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立派な石松さん
言うことない、良い男の石松さんの話
ザーッと雨が降る音が聞こえ、あー、雨が降ってきたんだなぁと鎌太郎は新吉の入れたお茶を飲んだ。自分でもお爺さんかと思う時がある。
そんな事を考えているとは知らず、旅人の新吉はまた話を続け出した。
石松さんは真面目というか、なんというか。律儀なところがあったようで。
人に貸したことは忘れているけど人に借りたことは絶対に返す。
人に頼まれたことは絶対に嫌とは言わないけど人に頼ることはない。
だから石松さんから金を借りて返さない奴は沢山いるのに、石松さんから金を貸してくれと言われた人が居ない。
石松さんから助けてもらった人は居ても、石松さんを助けた人は居ない。
あいつは良い男なんだけど、なんでだろうなぁ。未だ独り身でいる。そう言っていましたよ。
鎌太郎: そうでしょうねぇ。ここへ草鞋を脱いだ時もなんだかそんな気がしましたよ。それで石松さんは何故、亡くなったんです?
それがね。
と、新吉は話し出した。
石松さんがどうして亡くなったのかについて話し出す新吉さん。