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おじさんは勝てない  作者: 秋谷イル
シーズン2

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大塚家vs連休(3)

「本当に良いお宿でしたね」

 車で山道を下る最中、麻由美はまた同じことを言った。今日何度目だろうか。

 しかし俺も、やはり繰り返し同意する。

「うむ」

 当間に感謝せねばならん。あの民宿、たしかに素晴らしい宿であった。細やかな気配り。家庭的であたたかいもてなし。飯も美味かったし、料理を作ってくれた主人や先代からも面白い話を聞けた。女将さんも気風の良い人物であったな。

 ちなみに最初、若女将だと思った少女は宿を営む一家の娘さんだった。三姉妹だそうで、その長女だ。あの子も芯のしっかりした見ていて気持ちの良い娘だ。進路について悩んでいると言っていたが、心根がまっすぐな子だ、己の直感に従えば自ずと良い結果に繋がるだろう。

「はるるといっぱいあそんだ」

「はーるー」

「よかったね友美、友樹」

 うちのちびっ子達は三姉妹の末っ子に懐いてたっぷり遊んでもらっておった。おかげで俺達夫婦も久しぶりに、本当にゆったりくつろぐことができた。ありがたい。

「あ、父さん。今日はこれからどこに行くの?」

 スマホの画面を見つめ問いかけて来る歩美。

 バックミラーで様子を窺いつつ答える。

「午前中はこの辺りを見て回って、午後からは有名な滝を経由して空港だ」

「オッケー、えーと、午前中はこのあたりを……」

「なんだ? 誰かに教えているのか?」

「なっちゃん」

「誰だ?」

「あの宿の子だよ。昨日仲良くなった」

 見かけなかった次女か? いつの間に。

「今度、うちの方にも遊びに来てって言っといた」

「そうか」

 結構な距離があるから学生が気軽に来るのは難しいだろうが、本当に遊びに来たら歓迎しよう。歩美の友達だというなら今回の礼も兼ねて盛大にもてなさねば。

「私達もまた泊まりに来ましょう」

「そうだな」

 用が無くても立ち寄りたくなる。そこにいるだけで活力が湧いて来る。そんな不思議な魅力を持つ宿だった。次の機会には美樹や友也、麻由美のご両親も連れて来たい。

 民宿ヤマガミ、いつか必ずまた会おう。




「これが豪体の滝か」

 ゴウゴウと音を立て大量の水が流れ落ちておる。飛沫がかなり離れたこの場所まで霧となって吹き付けて来た。これまた見事な瀑布ではないか。

「おー、すごい」

「雄大な景色ですねー」

「友美、友樹、もう少し滝に近付いてみるか? 俺が抱えて運んでやるぞ」

「いってみたい」

「よし」

 早速俺は二人を抱え、靴を脱ごうとした。浅瀬を行けばかなり近付けそうだ。実際そうしている若者達もいる。

 しかし麻由美に止められた。

「危ないですよあなた。それよりほら、上に吊り橋があります。あそこから眺めることにしましょう?」

「それもいいな」

 だが、今度は歩美が難色を示す。

「そ、それなら私はパス」

「なに? もしやお前」

「高いところは、ちょっと……」

 やはり、そういうことか。

「よく考えたら、友美と友樹にも訊かねばならんな。お前達、あの橋まで行きたいか?」

「いきたい」

「やっ」

 こちらも姉弟で正反対の反応を返す。

「よし、ならば歩美はここで友樹を見てやってくれ。俺達は上から滝を眺めて来る」

「わかった。友樹おいで」

「あゆゆといる」

「そうだ、歩美とおれ」

 賢いやつよ。今、割と長文を喋ったぞ。

「歩美、ほらこれ。暇だったら友樹くんと一緒にあそこの売店で何か買って食べなさい」

 麻由美は歩美に千円札を渡した。

「オッケー」

「よし、それでは行って来る」




「父さん達、よくあんな高いところに行けるなー。ねえ友樹?」

「ちゃちゃ、ちゃちゃしたい」

「ちゃちゃ……? お茶が飲みたいの?」

「んーん」

 違うのか。まいったな、友樹の言うことは私にはいまいちわかんない。

 いや、でもこれも練習だ。

「さあ友樹、教えて。何がしたいのか、ちゃんと理解してみせるよ」

「ちゃーちゃー、ちゃ」

「ちゃ、チャーラーヘッチャラー?」

「んーん」

「に……にっぽんちゃちゃちゃ?」

「んーん」

 二歳児の言語は難しいなあ。

 あ、音だけを聞いてるから駄目なのか。

「えーと、どこに行きたい?」

 再び訊ねると、友樹は私の後ろを指差す。

 川?

「あー、ちゃーちゃ」

「あ、なるほど」

 ばちゃばちゃ。水遊びがしたいんだね。

「まだ水冷たいし、危ないから浅いとこだけだよ。それで良ければ行ってみよっか」

「うん」

 友樹がやっと頷いてくれたので、私は手を引いて水辺まで移動した。

(怖いなあ)

 こんな浅い水たまり、一人ならなんてことない。

 でも、ちっちゃい子が一緒だと何かあったらどうしようなんて考えてしまう。

 美樹さんや友美ちゃんの面倒を見て来た父さん。私を育てたママ。

 やっぱり二人とも凄いんだな。

(私も頑張らなくちゃね)

 というわけでまずは可愛い従弟よ、私に君達との付き合い方を教えておくれ。将来必要になるかもしれないからさ。




 橋の上から戻って来ると、歩美がスマホ片手に友樹を抱いて何かしておった。

「いえーい」

「何をしておるのだ?」

 問いかけると驚いた顔で振り返る。少し恥ずかしそうだ。

「あ、戻ったんだ。いや、なっちゃんとさおちゃんに滝と一緒に撮った写真を送ろうかと思って」

「なるほど、そういうことなら俺が撮ってやろう」

「あ、いいの?」

「無論だ、スマホを貸すが良い」

 俺がスマホを受け取ると、歩美は残る二人を手招きした。

「じゃあママと友美も入って」

「いいの?」

「無論だよ」

「真似するでない」

 年頃の娘がこんな口調を覚えるな。俺は四人が滝を背景に並ぶのを待ってシャッターを切った。

「もう一枚撮るか。ふむ……よし、今だ笑え」

「そこはハイチーズとか言ってよ」




 滝を見終わった後、俺達はそのまま空港へ向かった。

 到着は夕方になってしまったが、目当ての二人の姿を見つけた瞬間、友美と友樹は走り出す。

「おかーさん!」

「とちゃ!」

「友美、友樹、出迎えありがとー!」

「ははは友樹、一週間前より大きくなったんじゃないか?」

 美樹と友也である。一週間の沖縄出張から帰って来た。

 だが、こやつらはまだ家に帰らん。俺達もな。

「合流したところで早速行くぞ」

「まったく、休む暇も無いわね」

「沖縄で羽を伸ばしただろう?」

「ずっと海底遺跡の調査ですよ。でもダイビングは飽きるほどやったね」

「ふふ、頑張って。二人とも、お父さんとお母さんとも旅行できるのを楽しみにしてたんだから」

 麻由美の言葉に美樹は友美を抱き上げながら頷く。

「そうね、それに話したいこともたくさんあるし。友美、お母さん達南国の魚をたくさん見て来たわよ」

「おさな、みた」

「ともみたちもいっぱいみてきた」

「そっか、その話を聞くのも楽しみだな」

 親子の会話を聞きながら、歩美も俺に問いかけて来た。

「それで、次の行き先は?」

「そう急くな。連休はまだ三日ある。のんびりと行こうではないか」


 勢揃い 買って良かった 八人乗り


「字余り」

「お義兄さん、新車なんですよね? 僕にも運転させてください」

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