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この残酷で救いの溢れた世界ー4

1週間で4話!

このペースで来週も頑張ります

 シューラグドとは仲良くなった。(アリシアのメイド服のおかげ)

 この世界の住人と仲良くなる機会がなかったため、初めての友達だ。何気にとても嬉しい。


「アリシアから頼まれていることが2つある。1つは魔剣鍛冶師のガラン殿の最期を教えてくれ。もう1つは三雲、お前の今後の話だ」


「魔剣鍛冶師……ガラン」


 恐らく、というか十中八九スミカの父親のことだろう。ガランから継承した【魔剣鍛冶】というスキル。あれは強力な兵器を生み出すことが出来るスキルだ。知名度が高くてもおかしくない。


「三雲、お前はそもそもガラン殿のことを知っているのか? ミラド王国の勇者召還からはまだ数日、何も知らずに居合わせのではないか?」


「そうだよ。俺は王国の追っ手から逃げて、気を失った。目覚めたら洞窟の中に倒れてて、とにかく出口を探して歩いた。そこで……死にかけのガランさんに会ったんだ」


 俺はそこから助け出そうとしたが、間に合わなかったことをシューラグド伝えた。シューラグドは『そうか』とだけ言って寂しそうな顔でアリシアが出ていった扉の方を向いていた。何かこの2人にとって大切な人だったのだろうか?


「ガラン殿のことは俺からアリシアに伝えよう。次の話だが……三雲、お前にはいくつかの選択肢がある。1つはミラド王国に帰ること。これは除外していいか?」


「もちろん。次は?」


 あんな国にこのまま戻るのはゴメンだ。


「次はここでゆっくりと暮らすこと。ゆくゆくはゼヒドニアで自分で働いて生活することになるだろうが、落ち着くまではここにいていい。次はガラン殿の跡を継ぎ、魔剣鍛冶師としてアリシアに仕えることだ。そのために修行やらなんやら色々と強くなってもらうがな」


「……魔剣鍛冶師」


 俺は魔剣鍛冶師というものがどういうもので、アリシアにとってどれほど重要な役割を担っていたかは知らない。それでも、通りすがりの俺からスキルを渡せとは言わず、あくまで選択肢のひとつとして魔剣鍛冶師を俺に持ちかけた。

 ここでゆっくり過ごし、ゼヒドニアで定住する。この選択肢は悪くは無い。ミラド王国で無下にされ、拷問されたのだ。それと比べればゼヒドニアで普通に生活するというのは魅力的な未来だ。


 だが、俺にはすべきこと、いやしたいことが一つある。これは本人達は望んでもおらず、俺が関与すべきことではないのかもしれない。失敗すれば、彼らのリスクを負ったあの行動が無駄になるかもしれない。

 それでも……やりたいと決めたから。


「魔剣鍛冶師になるかどうかは分からない。それでも……俺は強くなりたい! 平和で普通な生活を手に入れる前にしたいことがあるから」


「ふっ、いい顔だ。それに悪くない決断だ。アリシアからも選択肢以外のことを望んだら好きにさせてやれと言われている」


 やれやれ、と言った風だが、どこかそれは楽しそうで、俺は認めてもらえた気分になって嬉しかった。アリシアには悪いが、俺は強くなりたい。魔王軍を使える立場も欲しいが、Lv1の凡人じゃ話にならない。まずは土俵に立つ、それからだ。


「強くなるためにはLvを上げればいいのか?」


「ふむ、それも悪くは無いな。まずLvは絶対であり、強くなるための最低条件だ。スキルを発動するにしても、そのスキルが相手に当たらなければ意味は無い。そういう意味では当たらなければどんなスキルも怖くない、という事だ」


 俺のLvは1。その最低条件をまず満たすことが最優先になるだろう。


「次のステップとしてはもちろんスキルだ。スキルはLv差を逆転する切り札にもなる。だが、スキルも使い方によっては化ける、どんなスキルでも油断はするな」


「俺のスキルは【スキル作成】【遠目】【魔剣鍛冶】【継承】だ。戦闘に使えるものは……ないな」


 可能性としては【魔剣鍛冶】だが、これも普通ならば鍛冶師が取得するべきスキルだろう。そもそも鍛冶が出来ない俺が持っていてもまともな魔剣が作れるとは思えない。【魔剣鍛冶】は打つ剣が魔剣になるだけのスキルであって、俺みたいな前提として剣を打てない人間にとっては宝の持ち腐れにしかならないのだ。


「ものは相談なのだが、お前の【魔剣鍛冶】をある方に継承する気はないか?」


「ある方?」


「ゼヒドニアの表の世界で現存している数少ない吸血鬼族の1人、匠なその腕であらゆる武器を作り続ける鍛冶師セルファ・シャヌラトル殿だ。彼が【魔剣鍛冶】を手に入れればこちらとしても都合が良い。それに、お前を間違いなく強くしてくれるだろう」


 鍛冶師セルファ・シャヌラトル、吸血鬼族の鍛冶師ときたか。吸血鬼族までアートルダムに存在しているとは思ってもみなかった。


「吸血鬼族ということは不老不死なんですか?」


「元の世界にもいたのか? 確かに純血の吸血鬼族は不老不死の超生命体と言われているが、純血の吸血鬼族は残っていない。最も純血に近いと言われているセルファ・シャヌラトル殿も4分の3に留まっている」


 つまり、セルファ・シャヌラトルは有名人で、生前のガラン殿も知っていただろう。ガラン殿は見た目でいえば30代、その若さで【魔剣鍛冶】を継承していることには何か理由があるはずだ。

 その理由を知るまでは【魔剣鍛冶】を継承するにしてもしたくはない。


「どうだ?」


「ガラン殿はなんで【魔剣鍛冶】を継承していたんだ? 見た感じでは30代だった気がしてたんだけど……」


「ガラン殿が30代かっ! それは面白いジョークだ」


 面白いジョーク?見た目からすれば……あっ。

 そう言えば、ガラン殿とスミカは耳が丸い。


「その顔だと気がついたようだな。ふっ、ガラン殿は岩耳族だ。御年齢はお主の3倍はあったはずだが?」


「つまりガラン殿とセルファ殿は……」


「ライバル関係にあられたな」


 確かに思い出せばガラン殿やスミカの容姿は地球で言うところのドワーフに似ていた。アートルダムでは岩耳族というそうだが、聞く限り長命な種族みたいだ。

 さて、新たな問題が発生した。それだけ長命な2人だ、さぞ長い間ライバルとして互いに実力を見せつけ、高めあってきたのだろう。そのライバルが死んだとなった今、セルファ殿はどのような気持ちなのか。

 その気持ちは計り知れないが、セルファ殿は長年のライバルと競い合うことはもう出来ない。


「正直なところガラン殿とセルファ殿なら、ガラン殿の方が腕はよかった。どちらの方が腕が上か、と10人に聞いたら7人がガラン殿と答えるだろう」


「なおさらだな」


「何がなおさらなのだ?」


「俺の考えではセルファ殿は【魔剣鍛冶】を素直に受け取らないだろう」


「何故だ? 長年のライバルの唯一無二の武器が手に入るのだぞ?」


 唯一無二の武器か、やはり【魔剣鍛冶】は珍しいスキルなのだろう。


「だからだよ。セルファ殿はガラン殿が死んでしまったことで、言い方は悪いけど勝ち逃げされた。自分の上がガラン殿には届かなかったんだ。だからセルファ殿はこれからもさらに腕を磨くだろうな、ガランよりも腕が上だと証明するために」


「【魔剣鍛冶】で腕が上がっても駄目なのか?」


「【魔剣鍛冶】のおかげでだろ? それはガラン殿に負けを認めることになる。それにセルファ殿はそんなことでガラン殿を超えても嬉しくも何もないだろうからな」


 ライバルの実力を超える時は、自分の努力によって勝ち得た実力で。

 これは俺の兄がライバルのドーピングが発覚して不戦勝で格闘技で世界王者になった時と、ライバルの不正ツールの使用が発覚して不戦勝でゲーム世界大会の王者になった時に言っていた言葉だ。

 兄はその言葉を体現するために努力を惜しまなかった。ただ……相手に恵まれなかっただけで。


 話を戻そう。

 セルファ殿の考えを聞くまではあくまで推測でしかないが、兄の言葉を尊敬する俺としては受け取って欲しくない。


「なるほど、そういう考え方もあるのだな。利益を最優先に考える悪魔という生物では考えつかない考えだ。もし、セルファ殿が欲しいと言った場合は」


「もちろん渡すよ。俺が持っていても宝の持ち腐れだからな」


「理解した。では、セルファ殿の所に行くか」


「そんなに直ぐに行けるものなのか?」


 長命な鍛冶師というと山篭りでもして修行しているイメージだったが。


「魔王様に仕えているからな。今日も魔王城横の工房で励まれていることだろう」


 そんなことはなかった。


 ◇


 side・アリシア


「はぁー、やってしまったのじゃ」


 先程、勝手に家を出てきたのは良くなかった。まず第一に客人を放ったらかしにするなど言語道断。さらに言えば、目覚めたての人間にする話ではなかった、と猛省中だ。


「おや、ここにいるということは何かやらかしたのかな?」


「そういうお主こそどうしたのじゃ、魔女王。また何か事件か?」


 ここはゼヒドニアで2番目に高い建物の屋上だ。なんの建物かというと、用心御用達の娯楽施設タワーカジノだ。その屋上には基本的に人は来ない。だから、我は良く頭を冷ましにくるのだ。

 今は背後に異様な気配を持つ女が立っているせいで冷めた頭も熱くなってきたが。


「そんなことないわよ? ただ1人迷い子をゼヒドニアに近づけただけ。死にかけの命を助けたとも言えるから、この私が人助けをしたのよ?」


「それは珍しいこともあったものだな」


 この女はすぐに自分の結界内へと誘い、破滅へと導く。だが証拠は見つからず、捕まえることが出来ない。さらには、この女は強い。底知れない強さを持っている。その実力は魔王軍内で重宝されているため、大概の罪は目を瞑っているのだ。


 この女が言っている人助けに心当たりはないが、その人物も不幸なものだ。こいつに救われた、つまり目をつけられては破滅へと堕ちて行くのを待つだけだろう。


「それでアリシアちゃんは何しにここへ?」


「……反省じゃ」


「いつも通りね!」


 「うるさいわぁ! ……言われなくとも分かっておる」


 我はまだ若い。言葉遣いなどで誤魔化してはいるが、我が家に来ている客人と年齢はそう変わらない。だから、至らないところもある……それは言い訳にしてはいけないのだ。自分で選び、自分の意思でここにいる。この若さを失敗の理由にしてしまえば、それは自分への甘えにほかならない。


 「今回は随分と悩んでいるみたいじゃない」


 「我よりも過酷な道から来た同年代ともなれば、色々と思うところがあるというものじゃ。というか、何故こんなことをこんなやつに話さねばならんのだ!」


 「もう分かったわよ。最後にひとつだけアドバイス。あなたはその年齢で良くやっているけど完璧じゃない。それはあなたの年齢のせいじゃない、あなたの心の問題よ。疲れた時は心身共にその青年に預けてみるといいわよ〜」


 こんなやつからのアドバイスなどいらんと跳ね除けるのは簡単じゃが、これでも人生の先輩、我よりも経験を積んでいる。素直に聞き入れよう。ミスは年齢や若さが理由じゃない。心に問題、何かが欠けておるのか? 疲れ? ならば心身共に……身っ!?


 「体を預けるとはなんて不潔なことっ、を?」


 ふざけたことを言っているやつに一言言おうとしたが、その時には既に姿がなかった。


 そう言えば、やつは何故、客人が青年だと知っていたのだろうか? はて、どこかで言っていたか?

 まあいいや。

 とにかく帰ろう。そしてまずは素直に謝り、彼の決断を聞こう。これよりさらに茨の道を進もうとするのかどうかを。


 ◇


 side・???


 「やっぱりアリシアちゃんは可愛いわねぇー!」


 思春期と言えば、()()()ではイチャイチャすることだけに全力を注ぐお年頃だけど、アリシアちゃんはそんな余裕もなく健気に頑張っている。魔王軍の中で私のことを本気で捕まえようと考えている人は少なくなった。アリシアちゃんはその中の一人。

 ちゃんとヒントは与えたけど今回は私のことを捕まえられるかな?


 「それでもやっぱり面白いわ、三雲焔くん!」


 私は瞼に手を当てて彼の行動を盗み見る。私はいつになったら彼に試練を与えてあげられるのだろうか?

 その試練に打ちひしがれた時、彼はどんな顔を見せてくれるのだろう。




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