初秋の訪れ
厚い日の1日
もう暦では秋。朝、晩は少し秋らしくはなってきたがまだまだ昼間ともなると残暑が厳しいある日のこと。
余りの暑さに団扇をパタパタと仰ぎながら絽の着物はまだ脱げそうもないなぁと鎌太郎は思った。
その様子を見ていた子分で三下の新吉がタライに冷たい水を入れて親分のところへ持ってきた。
親分、これに足を浸してくださいな。少しは暑さもマシになりますぜ。
新吉はいつも気がきくなぁ。ありがとうよ。
そう言うと裸足の足を浸した。冷たくて暑さがスーッとひいていく。鎌太郎はふと、新吉の首筋から流れる汗を見た。
新吉も暑いだろうよ。
いや、アッシは大丈夫ですよ。親分が涼しくなって良かった。
無理はするなよ。暑い時は暑いんだからな。
はい!親分、こんなアッシに気を使って頂きありがとうございます。アッシは本当に大丈夫ですよ。
それならいいが。
鎌太郎はそれ以上は何も言わず黙っていた。
そういえば太郎がそろそろ帰ってくるかもしれねーな。涼しくなってから帰ってきたらいいとは言ったんだが、あいつの事だから帰ってくるんだろうなぁ。
太郎の叔父貴ですか?
鎌太郎は黙ってうんと頷いた。新吉はいつの間にか団扇を持って親分の鎌太郎を仰いでいる。
太郎の叔父貴!おかえりなさいませ!
と、一のダイガシの声がして、太郎が帰ってきたことを知る。
やはり、帰ってきたな。
そのようですね。
鎌太郎は、出迎える事もなく、足を浸して団扇をパタパタして、新吉に団扇で扇いでもらって涼んでいる。
もうすぐ大きな声で兄貴ー!と呼ぶ声を想像して少し笑って太郎の声を待っていた。
太郎の今