少しの休憩
新吉さんの長い話に少し疲れた鎌太郎の話
話は他にもあるんですよ。
新吉がそう言うのを鎌太郎は黙ってみていた。
この新吉さんという人は本当に石松さんのことが好きなんだなぁ。ここに居たときの石松さんを見ていたら、なんとなくはわかるんだが。
今日は曇り空か。
秋も深まってきた。もう少ししたら山の色も変わっていくのだろう。猫のあーちゃん達は囲炉裏の近くで丸くなっている。そろそろあーちゃん達に座布団を与えてやらねばならないなぁ。
俺もすっかり丸くなってしまったようだ。
この一家を構えて、何不自由なくただ毎日を過ごしている。こうして旅人の話を聞くことが楽しみになりつつある。
うん。わかった。
なんでもダイガシや兄弟分達が話をつけて報告だけを聞く。それでも自分がいるから皆んな頑張るんだと言う。石松さんの話を聞いてほしい。
そう言う裏には何かある。その中に自分に伝えたい事があるのだろう。しかし、石松さんは何故死んでしまったのか。
早くそれを聞きたいのだが、新吉さんはまた石松さんのことを話して聞かせてくれようとしている。
今度はどんな話なのか。聞いてみることにしよう。
空が曇っているせいか、少し肌寒くなってきた。
三下の新吉が暖かいお茶を2人に差し出した。
やはりこいつは気がきく。いや、こいつが気がきくのではなく、上に立つ奴らがしっかりしているせいだろう。
話を聞くことが今は自分の仕事。
しっかり聞こうじゃないか。
鎌太郎は気合いを入れなおして新吉さんに向き合ったのだった。
子分や兄弟の気持ちを知る為、新吉の話を聞くことにした鎌太郎だった。