第3話 分からないよ
「おーい。みんな席に着け。今日は授業の初めに係決めをするぞ。」
「係決めかー。音楽係がいいな。お願い!裕介音楽係にしようよ!」
「おい、くそ友樹。整理整頓係は、俺とこいつな。」
「ちょっと!」
整理整頓係は、1番面倒で嫌な仕事だ。やりたがる人なんてもちろんいない為、押し付けになるのが毎年恒例だ。
「裕介、ちょっと来なさい。」
係決めを行っている中、1人の男が現れた。高身長のイケメンでみんなが憧れる海斗先生だ。友樹先生ととても仲が良い。そしてこの人が来る事は裕介にとってはある事を意味していた。
「ったくまたかよ。」
裕介は素直に海斗先生の指示に従い去っていってしまった。あんまりにも素直なので驚く生徒もいたが、毎年この光景を見ている生徒は、いつものやつかくらいにしか思っていなかった。
「裕介どこ行ったんだろ…」
未来が心配そうにしていると、隣の席の瑛斗が未来に話した。
「多分校長だろうね。良くは知らないけどあーやって去年も呼び出されてたんだ。」
「それって問題児だから?」
「分からないけど、一緒に住んでるからかもね。」
「一緒に住んでる?どうして……」
「みんな、静かに。えっと、とりあえず夏目は、悪いけど整理整頓ってことでよろしくな。それじゃ一旦俺プリント取ってくるわ」
「え!そんな…ちょっと先生!逃げないでよ!」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はー。裕介ってば戻ってこないし。何やってんだろ。大丈夫かな…」
裕介については知らないことばかりだ。校長の事とか、去年の事とか。パートナーとして知っていく必要があるはずだけど向こうはきっとそれを望んでないわけだし。
「あれ、未来?久しぶりだね。」
「広斗?うわー。久しぶり。会いたかったよー!」
「どうしたの?そんなに思い詰めて。未来には、笑ってて欲しいよ。その、好きな人だからさ…」
「え?ごめん。最後なんて言ったの?」
「え?いや。なんでもない。そういえばパートナーって誰だったの?」
「いやー。本当に最悪。それが裕介なんだよね。」
「え?裕介?裕介のパートナーって、そっか。未来だったんだ。」
「うん。広斗…?なんでそんな笑顔なの?」
自分のパートナーが裕介だと言うとなぜか広斗はくすっと笑って今まで見たことの無いような眩しい笑顔だった。
「あーごめんごめん。嬉しくてつい。実は俺たち幼馴染ですげー仲良いんだ。あんまり知られてないけどね。そっか。本当に良かった。あいつにパートナーが出来たって時どんな奴か不安だったけど未来なら安心だ、よろしくね、未来ならきっとあいつを救える、そんな気がするよ。」
「どういうこと?」
「え?あーごめん。なんでもない。そういえばなんで教室残ってるの?」
「それは…整理整頓係だからです。あいつがやりたがったからだよ。そして、あいつは戻ってこないから1人でやってるんだよ…」
「そ、そうなんだ。じゃあ俺が手伝うよ」
「え?いいの?ありがとう!本当助かるよ。じゃあやるか!」
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「やっと終わった!ありがとね、広斗ってうわ」
「大丈夫?未来?」
「うん、平気。ごめん。じゃ帰ろっか。」
そう言って広斗と帰る途中私は目の前が真っ白になるような光景を見てしまった。