表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第十二話 -槍の向く先-
69/321

先手


 扉の開く音によって、会話はすっと途切れた。三人分の視線を受け止めたリンは、それぞれの顔を見渡すと小さく頷く。

 片羽(かたは)(ゆい)はだらけた姿勢を改め、リンの方へ身体を向ける。

「目は醒めたみたいね。今日は動くわよ」

 部屋に入りながらそう宣言すると、リンはテレビを出力していたモニターに地図を表示した。

 見た目十一歳、実年齢二十八歳のリンだったが、声に芯が入っているからなのか。指示棒を引っ張り出し、白衣を棚引かせて地図を指し示していく姿は、中々堂に入っている。

「眼鏡が似合いそうだ」

 唯は小声で呟く。銀髪に赤い目、白い肌に小学生同然の体格、おまけに白衣まで揃っているなら、眼鏡だって様になるだろう。

「ドクターと共同開発って形だけど、レーダーをアップグレードしたわ。まあ、正確にはここからがレーダーとしてスタートって感じかしら。活動状態のレリクトを検知し、逆説的にアロガントを探知するこれまでの方式とは違う。アロガントを炙り出す為のアクティブレーダーよ」

 こういう時、決まって反応は二つに分かれる。リンの話はやっぱり分からないと唯は無言を貫き、狗月(いぬつき)(ひかる)はしっかりめのクエスチョンマークを頭の上にこしらえている。

 唯一理解しているのは、車椅子に座り頷いている鈴城(すずしろ)(みどり)のみ。

 そんなお決まりの反応を確認してから、リンは会話のレベルをこちらにチューニングしてくれる。

「今までなら、アロガントが動かないと居場所が分からなかった。これからは、アロガントが潜伏している場所が分かるってこと。要するに、先手を打つわ」

 唯と光が揃って頷く。

「そこを攻撃して全滅させればオッケーってこと?」

「街に被害も出ないし、凄いぞリン(ねえ)!」

 唯と光の声に、しかしリンは首を横に振る。その様子を見ていた緑が、小さく手を挙げて発言する。

「何か問題があるってことですか? うまく機能しないとか」

 リンは頷き、モニターの地図上に表示されたポイントを指示棒で示す。

「機能はしてるわ。問題は、このレーダーは万能じゃないってこと。そもそも、レーダーと銘打ってはいるけれど。本質は演算器に近いわ。アロガントの生態、これまでの襲撃パターン、潜伏先の候補といった各要素を、煮詰めて確率の高い場所をピックアップしているの。そして、その中からレリクト反応を追い掛けていく。完璧じゃないわ」

 緑は深刻そうに頷き、唯は神妙そうに頷く。光はさっき取り下げたクエスチョンマークの再設置と忙しそうだ。

 唯だってある程度考える頭がある。しかし、全てを理解出来ないが故に、一つの疑問が湧いてくる。即ち、じゃあ何でレーダーって名乗ってるの? というどうでもいい問いだ。当然、どうでもいいので今は黙っておく。

「じゃあ、地図上の二つのポイントは」

 全部分かっているだろう緑が、話を進める為に切り出す。リンは頷き、唯と光をとりあえず置きっぱなしにして説明を続ける。

「もっとも可能性が高い潜伏地点よ。まだ候補はあるけど、試運転も兼ねてまずは二箇所。こちらの戦力はレリクスが二騎、同時に叩くわ」

 今回の内容は分かりやすい。緑だけではなく、唯と光も頷くことが出来た。

「とりあえず、そこを攻撃して全滅させればオッケーってことか」

「それなら街に被害も出ないし、やっぱり凄いぞリン(ねえ)!」

 唯と光が導いた結論を前にして、リンは口をへの字に曲げた上で眉をひそめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ