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Silky Tiger  作者: 張茉莉
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虎と竜の出会い

思ったよりいい感じで良かったです。このまま勢いに乗って書き上げて行きますよ!

「ぐっ……くそぉ……くそくそくそくそぉっ!このままじゃ済まさないぞティーガー王国……」

一人、血塗れになりながらもティーガー王国の外れを足を引きずりながら歩く少年がそこにいた。

「だが見てろ……僕は生きている、生きているんだ……ならばならばならば僕は君を君を殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロス──!」

否、少年などではなくそこにいるのはただ呪いのみを吐き散らす怪物。万物を呪うことしか出来なくなった人間ではないナニカ。

「転生者が堕ちたものよな、マルコよ」

「こ、皇帝様……!?」

マルコの目の前に現れたのはドラッヘ帝国を統べる皇帝“デュラ・ドラッヘ”。

「ふむぅ、これはこれは酷い有様じゃのう。デュラ様、これを如何致しますかな?」

そして皇帝の付き人である老人“蘭黄竜”。

「どうするも何も決まっていようよ、こやつを治療しティーガー王国に出せ。良いか、マルコ。貴様が犯した罪は決して拭えん」

「な、なんの話でしょうか……?」

「とぼけるな貴様ァ!我が兵を勝手に連れ出し、挙句に貴様の攻撃に巻き込んだことを忘れたとは言わせんぞ──良いな、ティーガー王国を滅ぼすまでドラッヘ帝国への入国は許さん」

デュラが怒鳴り上げた途端空に振動が起こり、鳥や動物は全てどこかへと逃げ去っていく。その声のみをもって武器を成し、弱い者はその武器を恐れるのだ。

「は、はいっ……」

「では治療してやれ、黄竜。吾輩は国へ戻る。わざわざ吾輩をここまで出向かせた罪は不問にしてやるぞマルコ」

「はっ、ありがたき幸せ……!」

「ふっ、せいぜい吾輩のために働けよ」

マルコは治療してもらった後に歯を食いしばりながらそれに応えるべく行動を開始する。

マルコはわかっていた。デュラとの実力の差を肌で感じとっていた。マルコがただの狂犬ならばデュラはまさしく竜であるかのような実力差。そしてそこにいる黄竜もまた竜であった。

「……ふっふっふっ、総てはデュラ様のためじゃ」

不敵な笑みを浮かべながら黄竜はどこかへと“飛んで行った”。



「さて、お父様。折り入って話がございますわ」

あの襲撃から一ヶ月。俺はとうとうお父様に自らの力を示そうと考えた。

「ほう、何か話してみるがいいシルキー」

お父様──イシカ・フォン・ティーガー。ティーガー王国の国王であり恐らく俺よりもハインリヒ先生よりも強いであろう存在だ。

「ええ、わたくしは自らの年齢を操ることが可能でございます」

これを教えるのに時間を要したのは理由がある。

それはいきなり教えればこの世界の戦い方を知る前に実戦に投入される危険性がある。

そうなれば対処出来ずに殺される可能性がある。既知のもので対処は可能なものはその人自身の力によって異なるが、出来る。しかし未知のものはどうだろう?対処は究極に難しくなるだろう。

自らがその戦い方を教えて貰い、知ることで相手がそれをしてきた場合の対処を可能にするのだ。

「ほう、やってみせろ」

その言葉を聞き、自らの年齢を十八歳程度に進める。自分で言うのもなんだが、この黄金のように輝く髪とアメジストのような瞳が合わさってとても綺麗に見えるのだ。

「……いや、亡き妻にあまりに似ているもので驚いたとも。今までそれを明かさなかったのはこの世界に慣れるためか?」

「ええ、お父様。その通りでございます」

俺の母は俺を産んですぐに亡くなった。母の力まで総て受け継ぐがためにそれに耐えきれなかった母が死んでしまったのだ。なぜ、二度も母親を亡くさなければならないだろうと考えた日も少なくない。

「ふむ、ならばまだ慣れる必要があるか。南にて盗賊が現れたとの報告が多数ある。この戦争の真っ只中に何たることかと思っていたところだ。それを見事ここへ連れてくるがいい、生死は問わない」

「良いのですかお父様、わたくしにそこまでやらせて」

「そう出来ないならおちおち戦争にも出せん。敵の死に一喜一憂するようではまだまだ半人前だ」

盗賊は恐らく俺を殺しにくる。その中で手加減するようならば俺の命はそこまでだ。

何においても実力差が生じる場合のみ格上が格下を生きたまま捕らえることが出来る。そこまで判断するつもりなのだろう。

「ではお父様、仰せの通りに」

「兵は連れていくか?」

「いえ、わたくしだけで大丈夫ですわ」

「ふむ、なら行くが良い。ハインリヒ将軍は引き続きライナーの稽古をつけろ」

「はっ!」

俺はそれを背中で聞きながら城を後にした。



城下街を出て南に三十分ほど歩く。そこには森が広がっており、魔物も大量に居る。だがそれだけでは無いことを俺は感じ取っていた。

「……魔力の残滓」

俺の扱う魔法の一つ、探知魔法。それは魔力の残滓から生物の存在まで感じ取ることが可能になる魔法だ。それにより何か、強い魔法を使った後の残滓が残っていることに気がついた。

創造魔法によりデザートイーグルを両手に作り出す。明らかに何かがおかしい。

「──待てよ、これは」

以前襲撃してきたあの少年、マルコの魔力だ。ここで一体何を──

「──キ、キキキ」

「背後を取ったつもりかよ化け物が」

後ろにいる何かに向けて銃を放つ。銃声とともに倒れるそれの音はあまりに軽く。

「スケルトン、か。こいつを作り出したってのか」

それにしたってこの魔力の量じゃこんな雑魚なわけが無い。

「何はともあれ、もう少し歩みを進めなきゃな。マルコの野郎もそこにいるはずだ」

魔力が強くなる方向へ俺は歩みを進めていく。


「さあ、これこそがあのティーガー王国を滅ぼす最終兵器“ニーズヘッグ”!そしてこのスケルトン軍団をもって僕は──」

「何を滅ぼすって言った?雑魚」

そこにいたのはマルコだ。そして巨大な黒竜。

「うわぁっ!?なぜここにいる!?」

「なぜも何も盗賊がいるって聞いたんだがな、お前がそうか?」

「あ、ああそうさ!武器を頂いてたんだよ悪いかよ!」

「別に、そいつは奪われる方が悪いだろうがよ」

「だったら──」

「お前とその竜から向けられる殺意を無視する訳にもいかねぇだろうが」

さっきからビンビン感じるのは魔力だけじゃない、殺意もだ。今すぐ殺すとでも言いたげなそれは普通の人間ならば逃げ出すような威圧感を持っている。

「ふ、ふふ!騙し討ちは無理かあそうか!」

「だったらどうすんだよ、俺とやり合うか?」

「いいや、君とやるのは僕じゃない!このニーズヘッグだ!」

「グオオォォォオオッッ──!」

なるほど、魔力に見合った力を持っていることは分かっていたがこの咆哮ではっきりした。

「お前、吹っ切れたか?」

「ああ吹っ切れたね!僕はもう人が死のうとどうも思わない!他人の命なんてゴミも同然だ!」

でもこいつが受けた命を俺は察している。それをこいつは自らの作った兵器に“任せよう”としている。

「そうか、俺も少し吹っ切れたことがあるんだがな」

「──え?」

マルコの額から流れる血。崩れる足。もの言わなくなっていく口。音を立てて倒れる体。

「お前みたいな屑に誇り高き虎が負ける訳ないだろうが、もう一度転生して出直して来い」

二発、三発、四発。無数に放たれる弾丸はマルコだった体を蜂の巣にする。弾も魔法で作ることが出来るためその弾の数は魔力が尽きない限り無数に等しい。

「さーて、次はお前だな──その前に」

「ケケケ──!」

「キャキャキャ──!」

「「雑魚は引っ込んでろ」」

辺り一帯にいるスケルトンの頭を弾丸が貫き、黒い炎がスケルトンを焼き払っていく。

「あ、お前喋れるのかよ」

「ああ、我が主が死んだことにより自らの力を総て扱えるようになった上、その我が主の力を我が受け継いだ形になったゆえに」

「へえ、それでお前は自由の身な訳だがどうするんだ?」

「どうする、だと?分かっていよう、今に我を殺そうとする貴様を我が殺さないと思うか?」

突如黒竜の腕は俺の上に振り下ろされる。それを両手に持つ銃で受け止めるが足も腕も折れてしまいそうだ──!

「はっ、思わないな」

しかしこれは悪手だったがそうせざるを得なかったな。こんな一撃、片手だけでは受けきれない。

「それで、貴様は両手が塞がっているが我にはこの牙ももう片方の爪もあるのだぞ?どうする少女!」

「ちったぁ女の体大切にしやがれってんだタコが!」

俺は銃を杖として扱い魔法により暴風をその腕に向け放つ。すると黒竜は腕を放し後ずさる。

「ほう、やるではないかその細腕で」

「お前こそ、骨があるじゃねえか造られた存在でありながらよ」

「ふん、小手調べはこれまでにするか?少女よ」

「少女なんて名前じゃ俺は断じてねえ、いいかよく聞けよ。俺はティーガー王国第一王女シルキー・フォン・ティーガーだ。お前はなんだ?お前を示す名は?」

「ふっ、我が名は破壊竜ニーズヘッグ!やがては総てを支配する竜ぞ!」

「だったらまずは俺を支配してみるかよ、ニーズヘッグ──!」

「望むところだシルキー──!」

そこにいる王女と黒竜の名乗りをもって戦いの火蓋は今ここに切って落とされた。



「ほっほっほっ、始まりましたなデュラ様」

「ふん、吾輩が出るまでも無いか?」

その戦いを空から眺める二つの影。

「しかしあれは自分の意思を持つ故に我らに牙を向けるやもしれませんぞ?」

「ならば黄竜、あれを殺すだけだ」

「ほっほっほっ、それもそうでしたな」

「だがしかしあの王女とやら。只者ではないようだが、なんだあれは?」

視線の先にいるのは黄金の髪を持つ少女。戦いへの喜びを全身で表現しながら両手に持つ何かを扱って戦っている。

「あれは運命の三人のうちの一人ですぞ、しかしまあわしらのところとどう変わったものか」

「分からんか、吾輩が只者でないと思ったのはあの目だ。あれは最初から死んでいる」

「ほう、それはつまり」

「吾輩と同じく殺しの経験を経てここへ来たという訳だ、全く不愉快でならない」

デュラは深く溜息をつきながらも少女から目を離さない。

「やれやれ、あなたのいた世界はいつになれば平和になれますことやら」

「知らん、だがそんな世界にしている奴らが憎いのは確かだがな」

「ならばあれらをまるごと引き取りますかな?」

「ふっ、それも一興か」

「ええ、そうですとも」



振り下ろされる腕。それを押しのけるように放たれる銃弾。

「ぬおおぉぉぉおおっ──」

両手に持つ銃が火を噴き続け、この刹那の間に放たれた銃弾はおよそ数万発にもなる。それを可能にしているのは魔力だけではなく俺自身の体の力だ。

あまりにも無茶な撃ち方でこんな撃ち方を普通の人間がやればまず腕は使い物にならなくなる。

「甘いぞォッ──」

ニーズヘッグの口から放たれる黒炎は躱す俺のすぐ横を通り過ぎる。さっきからこの調子で俺が後ろに躱せば奴は黒炎を噴き横に躱せば腕で薙ぎ払ってくる。それをさらに躱せば黒炎が俺を狙う。

躱すのがやっとで、お互いに傷はほとんどない。

「ぜぇ……ぜぇ……」

「……ふん」

しかし疲労は互いに目に見えている。ならば。

「次の一撃で──!」

「決めようか──!」

俺は背後に無数の雷を纏った氷の槍を作りだし。ニーズヘッグはこれまでにない魔力の濃密な黒炎を溜めている。

この一撃をもって俺はこいつを──


「何っ──!?」

「なんじゃと──!?」

互いに空に向け放つ。それらは氷の槍に貫かれ雷により身を痺れさせ黒炎により焼かれる。

「お前に殺されるとでも思ったぜ、ニーズヘッグ」

「何、それは同じことよシルキー」

やがて落ちてくるそれらは平然と立ち上がる。

「ほう、ほう?素晴らしい力ではないかいや全くこれは予想外にも程があろうよ!くく、クハハハハハハハッ──!」

その影のうちの一人はやがて笑い出す。

「全く、老いぼれに何たることをしておるんじゃこの雑魚どもがのお」

もう一人は老いぼれだがそれでも明らかに強いのは確か。

「よく言う、余裕かましやがって」

「我らの戦いを邪魔するというのなら例え皇帝様であろうとも我は殺すぞ?」

「まあ落ち着けよ貴様ら。吾輩は一つ提案したいだけだ」

提案だと、そもそもこいつはなんだ?

「ああ自己紹介が遅れたな、吾輩の名はデュラ・ドラッヘ。竜の如く気高きドラッヘ帝国皇帝よ」

「わしは蘭黄竜じゃ、ほっほっほっ」

二人は名乗る。ああこいつはとんでもない敵だ。

「それで、提案というのはだな。貴様らにはドラッヘ帝国についてもらいたい。何、吾輩は世界を平和にせねばならんのでな。少しでも力が欲しいところなのだよ」

平和、ね。そんなもんは日本でいくらでも聞いた言葉だ。

「平和にしたい理由を聞かせてもらおうか?」

「そんなもの決まっていよう、吾輩は争いが嫌いなのだよ」

「はっ、笑わせるなよ。争いが嫌い?バカバカしいことを──」

「汝、平和を欲するなら戦争にそなえよ──つまりそういうことだ」

今のは俺の元いた世界の名言……!?

「お前、転生者か?」

「ああそうとも、吾輩は初代転生者が一人だ。与えられた力も吾輩自らで得た力も十や百じゃないぞ?」

「だったらお前一人でやればいいじゃねえか、まさしくチート無双だろうがよ」

「そうすればそっちの国王が確実に来るであろうよ」

なるほど、それは望ましくないと。

「上に立つ人間は大変だねぇ、生きるために臆病にならないといけないなんてな」

「いや全く、その通り──」

今、俺の背後で地を揺るがす程の大爆発が起きた。何をした──!

「臆病だから、生き残るために吾輩は迫る敵全てを殺さなくてはならん。なあ王女サマ?吾輩に貴様を殺させるなよ、いい返事を待っている」

「それの締切はいつまでか教えてもらってもいいかよ?」

「そうさな、五秒後で許そう」

「へえ、五秒」

その五秒こそが俺の命運を分ける。ならばどうする?

俺はハインリヒ先生のおかげでこれまでやってこれたようなもんだから、そのハインリヒ先生を裏切るような真似は大問題だ。しかしこいつの側につけば場合によればこの戦争をひっくり返せるかもしれない。

「さあどうす──」

「双方下がれ、強者どもよ」

この森全体に響き渡るこの声。それは獅子の咆哮のように俺達全員を威圧し、怯ませるには十分すぎる。

「ほう、吾輩でさえ威圧する貴様はレーヴェか?久しいな、帝王」

やがて森の奥から現れたのは獅子の首を持つ騎士。その力は恐らく阿呆でも感じ取れる程の凄まじさだ。俺もこのデュラでさえも震えが止まっていない。

「ふん、俺が本気にならないのはまだそこの御老人が健在だからだ。言葉を誤れば今ここで切り捨てるぞ蜥蜴風情が」

その言葉でデュラは膝から崩れ落ちた。完全にこいつの中で何かが折れたように。次いで獅子の首を持つ騎士は俺に問いかける。

「それで、お前は虎のところの運命の三人の一人か」

「ああ、そうだ。俺は──」

「いいや、名前は知っている。シルキー・フォン・ティーガー。ティーガー王国第一王女だろう」

「そうだ……お前は」

「王女ならば世界の帝王たる俺への言葉遣いは覚えるべきだな」

「──!?」

俺までもが膝から崩れ落ちる。なんだこれは──!?

「ふん、その無礼を許し名乗ろう。我が名はレーヴェ。真の名など忘れたがこれが俺の名前だ」

レーヴェ、帝王レーヴェ。その名前はお父様などから何度も聞かされている。それに出会ったら命は無いと──

「ふん、また随分と人を捨て強大になったものよなレーヴェ」

「まだまだそこの御老人程では無いがな、それと言葉遣いを覚えろとお前には何度も言っているはずだが?」

その言葉によりデュラは地面に這いつくばってしまう。

「これに耐えられているのはやはりまだそこの御老人とイシカのみか。全く軟弱にも程があろうよ」

何、こいつは一体何をしている──

「ほっほっほっ、あまり威圧されてしまってはデュラ様の身が持ちますまいて。抑えてくれんと斬ってしまうぞ?」

「ふん、御老人に感謝するんだなお前ら」

その言葉と同時に俺達は威圧感から解放される。そういえばニーズヘッグは──?

「先程より我とシルキーの戦いを邪魔する愚か者どもめが、覚悟は出来ておるな?」

腕を振り上げてレーヴェを攻撃しようとしているがそれを気にも止めていない。まるで防ぐ必要すらないかのように。

「ああ、お前とこの王女は戦闘中だったな。構わん、続けろ」

そしてレーヴェは剣を抜きそれをデュラに向ける。

「こいつは俺が止めておく。好きにやれ、決闘を見るのは久しい」

「その言葉は嬉しいが、生憎もう俺もニーズヘッグもだいぶ魔力を消費しちまってな。またの機会でいいか?」

「……ふん、まあいいだろう。お前にも迎えが来たようだ」

何?迎えだと?

「シルキー、無事だったか」

「お父様!?」

何故かお父様が兵を連れてここに来た。そしてここにお父様が来たことで三国の王が集った。

「はっ、吾輩が来てレーヴェが来て挙句にイシカか。何の集いだこれは」

「そうさせたのはお前だろう、デュラ」

「そもそも貴様のところの転生者を貴様が上手く扱えていればこのようなことにはなっておらんということを肝に銘じろ」

「おいおい、ここで貴様らを殺してもいいんだがな?」

三人の王が威圧感を放ちながら話をしている。しかし何故だろうか。先程は実力があると思っていたデュラはこの中で一番弱い。どちらにも手も足も出ないだろうということを感じ取れる。

「やめておけ、お前は俺を決して倒せない」

「然り、そして私の事も倒せない」

「チッ、調子に乗るなよ……こうしてる間にお前らの国を攻めさせてもいいのだがな」

しかし。兵の中にライナーはいるがハインリヒ先生が不在だ。

「お父様、ハインリヒ将軍殿は?」

「さて、どこにいるものかな」

「ハインリヒだと!?吾輩を二度も追い詰めたあの将軍か!?」

「ああそうだ、ここに戻ってきている」

「ふん、ならば俺の勝利も危ういか」

「無論、勝つのは私だからな」

「だがな、真の転生者は吾輩のものだ」

真の転生者、だと?それは運命の三人のことだろうか。

「馬鹿な、マルコとやらがそうではなかったのか」

「そのマルコは転生者の細胞を少し入れただけのただの人間だ。少し記憶も弄らせてもらったがな」

つまり正真正銘のかませ犬で本物は別に──

「デュラ様、お迎えにあがりましたわ」

そこに空から現れたのは神々しき六枚の翼と桃色の髪を持つ少女。

「ふん、待たせすぎだ貴様」

そしてその後ろには翼を持った少女が大量にいた。

「紹介しよう、これらこそが我が最強の軍隊だ。この全員が転生者故に絶対的な力を持つ!」

……転生者?ならばまさか!

「おやおやおやぁ、こんな所で遊んでおられですかな──」

あの赤い髪の奴は──

「どうも久しぶりですねぇ、改めて自己紹介をしましょう。我が名はゼブ。この天使兵団を束ねる者ですよ。あの時はどうもすみませんでしたねぇ、全くもって力が出なかったもので」

ゼブ。あいつは恐らく。

「一つ質問をさせろ、向こうの世界でたくさんの遺体が無くなったのはお前のせいか?」

「ええ、ええそうでございますとも!」

「ほう?貴様とあの王女は知り合いであったか」

「ええデュラ様。あいつに私はやられたのですよ」

「ふっ、あちらの世界であったとしても貴様は超人。それを殺るとはなかなかやるではないか」

しかしまああいつから殺気を感じまくる。抑えようとした時レーヴェが言葉を放つ。

「……下がれ。殺気は誰一人として出すことを許さん」

「レーヴェ、だとぉ!?わ、私聞いておりませんよォ!?」

それをもって全ての殺気が薄れていく。

「今は矛を収めてやろう。だが国へ戻れば直ぐに貴様を攻撃するぞティーガー王国よ」

「出来るものならばな、蜥蜴」

「落ち着け、俺は面倒事を今日起こすのはもういい。戻ってからにしろ。ああ無論お前らの戦争が終わるまで俺はお前らに手を出すことをしない」

「それは助かるなぁ、レーヴェに参加されちゃどうしようも無いからよ」

「では、各自自らの国へ戻れ」

そのお父様の言葉をもって各々は祖国に帰っていく。

「お父様……」

「すまなかったな、盗賊の発生場所がここだとは──なんだこの黒竜は」

「ニーズヘッグだ。ドラッヘ帝国に仕えるわけでも無し、勝率が高い側につくことにしよう」

「分かっているではないか、それに貴様がこちらにつくのは都合がいい」

「ニーズヘッグ、お前」

「何、我らの決闘は総てを終わらせてからでも遅くなかろうよ」

「それもそうだな、じゃあひとまず協力よろしく願おうか」

「無論だ」

そうして俺達は自らの国へ帰還した。超えなければならない敵の存在を胸に刻みながら。



「王女様、こちらの服などお似合いでございますよ?」

その日からというもの。俺には専属メイドがつくことになり、その俺は専属メイドの着せ替え人形となっていた。

「だから、俺は動きやすい格好がいいって言ってんだろうが」

「でしたら異国より取り寄せられたこのミニスカートを……」

「俺はそんな女みたいな格好しねぇ!」

「あら、王女様は女性ですよ?」

「ああもう好きにしろぉ!」

俺の部屋に俺の悲鳴のみが虚しく響いた。


なお、ハインリヒ先生は城の中にいた。曰く少し用事を済ませていたとの事だ。それからニーズヘッグはずっと城の上を飛んで周りを警戒している。ドラッヘ帝国による攻撃宣言のためだ。そして鍛え上げられてきたライナーは多忙なハインリヒ先生の代わりに俺の護衛を完全に任されることになった。


後に聞いた話だが、あの森は三国の丁度間にあり三国による会合を開く際必ずあそこに集まるらしい。全くもってそんなことは聞いていなかったがしかしあの面々が後に主要人物となっていくだろう。

さてさていかがでしたでしょうか。今回は三国の王が全て集いましたが。

案外獅子より追い詰められた奴の方が何するかわかりませんよね?そういったものこそ怖い気がします。

ではでは、私は多くを語りませんのでこれにて。ありがとうございました!次もお楽しみに!

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