第5話 久しぶりです
「未来、今からお母さんのお友達のかなめさんが来てくれるんだけどいいかな?」
「かなめさん?もちろんいいよ!久しぶりに会うなー。お父さんとお母さんの馴れ初めとかも聞いちゃおっかな?」
ーピンポーンー
「はーい。かなめさん久しぶりですね。」
「ええ。私の事覚えてるの?」
「もちろんです!お母さんの親友を忘れるわけないじゃないですか!さぁさぁどうぞ!」
「お邪魔します。あ、久しぶりね。圭一君。」
「あ、あのさ、あいつとはどう?」
「え、えっと、その、圭一君誤解してる!違うの!」
「え?違う?」
「あれなんかいい匂い!」
「あ、クッキー焼いてきたから。未来ちゃん食べてね…」
「あ、ありがとうございます!あの、なんか会話邪魔しちゃったけど大丈夫ですか?」
「え?ええ。大丈夫よ。」
「あ、あのいきなりですけどかなめさん!お父さんさんとお母さんの馴れ初め聞きたいんですけど!」
「え?あらいいわよ。そうね。あれは高校2年の頃だったわね。まず圭一君と香苗が出会ったのは……」
お父さんとお母さんは元々凄く仲が良くてクラスの中心的な存在だったそうだ。そんな2人が急接近するきっかけになったのがお母さんとお父さんが2人で出掛けている時にお母さんに好意を持った先輩が近づいて来てお母さんを抱きしめようとしたそうだ。
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「圭一?どうしたの?手なんか繋いだら誤解されちゃうよ?」
「されたら困るのかよ。好きなのお前だし。」
「え!えっと…」
「お前はあいつ?あのチャラい先輩?」
「違うけど…」
※ ※ ※ ※ ※ ※
「だけど、お母さん病気の事言えずにいたの。好きって気持ちはあっても私といるとこの人を不幸にしてしまうって思ったらしく断ったの、香苗。」
「そんな…じゃあどうやって?」
「どうやってだと思う?」
「全く見当つきません。」
「それがね…」
※ ※ ※ ※ ※ ※
「そうか。好きなのは俺だけか。悪かったな。じゃあな。」
「あ、待って。違うの!本当はすごく大好きなの!だけど私事情があって貴方の事幸せには出来ないから。不幸にしちゃう、から」
「病気の事?」
「なんで知って…」
「何年お前の事見てたと思う?俺はずっとお前を見てきた。ずっと。だから分かるよってか気づいてた。そんなの気にするなよ、俺はそこを含めてお前が好きなんだからさ。」
「うん!ありがとう!ずっと一緒よ!圭一。」
※ ※ ※ ※ ※
「ってなったわけよ。素敵でしょ?お父さん。」
「うん!意外!」
「意外?お母さんのこと凄く大切だから今日のお母さんのお誕生日もこんなに張り切って料理してるのよ?」
「あー、そうですね。確かに。」
「あ、これお母さんにプレゼント。お母さんかすみ草すごく好きだったから。」
「あ、はい。そういえばお腹空きましたね。食べましょう!」
「あらそうね。いただきます。」
「いただきます!」
それから、かなめさんとゆっくり食事をしてお母さんの誕生日を祝った。すごく幸せだったんだ。もちろん お母さんがいればもっとだけど。
※ ※ ※ ※ ※ ※
「はー。今日は楽しかった!風呂上がりのビール最高!圭一くん相変わらず楽しい人で、未来ちゃんも可愛かったなあ。それにしてもどうして私の好きな人を大智と勘違いしてるのかしら。あれ、涙かなんか流したくないのに。おかしいな。」
私の好きな人は、圭一君だ。ずっと。2人が付き合う前、ううん。それこそあの2人が仲良くなる前から好きだった。だから付き合うって言われた時はショックだったなあ。だけど香苗のあんなに素敵な、幸せな笑顔見たら言えなかった。結果的に良かったんだろうけど。未練があるわけじゃないのだ。なのに、なのに、涙がこぼれる。だけどあれ以来他に好きな人が出来ないのだから独身を貫いて行こうと思う。まあ素敵な王子様が来たら別だけど…ね?