手土産
江戸の土産を鎌太郎は買った。
「寒っ」晩秋の朝は寒い。鎌太郎は寒さでいつもより早く目を覚ました。横で寝ている太郎と不動はまだ寝ている。
あくびをして、起き上がると厠へ向かった。もう寒くて湯気が上がる。「嫌な湯気。」そう呟き、部屋に戻ると暗い部屋に朝陽が昇ってきた。
「今日も天気は良さそうだ。」
雨が降ったのはお花ちゃんの居る旅籠に泊まった時だけだ。帰りに寄って帰ると約束をしている。何か土産でも買っていこう。何がいいだろう。食べ物だと腐るし、重いと辛い。かんざしでも買っていこうか。。いや、全然知らない人からいきなりかんざしを貰ってもなぁ。。御守りはどうだろう。御守りなぁ、良いかもしれない。
そんな事を考えていると太郎と不動が朝陽に照らされ、眩しそうに目を覚ました。
「おはよう。」
「兄貴、もう起きてたのか、早いな。」
「ああ、寒くて目が覚めた。」
「本当だなぁ。そろそろ冬の到来か。」身体をぶるっと震わせて不動も厠へ向かっていった。
身支度を整えると3人は江戸の町を後にする前に辰五郎親分のところへ挨拶に向かった。辰五郎親分は、気をつけて帰りなよ。と言葉をかけてくれた。それと鎌太郎に嫁を探しておくから。と言った。鎌太郎はよろしくお願いしますとお願いして辰五郎親分の屋敷をあとにした。
「少し寄りたいところがあるんだが。」
「どこに?」
「神社。お花ちゃんに御守りを買っていこうかと思って。」
「兄貴、御守りはあれじゃねえか?」
「そうだよ。兄弟。土産ならかんざしのほうが良いぞ。」
「知らない人からかんざし貰って嬉しいか?」
「知らなくはない。俺たちは知ってるよ。」
「あ!そっか。じゃあかんざしにしよう。お花ちゃんだから花のかんざしが良いな。」
と言って鎌太郎は嬉しそうにそう言った。本当はかんざしを土産にしたかったのだ。
男3人で、小物屋さんに立ち寄ると、あーでもないこーでもない。とかんざしを眺めて、手に取って頭にさしてみたりしている。
もう店の主人は見て見ぬフリをして見ている。
「よし!これにしよう」
やっと決まったそれは、とても可愛らしい花のかんざしだった。店の主人はそれを見て、
「ほおう、お3人方、お目が高いですね。」と褒めてくれた。
きちんと綺麗な箱に収まるかんざしを鎌太郎は懐に入れて店を後にした。
「さあ、そしたらお花ちゃんの旅籠へ向かおうか。」
顔を見合わせ、うんと頷くと3人は江戸の町を後にした。
お花ちゃんは元気だろうか。