悲しい知らせ
元気に帰っていった石松さんの話
大分と季節も秋に染まってきた。相変わらず夜には虫の鳴き声が他の音を消し去るほどに耳に入ってくる。
夜になる前に、不動がまた旅烏を1人連れて鎌太郎の屋敷に顔を出した。
秋まつりのあと、不動は追分に残ってしばらく居た。追分の屋敷にもよく旅烏が草鞋を脱いで一服一飯にいろいろ話してくれたりする。
その旅烏の1人が、信じられないような話を不動に聞かせ、それを鎌太郎にも話してもらいたいと、この美濃の地まできてもらったのだ。
鎌太郎は不動にそのことを聞くと、興味深くその旅烏をみていた。その旅烏の名は、三下の新吉と同じで新吉といった。
鎌太郎: 新吉さん、石松さんが死んだってのは本当かい?
新吉: はい。本当の事です。ちょうどその頃、アッシは伊勢に行く旅にでておりまして、清水一家に草鞋を脱いだんですよ。石松の親分さんの亡骸を見た時にはただの旅烏のアッシまで許せない気持ちになりました。次郎長親分のあの悲しみようったら、みてるこっちまで辛くなりましたよ。
鎌太郎: そうだったんですか。石松さんはそんな酷い最後を。
新吉: ええ。
不動: ここに居たのはつい5日ほど前のことなのになぁ。なぁ鎌太郎。
不動が鎌太郎をふと見ると、鎌太郎は悔しそうに下を向いて涙を流していた。
鎌太郎はこの旅烏の新吉に、石松さんの話を聞くことにしたのだった。
石松さんの話を聞くことになる。