。


「お兄様!!ここを開けて下さい!!馬鹿な事は止めて下さい!!」

少女は彼に必死に呼びかけた。

少女を見ていた八人は困惑していた。

八人はどうしていいか戸惑っていた。


必死に呼びかけている少女の傍らでもう一人の奏汰と呼ばれていた少年はその場で泣き崩れていた。


「…ああぁ、そんな嘘です…姉様…お願いです、返事をして下さい!」

二人は彼らのしようとしていた事を知ってしまった。

だから少女は必死にそれを止めようとしている。

少年はそれが遅かった事に嘆いている。


「お兄様!お願いです!ここを開けて…」


「…奏恵…一体何が…」


「皆さん!!お願いです!!早くお兄様を止めて…いえ、助けて下さい!!」

少女は八人に必死に呼びかける。

八人は状況が理解できす戸惑っている。

そんな時また遠くから六人の女達が近づいてくる。

近づいてきた六人の内の一人がバリアの中にいる男へ敬礼し話しかける。


「お疲れ様…でした…マスター…」


「…アルテミス?…どうしてここに?…それにルナ姉妹?」

八人はさらに困惑した。

アルテミスと呼ばれる女の後ろで五人の女達は涙を流し泣き崩れる者、震えながらも泣かぬ様我慢している者、彼女達もまた彼等がしようとしていたことを知っている。


「…来たか…」

役者が揃ったと言わんばかりにようやく男は口を開いた。


「ハッ!?…兄さんなの?」


「ッ!!お兄様!!もういいです!!お兄様達がそんな事をしなくても何か他にも方法があるはずです!!だからお願いです!!ここを開けて下さい!!」

男が口を開いたことに少女は更に必死に何かを止めようとしている。


「……もう、遅いんだよ奏恵…他には何も方法はない、こうする事しか方法はないんだ。」


「いやです!!何か何かあるはずです!!」


「………アルテミス、最後の命令…いや、お願いだ、この子達をここから遠くへ連れて行ってくれ。」


「り、了解…致しました。」

アルテミスは周囲に魔法陣らしきものを展開し始めた。


「こ、これは?転移!?」

魔法に精通している者が気付く。


「な!?ちょっと待ってください!!まだお兄様がそこにいるんです!」

だが展開し終えた魔法陣は起動しその場にいる者全員を飲み込み始めた。

蒼杜と蒼唯以外を残して。


「待って!!待って!!お兄様!!お兄様ーーー!!」

少女は手を伸ばしたがそれは届かなかった。

そして二人だけを残し全員がその場からいなくなった。


「…行ったか…」

男はポツリと呟く。


「…さて、もう時間はない、やるか…ったく最後の最後まで全部俺に押し付けやがって。」

男は横たわっている女の頬を撫でる。


「…元気でな…"Family ties forever"…なんてな…瑠香るかさんなら格好つけてそう言うのかな?」

男は笑っていた。


「俺もそっちへ行くよ…だからまた馬鹿な事聞かせてよ。」

男はそう言いながら手を天高く挙げる。

それと同時に二人の身体が輝き出し眩い光に包まれる。


「さあ!芽吹け!!」



「世界樹よ!!!」



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