不動の真実
道道、話しだした三人は。
江戸をでて、一晩途中の街道の宿に泊まり、朝早く歩きだし、気がつけば綺麗な夕焼けが辺りを包んでいた。
来るときは、あんなに辛かった道なのに、辛くはなかった。懐に入れたかんざしを時折手に乗せて、花がほこらんだように笑うお花ちゃんのことを考えていた。
もしかしたらまだ病は良くなってはいないかもしれない。どんな風に笑うのかも知らない。けれどお花ちゃんの旅籠までの道のりはとても楽しく感じていた。
「兄貴、なんだか楽しそうだなぁ。」
「ああ、だって楽しいよ。」
「辰五郎親分が嫁を探してくれるもんなぁ。兄弟が夫婦になったその時は俺も嫁をもらうかな。」
「不動よ。この世じゃまだ男同士では夫婦にはなれねーよ。まあ、祝言は挙げられるだろうがなぁ。」
「え?俺が男と?」
「残念ながら、お蝶は男だ。不動。」
「馬鹿か!何言ってる!」
不動の顔が夕焼けよりも真っ赤に染まっていくのを、鎌太郎は、真顔で見ていた。
「不動、お蝶にかんざし買わなくて良かったのか?」
「お前、まだ言うか!俺らはそんなんじゃねえよ。あいつは俺の、、。」
「俺のものって言うんだろ?」
「冗談はさておき、不動の兄弟とお蝶は本当にどういう関係だ?」
太郎が不動に真剣な顔をして聞いている。
「義兄弟ってのはその男に惚れてなるもんだから恋に近いのかも知れねえ。そこまで思えるから一緒に死ぬことだって出来るんだ。俺ら兄弟分だから、お互いがお互いのことを思いやる。そういうことだよな。」
不動はそう言う鎌太郎に、すがるような目を向けて言った。
「あいつが女だったらと、俺はいつも思うんだ。俺の為に飯を作ってくれたり、着物を縫ってくれたり、何かと世話を焼いてくれる。あとな、あいつに何かあったら俺はこの先、どうしたらいいかわからない。俺にとってお蝶は大切な人なんだ。」
鎌太郎は下を向いて優しい微笑みを浮かべ、真っ赤に染まる空を見た。
ふと、道蔵さんを思い出す。姿は違うけれど、あの人もお蝶のように優しい母のような心を持った人だった。今はどうしているのだろう。
「なあ、今日は夕焼けが綺麗だなぁ。」
「ああ、綺麗だなぁ。」
「不動の兄弟、大切な人に出会えるなんて滅多にあることじゃないぜ。俺はそうやってちゃんと大切だって言える兄弟を尊敬するよ。」
「太郎、お前も良い奴だなぁ。こんなことを言うと笑われるかと思ったが、お前良い奴だわ。」
「俺の兄弟はみんな良い奴だよ。」
そう言って胸を張る鎌太郎を見て三人はアハハと笑った。
今日もお花ちゃんの旅籠には着きそうもないが、こんなに夕焼けが綺麗だから、明日は晴れるだろう。明日にはきっとお花ちゃんの旅籠に着く。
そしてもうすぐ日本一の富士の山も顔を見せてくれるだろう。
三人は宿を探しに歩きだしたのだった。
不動の気持ちが鎌太郎にはなんとなくわかるのだった。




