坂道ころころ
旅はまだまだ続くのだった。
朝を迎え、鎌太郎と太郎と不動の3人は清水を目指してまた旅にでた。鎌太郎は籠は呼ばずに歩くことを決めたのだった。
朝の日差しは柔らかく、歩く道を照らしてくれる。秋も終わりに近づき、山の木々が本当に美しい。
清水まではまだまだかかる。
歩きながら鎌太郎はふと石松さんのことを考えていた。草鞋を脱いで屋敷に居た石松さんは、また来年も来てくれると言った。その訳はあんまり考えたことは無かったが、もしかしたらその女に会いにくる為だったのかもしれない。
石松さんには誰か他に良い人は居なかったのだろうか。子供が大好きな人だったのに、何故、所帯を持たかなかったのだろう。
っていう自分もそういえば未だ独り身。そろそろ本当に嫁をもらわなくちゃならねえ。
太郎や不動やみんなもそうだなぁ。自分が所帯を持つのを待っていたりするのかもな。
鎌太郎は3歩歩いて立ち止まり、大きなため息をひとつついた。考えるのはよそう。今は清水に向かう事だけを考えよう。考えたところで早く着く訳でもないが。
敵やら討ち入りやら、そうしてまたやられた方が恨みを買う。ヤクザってのはそこが無ければ良いんだけどなぁ。そうならないように一家を構えていかなくちゃなぁ。
坂道を足元だけ見て登っていく。きっと上を見たら立ち止まる。鎌太郎は長い坂道だと話す太郎を見て、絶対上は見ないと決めたのだった。
坂道もまたまだまだ続くのだった。