第7話 夏休みはすぐそこです!
「ねえ未来ちゃん、私達夏休みにさ、『冬の星の夜に』見に行くんだけど未来ちゃんもどうかな?恋愛映画なんだけど」
「あー今話題のすごく感動するって噂の?うん!見に行きたい!」
「良かった!じゃあ詳しい日取りはまた今度決めようね!」
うちの学校は、夏休みがまあまあ長い方で2ヶ月丸々あるので嬉しい。だけど、忘れてはならないものがある。そう、それは補修というものがある事だ。あまり成績が良くない私はおそらく出ることになる。特に数学はお父さん譲りなのかかなり悪い。
「はーあ。そういえば、裕介は誰かと遊んだりしないの?あっ広斗と遊ぶのか。」
「あいつはもうすぐバイオリンのコンクールで忙しいからそんなに遊ばねーよ。」
「そうなんだ。じゃあさ、誰か誘ってみんなで遊ぼうよ!楽しいよ、きっと!」
「‥‥遊ばねーよ。誰がお前と好んで遊ぶかよ。」
そう言って裕介は、教室から出て行った。友達が居ないわけではない。だけど、いつも孤独そうにしているのはどうしてなのだろうか。
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「裕介!どうしたんだよ。大丈夫か?」
「広斗‥‥なんでもねえよ。なんか最近嫌な夢をよく見るんだ、あの頃の。」
「そっか。あ、あのさ、夏休み二人で思い出の公園行こうよ!」
「え、あー最近行ってなかったな。そうだな。だけど、それよりお前あいつのこと好きならどこか誘えば?」
「え、え、いや、俺なんかさ…」
わかりやすい奴だ。あいつの話するとすぐ顔が赤くなる。しょっちゅう広斗は俺にあいつの話をしてくる。最初は自分には関係ない話だって思ってた。だけど、自分の弱さも全て受け止めてくれるんじゃねーかとかどこかで不意に思ってしまう自分がたまにいる。
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「お前新しくパートナーになった子と最近絡んでるらしいな。まさかこれから好きになったりしてな!」
「ならねえよ。」
「だよな。親友である広斗を裏切ることになるもんな。まあでもお前の父親が俺に対してした事と似ているからそうやってお前も人の大切なものを奪う行為を平気でできるんだろうがな‥」
「父さんは別に裏切った訳じゃねーよ。お前が
母さんを好きだと知らなかったからだ。母さんだってお前の好意に気付いてはいなかった!勝手に妄想で父さんを悪者にするんじゃねーよ!」
「黙れ!ガキの分際で。思いあがるな!お前は、あの男の息子!絶対幸せになることなんて許さねーからな!!」
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「裕介?大丈夫?おーい!」
「広斗?あ、ごめん。」
「裕介さ、相当疲れてるみたいだよ。気を失ってた間何かにうなされて汗がすごかったし。今日は早く寝たほうがいいよ。本当ごめん、何もしてあげられなくて。俺に出来ることあったら」
「気にするな。お前が気に病む事じゃない。それじゃ。」
「あっ、裕介‥‥」
ただでさえ広斗にはたくさん迷惑をかけてる。これ以上迷惑かけるわけにはいかない。これ以上もう誰かが自分のせいで犠牲になるのはごめんだ。
「あれ、広斗君何してるの?」
「あ、先生!なんでもないです。さよなら!」
「何かあったのかしら。二人のことを知っておきながら何もしてあげられないわ。何かいい案があればいいけれど、本当にごめんなさいね… 」
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「ただいま!あれ、何か置いてある。」
そこには私の大好物のモンブランがあった。モンブランって高いけど栗とクリームのコラボレーションが最高なのだ!
「うん!美味だー!」
「あ、未来。帰ってたのか、おかえり。」
お父さんが何故かいないと感じていたらベランダで電話していたようだ。
「未来、星がすごく綺麗だぞ」
「本当?」
外に出てみると星がすごく綺麗に輝いていた。そして流れ星があったので心の中で祈った。
「いい夏休みが過ごせますように」