子供好きの石松さん
新吉の思い出話
5日というのは短いようで長くて。石松さんに会いたいというアッシを石松さんの兄弟分の皆さんが珍しがって、いろいろと話してくれました。
あいつは大の子供好きで、一緒になって楽しそうに遊ぶもんだから近所の人たちが子守がわりに石松に預けて行ってしまう。子供たちも石松の事を子供と思っていたのかもしれねえ。
そう言う兄弟に違う兄弟が、でも石松はそんな子供たちにご飯を食べさせながらいつも言うんだよ。いいか、お母さんやお父さんの言う事はちゃんと聞くんだぞ!あんまり無茶を言っちゃあいけないよ。お父さんとお母さんはいつもお前たちの為に一生懸命働いて、育ててくれているんだよ。って。でないとこのおじちゃんみたいに馬鹿な奴になってしまうからな。
また違う兄弟が来て、そしたら子供たちは言うんだよな。言われなくてもわかってらぁ。おいら達は石松のおじちゃんみたいにはならないよ。けどおいら達、石松のおじちゃんが大好きだ。ってな。
集まってきた3人の兄弟分達は楽しそうに、
あいつ、柄にもなく照れた顔して、この生意気なガキどもがー!って言うんだよな。
と教えてくれる。
その光景が目の前で繰り広げられているくらい想像ができて、アッシは本当に早く石松さんに会いたくなったもんでした。
夕暮れに外に出ると子供たちが集まっていましてね、少し下を向いて、ひとりの子が言ったんです。
石松のおじちゃん、まだ帰ってこないね。早く一緒に遊びたいな。
みんな頷いて、自分達で作った、変な石松さんの歌を歌っていましたよ。
なんだったかな。あの歌。。
鎌太郎: きっと面白い歌でしょうね。
新吉: はい。面白い歌でした。
新吉はその頃を思い出しているのか、少し柔らかな表情をしてみせたのだった。
会いたかった石松さんのことを新吉は鎌太郎にも知ってもらいたかった。