鎌太郎一家、静かに大騒ぎ
おもてなし、石松さんをおもてなし。
鎌太郎と石松さんが奥の部屋へ行き、話をしている間に、不動は一のダイガシ、ケンのダイガシに言った。
何か粗相があったいけねえ。お前たちダイガシの2人がしっかり皆んなを纏めていかなくちゃならねえ。
そうですね。親分の評判が上がるのも下がるのも俺たちの出方ひとつ。気を引き締めてかかりやす。
そう言うと、若い者たちを集めてなんやかんや指示を飛ばす。
不動はしっかりしたダイガシたちだと感心する。少し言えばわかってくれる。叩けば響く太鼓のようだな。そういえば、もうすぐ秋祭りか。追分のお蝶や啓太郎や拓海や春太郎のところも秋祭りか。鎌太郎の兄弟は、秋祭りは毎年皆んなに顔をみせに行っていたが、、、。
不動は奥の部屋に目をやった。
鎌太郎は相手がどんな人だろうが、自分を大きくみせたりしても仕方ない。来たもんは来た。ただ、1番良い部屋へ通し、自分も少し緊張をしている。そこは仕方ない。親分とはいえ、普通の人間。そして、目の前のこの石松さんも、やはり、普通の人間。
石松さん、追分まで訪ねてきてくださり、こんなアッシに会いに美濃まで足を運んでくださりまして、痛み入ります。
石松はいやね、親分の使いで金比羅まで行ってきた帰りにこの辺りで鎌太郎親分の噂を聞いたんですよ。えらく評判が良かったんで、どんな親分さんか会ってみたくてね。
石松は鎌太郎の顔をじっと見ている。どんな人物か探るようにも見えれば、もう探られたようにも思える。
ここまでの道のりは疲れたでしょう?こんな所ではあるけれど、何日でもゆっくりして行ってやってくださいな。アッシはまだ駆け出しです。いろいろ話して聞かせてやってくださいな。
石松は、気に入った!じゃあしばらく世話になるよ。
と言った。
鎌太郎はにこにこと石松さんを見ていた。石松さんは自分の想像通りのお人かもしれねぇ。
新吉、風呂は沸いてるかい?
はい!沸いておりますよ。
じゃあ石松さんを案内してくんな。
わかりました!
石松は、新吉に案内され、風呂へ向かって行った。
あとは飯か。
1番良い部屋から出ると、皆んなが急ぎ気味に飯の用意を始めている。
不動は鎌太郎ににこにこと笑っている。
鎌太郎もまたにこにこと笑った。
これなら大丈夫だな。
と、鎌太郎は少し緊張の紐をといたのだった。
人懐こい性格の石松さんにみんなは、、、