男運
お時さんの過去の過ちが語られた。
「アハハハ。お蝶さんって楽しい人ね。それにいろいろ教えてくださって、この屋敷に来た時は、辰五郎親分には悪いけど、本当に怖かったから、入れと言われても入れなかったわよ。良かったわ。お蝶さんが居てくれて。」
「アタシもここにはずっと居られないけど、鎌ちゃんが帰ってくる間は居るからね。」
お時はお蝶から鎌太郎の話を聞いた。まだヤクザになってすぐだった頃の話や、お蝶と出会った頃の話。あと、この一家の親分になった時の話を聞いた。その話のどれもがとても楽しくて、面白い。でもそれだけではなく、とても暖かく、強い。どんな人か会ってみたくなる。
「お時さんはどんな人が好きなの?」
唐突な質問に、言葉が詰まった。
「どんな人と言われても。」
「じゃあ質問を変えるね!今までどんな人と付き合ってきたの?」
「ろくな人と付き合ってないわよ。私ね、男の人の見る目がないんだと思うのよ。」
「どんな人?」
「私がどんな風に見えているのかわからないけど、大概、最後は騙されたー!ってなる。」
「騙された?」
「うん!そうよ!付き合っていると思ってたら、ただの友達だよ!って言われた事があったわ。彼は言ったのよ、付き合ってるか付き合ってないかなんて、言わなくても態度でわかるだろ?って!
そんなもの!わかるかー!ちゃっっかりやる事やってるのに!
あとね、もう所帯持ってた癖に独身のフリしてて、知らずにやる事やってたのー!犯罪よね!もう立派に犯罪よ!
あとはね!出会い茶屋みたいな所があるのよね!その、手紙のやりとりをしてて、会って話すじゃない?でね、いつのまにかやる事だけやってその後、その人行方不明になっちゃうのー!!
、、、。本当の恋なんて私、した事ないわ。
でも何度かお見舞いしてね、良い人だったのよ。2人とも。
でもね、
良い人だけで。。。
私、馬鹿よね。」
「お時さん、めっちゃダメダメな人だったのね!。」
「もうね、疑いの目しかないよね。信じられないよね。無理だよね。」
「この、今お時さんから聞いた話ね、私誰にも言わないからね!」
「お蝶さん、ありがとう。」と言って涙ぐんでいる。
「お時さん、いける口?」
「お酒?ちょっとだけなら大丈夫よ。」
「じゃあ一緒に飲もう!ちょっと待ってて!用意してくるわ!」
と、お蝶は部屋をでると小走りで大の助を探しだす。
「大ちゃーん!どこー?」
その声を聞き、大の助がお蝶のところへ向かってきた。
「ちょっと!お時さんね!男運がめっちゃくちゃ悪いわよ!大変よ!鎌ちゃん大丈夫かしら?」
「何がどうした?」
「実はね!」
と今聞いた話を大の助に話しだすお蝶なのであった。
話終わり、台所へむかい、お酒を用意すると、お時さんの部屋へ戻っていった。
その後ろ姿を見送り、大の助は思う。
やっぱりお蝶を呼ぶんじゃなかったかもしれん。と。
お時に持った最初の印象が壊れていく。
今度は何を聞いてくるつもりなんだ、あいつ。
聞きたくねーようで聞いてみたい気もするけど、お時さんはなんでお蝶に話をしてしまうんだ?
そうだった。お蝶は男だった。
本当にろくな男に出会わねーんだなぁ。
けれど鎌太郎は違う。あいつは良い男だ!あいつならお時さんを幸せにしてやれる!そうに違いない!
うん!と力強く頷く大の助は、この時はまだお花の事を知らないのだった。
最強の男運の無さを持つお時さんに幸せは訪れるのであろうか?不安しかない。