争乱の種子
映像の中で、《ブランク》レリクスがアロガントを殴り付けている。その研究室では、複数の人間が慌ただしく動き回っていた。ドクター・フェイスが所有しているような、手狭な研究室とは規模からして違う。
大きなモニターに映し出されている映像は、高高度から無理矢理記録した物ではあったが。こうして見る分には何も困らない。研究者達は手元のタブレットで想定されたスペックや、戦闘の過程を紐解いていく。そうしている間にも数人の研究者達は走り、自身の席でキーボードを叩くなりしている。
「我々から離れていったフェイスが、誰よりも早くあれを実戦投入したか」
「投入するだけなら我々にも出来た。レリクト兵装は素案の域を出ていない」
戦闘を記録した映像は、一巡したのだろう。新たに別角度から記録した物が再生されていた。
そんな映像やデータを眺めながら、研究者達は口々に意見を言い合う。
「見た所、アームドレイターの設計自体はそう変わっていない。結局、レリクト汚染を避ける為には濾過器と循環器、そしてそれらを統括するガイドが必要になる。ガイドはともかく、他二つはサイズが大きい」
「うまく落とし込んでいるがね。アームドレイターなら、腕を切断するだけで使える。現に、あの一般人は手軽に力を手に入れた」
映像の中には、《ブランク》レリクスとなる前の二人も映っている。
「ガイドはフェイスが連れて行ったリーンドールだ。因子が壊れているとはいえ、ああいう使い方をするなら充分な性能だな」
「素人と壊れた人形でこれなら、まあ確かに充分かも」
思い付くままに話し合っていた研究者達だが、その中の一人が二回、手を叩いてみせた。研究者達は口を閉じ、手を叩いた男を見る。
「所詮、これがフェイスの限界です。彼等は貴重な実戦データをもたらしてはくれますが、期待値は低いと言わざるを得ない。我々は我々で動くべきです」
「つまり、ナンバー08を実戦投入したいと?」
男は沈黙を以て肯定を示す。そして、否定を表明する者は誰もいなかった。
「08は良い仕上がりですよ。アームドレイターへの適合処置も、ガイドの選定も済んでいます。アロガントを相手にした場合、ほぼ確実に撃破出来るでしょう。むしろ、私が欲しいのはその先です」
凶悪と表現してもいい程の笑みを浮かべながら、男はそう言う。
彼の考えを理解したのか、研究者の一人がふむと何度も頷く。
「レリクト兵装同士の実戦データか。使えそうだ」
何人かの研究者が、手元にある端末でナンバー08の情報を閲覧する。
そこに映し出されたのは、左腕のない青年と暗い目をした少女だった。
次回予告
全てを理解した訳ではなく、むしろ分からないことの方が沢山あったが、それでも片羽唯は戦うことを選んだ。
相も変わらず自分の意思かどうかは疑問だったが、納得はしたという感じが近い。
街を襲う化け物、アロガントはまだ残っている。そんな中、唯とリンの前にとある青年と少女が現れる。
左腕のない青年は、唯と同じように義手を……アームドレイターを所持していた。
「出番か。課題を開始する」
ブランクアームズ第三話
-装甲と剛槍-
お楽しみに!




