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ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第四話 -新たな刃-
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重装の内側


 遠く離れた場所で、《アーマード》レリクスは左腕型アームドレイターを外した。

 ナンバー08(ゼロエイト)と呼称される青年が、取り外した左腕に視線を落とす。その傍らに、08(ゼロエイト)用備品と呼称される少女が姿を取り戻した。金髪駅眼の少女は、地面に座り込むと荒い呼吸を繰り返す。

「すまないな。最後の一撃を凌ぐ際に、君に負担を掛け過ぎた」

 謝罪するものの、青年は相変わらず無表情のままだった。

 少女は睨むようにして青年を見上げる。

「……こんなの、テスト段階でも感じなかった。ずっとあんた、あたしを」

 青年は、少し罰が悪そうな顔をして目線を逸らす。少女は歯噛みしながら、込み上げる感情を押し殺す。少女は今まで戦っていて、負荷らしい負荷を感じたことはなかった。

 だが、レリクスとして戦う以上負荷は必ず掛かる。自分が感じていなかったという事は、きっと。

 少女はそれ以上言及しない。それをしてしまえば、自分がより一層情けなくなると知っているからだ。

「ご自慢の、課題(タスク)とやらはいいの? 従順だけが取り柄のあんたが、命令に背くなんて」

 少女はこれまでそうしてきたように、全ての感情を攻撃に傾けた。少女が身に着けた数少ない処世術であり、護身術だ。

「背いたという意識はない。総合的に判断し撤退した」

 言葉のナイフを突き立てるも、青年の心臓には届かない。少女が足に力を入れた時、青年は手を差し伸べる。しかし、少女はその手を無視して立ち上がった。

「ふむ、本の通りにはいかないか」

 青年の言葉に、少女は深い溜息を吐く。何を言っても、何を突き立てても動じない。怒りが過ぎ去り、呆れに変わっていったのだ。

「ヒロインが欲しいなら他の女を探したら? あたしは、あんたのごっこ遊びに付き合ったりしない」

 少女がそう突っぱねるも、青年はふむと考え込む。

「そういった役割の登場人物は、往々にして強く可憐であると描写されることが多い。君を除くと、俺の身の回りには見掛けない人物像だ」

 青年の導き出した結論を、少女は鼻で嗤う。

「口説き文句にしたってくだらない」

「事実を言ったまでだが」

「うるさい馬鹿」

 罵倒を返しつつ、少女はもう一度溜息をこしらえる。本を読んでから、この男は以前にも増して厄介になった。

「……話が通じる人と話したい」

「呼んだか?」

「呼んで、ない!」

 そう叫ぶと、少女は青年の脇腹をグーで殴った。


 次回予告


 唯とリンは《ブレイド》レリクスを駆使し、《アーマード》レリクスと互角に戦った。

 度重なる戦闘や、金髪コンビとの出会いによって、唯の中でプラトーに関する疑問が大きくなっていく。ドクター・フェイスの知り得る情報とは如何に。

 そんな中、ドクター・フェイスを訪ねる新たな人物が現れる。

 そしてそれを狩る鴉も、宵闇から姿を見せる。


「誰か訪問してくる云々よりも、リンがパンツ一枚で対応しそうなのが恐い」

「貴方、私を何だと思ってるの」


 ブランクアームズ第五話

 -車椅子と鴉-

 お楽しみに!

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