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ブランクアームズ ‐隻創の鎧‐  作者: 秋久 麻衣
第二十六話 -空の鉄槌-
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陽動


 左腕のない金髪の青年、エイトはいつも通り堂々と歩みを進めていく。右手には左義手型アームドレイターがあり、手と手を繋ぐようにして握っている。

 その隣には金色少女、ゼロがいる。ゼロは空の弾倉にレリクト・バレットを込めながら小綺麗なロビーを見渡す。

「ふうん。ここがプラトーの施設に繋がってるんだ」

「情報通りならそうだ」

 ドクター・フェイスの情報提供を受け、プラトーの施設を襲撃する。それがエイトとゼロ、緑と光への指示だった。

 陽動、或いは囮……鉄槌を破壊する為の前哨線、という訳だ。

 エイトとゼロが向かったのはオフィスビルの一つ。この地下にプラトーの施設がある。

 そして、その情報が誤りでない事はすぐに分かった。駆動音に機械の足音、平時では聞く事のない音の群れが、四方から聞こえてくる。

「来たか」

「はあ……言いなりっていうのが嫌だな。あたし気が乗らない」

 エイトは左義手型アームドレイターを装着し、ゼロは弾倉を宙に放る。

Connected(コネクテッド) Arm(アーム)

 エイトは空いた右手でゼロの放った弾倉を掴み、それを左義手型アームドレイターに叩き込む。

「今回はそれで構わない。想定される敵は件の《アウター》レリクスだろう。必要最低限のサポートだけして、君は寝ているといい」

 エイトは左義手のボルトハンドルを前後にスライドし、チャンバーにレリクト・バレットを押し入れた。

「……なんかその言い方むかつく」

「気遣ったつもりなのだが」

 エイトは動くようになった左義手をゼロの前に差し出す。ゼロはそっぽを向いたままだったが、差し出された手に自身の右手を添える。

 ゼロの身体が白い光となり、左義手へと取り込まれていく。

Archi(アーキ)Relics(レリクス)......《Armordraw(アーマードロウ)》』

 機械の足音が殺到する。《アウター》レリクスがそこかしこから現れ、エイトを包囲していく。

 それらを一瞥し、エイトは左義手の拳を眼前で握り締める。

「フェイズ……オン」

Phase(フェイズ)On(オン)......Folding(フォールディング)Up(アップ)......』

 始動キーを唱え、エイトは左義手を左背面に振り抜く。握り締めた拳が開かれ、手首にある銃口から白い光が溢れ出す。

 《アウター》レリクスが両腕を正面に向け、機械ならではの正確さで光弾を連射する。

 しかし、それらがエイトに届くよりも速く白の重装が組み上がった。光弾程度では傷一つ付かない重装に、黄金のラインが刻まれる。

『......《Armordraw(アーマードロウ)Relics(レリクス)

「では始めよう」

「はいはい」

 エイトとゼロは《アーマードロウ》レリクスとなり、プラトーへの侵攻を開始した。



 時を同じくして、別の場所でも戦いは始まっていた。

Connected(コネクテッド) Leg(レッグ)

 展示会などに使われるホール、そのロビーで鈴城(すずしろ)(みどり)は右義足型レッグドネイターを装着した。機械の足音が響く。

「つまり、緑(ねえ)はこれが罠だって思うのか?」

「罠ではないかな。陽動に使いつつ、私達を唯くんから引き剥がす。ドクター・フェイスの望む環境に、うまい具合に仕立て上げられてるっていう感じかな」

 光の質問にそう答えながら、緑は脛の裏に弾倉を入れた。脛にあるチャージングハンドルをスライドしてから、ゆっくりと立ち上がる。

「ドクター・フェイスは、嘘を言ったり騙したりはあんまりしないと思う。鉄槌を破壊したいのも本当だし、私達よりも唯くんを優先したいのも本当」

「結局、俺達は言われた通りやるしかないっていうのも、本当?」

 中々に鋭い光の言葉に、緑は苦笑しながら頷く。

「じゃあやろう!」

「うん、そうだね」

 納得したのか、光はあっさりと了承する。緑と光はそれぞれ右義足と右足を交差し、光は燐光となり右義足に取り込まれていく。

Archi(アーキ)Relics(レリクス)......《(シール)》』

 緑は右義足の爪先で床を二回叩く。

「フェイズ、スタート!」

Phase(フェイズ)Start(スタート).....Sealeding(シールディング),Right(ライト)......』

 打ち付けられた爪先、そこにある銃口から翡翠と黄色の螺旋が放出される。二色の螺旋は瞬く間に外装を形作り、続けて展開された三基のサテライトシールドが周囲を飛び交いながら直上にゲートを形成する。

 ゲートが降下し、軽装のレリクスを完全な状態へと装飾した。

『......《(シール)dear(ディア)Relics(レリクス)

 緑と光は《シールディア》レリクスとなった。同時に現れた《アウター》レリクスが光弾を連射するも、三基のサテライトシールドが名前通りの性能を発揮し全てを叩き落とす。

「敵戦力は、予想通り《アウター》が主軸みたいだね」

「守らなくていいなら、このぐらい!」

 《シールディア》は飛び上がり射線を切る。と同時にサテライトシールドが牙を剥き、周囲にいた《アウター》を一瞬にしてなぞった。

 《アウター》はびくりと痙攣し動かなくなり、《シールディア》は悠々と着地する。

 その膝に三基のサテライトシールドが格納されると同時に、両断された《アウター》が床に散らばった。

「あとは深追いしないように攻めれば、陽動としては良いんだけど」

「良いんだけど?」

 くすりと緑が、《シールディア》が笑みを零す。

「せっかくだから探索しよっか。情報はいくらあってもいいからね」

「賛成!」

 緑と光の《シールディア》は、充填の済んだサテライトシールドを展開する。機械の兵士を引き裂く猟犬三匹と共に、施設へと歩みを進めた。

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