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デリアの世界   作者: 野原いっぱい
30/35

破壊者(四)


挿絵(By みてみん)


カンビア市中心部から四方に伸びる街道の一角に、辻芸人が人々を集めて自慢の隠し芸を披露していた。

まだその辺りは疫病の情報もほとんどなく、多くの親子連れや若者達が珍しい見世物に目を奪われていた。


「どうですか。今度はどんな顔がいいですか。どんな変わった顔でも作ることが出来ますよ。出来れば変わった注文のほうがいいなあ」


彼は観客の前に立って、客が求める要望通りの百面相を披瀝していた。


「今度は髭面にしてよ」


「頭はつるつるの丸刈りがいいな。いや待てよ、まだら模様は出来る」


言われたとおりの面相に一瞬にして作り変え、笑いと興奮が絶えなかった。

そしてその不思議な大道芸の噂を聞いた人々が押しかけ、周囲は黒山の人だかりとなった。

顔形が決まると布袋で首から上をすっぽり包み、適当な呪文を唱えた後、あら不思議、新しい面相を露出する。

どういう仕掛けなのか誰もわからないが、あまりの鮮やかさに拍手喝采、ますます見物客は過熱していった。


「次はこの袋から皆さんのご希望の品を出して差し上げます」


最初は人気のコインやカードが取り出された。

次に客の要望に沿ってバラや菊の花が袋から現れる。

いわば奇術師の手品が披露された。そして取り出される物が次第にエスカレートする。

小鳥、リス、ウサギ、その妙技に群集は我を忘れ魅了されていた。

そしてクライマックスに差し掛かった段階で辻芸人が本日の最終芸を告げた。


「それでは最後に皆さんの頭上に花吹雪を降らせます。乞うご期待」


彼は別の袋を取りに行こうとしたが、その時群集の後ろから大声がとどろいた。


「それまでだ。この見世物はこれで終わりだ。各自解散しろ」


いきなりの命令で各自面食らっている。

更に追い討ちをかけて指図が続く。


「軍の巡察隊だ。この集まりは許可されていない。すぐにこの場を離れよ。指示に従わない者は痛い目に会うぞ」


そう言いながら一人の兵士が剣を振り回しながら人々の中に分け入って来た。

皆軍兵の力をいやと言うほど知っており、もの足りなさを感じながらも一斉にその場から逃げ出した。

中には泣き出す子供もいたが、捕まったり乱暴されたりするのを恐れ、皆一目散に遠ざかっていく。

ただ一人辻芸人がこの様子を唖然とした表情で見守っている。

そして気が付くと、その一角には指示した兵士と二人だけになっていた。

そう巡察隊とは言っても一人だけにすぎなかった。

彼は疫病を流行らせた実行犯を探しているサライであった。

辻芸人が彼に言った。


「隠し芸や手品を披露するのに許可が必要だとは思いませんでした。別にお金を頂くわけでもなく皆さんが楽しんで頂ければいいと思っただけですよ」


サライは辻芸人の容貌を身近で眺めた。

今まで聞いていた顔と異なり目が細くて丸い人懐っこい中年の面相であった。

ただ百面相の達人だと聞いてなければ、人違いと思ったであろう。


「お前は宮中の演芸の催しに参加したな。旅芸人の一員としてな」


辻芸人はわずかに関心を示した風であったが答えなかった。

サライはもはや回りくどい問い掛けは不要と判断しずばり切り込んだ。


「そして、粉雪を降らして参加者全員に正体不明の疫病を感染させた」


「あなたの言う事、よく解りませんが」


辻芸人はとりあえずすっ呆けることにした。

サライは用心しながら更に問い質した。


「お前のことは調べはついているんだ。辺境の村や炭焼き小屋、それに駐屯所に現れ疫病をまき散らした。皆数日後に死んでいる。言え、何のためにそのようなことをする。そして疫病の正体は何だ」


辻芸人はしばらく黙り込んだ。

そして真っ直ぐサライの方を見ながら口を開いた。


「わかりました。あなたに逆らっても無駄なようですね。今回の件はある意味ではあなたの説明は当たっています」


サライはその率直な返答に一瞬警戒を緩めた。

その時一匹の猫が二人に忍び寄っていた。


「何が目的でこのようなことをする」

サライが畳み掛けると、一瞬神妙な面持ちでもう一つの袋を手に添えながら答えた。


「もちろん本意で行ったことではないのです。私も操られているのです」


サライが関心を示し先を促したが、それは辻芸人の罠であった。

「それが何かを話す前に、あなたにこれを差し上げましょう」


そう言った途端、袋ごと花弁の塊が投げつけられた。

サライは油断した。

ほとんど直撃すると思った一瞬、彼の体にぶつかってくるものがいた。

大きな山猫で手にした刀剣ごと彼を押し倒した。

その為、かろうじて花弁を避けることができた。


「運のいい奴だ」


そう言いながら辻芸人はその場から大急ぎで逃げ出した。

その後を山猫が追って行く。

サライは多少頭を打ち正気を取り戻すのに時間が必要で、起き上がった時には辻芸人の姿はなかった。

彼は口惜しさと腹立ちを覚えながら、再び犯人を探し出そうと決意したが、その時彼の方に向かって来る者がいた。

息子のアモンであった。


「お父さん、ここでしたか。何かありましたか」


馬から降りた彼は憮然とした表情のサライを見て尋ねた。


「ああ、奴を見つけたんだが取り逃がしてしまった。もう少しで病原菌入りの花弁をまともに浴びるとこだった」


「それは大変でしたね。大丈夫ですか」


「どうやらな。何かが私にぶつかって来て、難を逃れたようだ。一瞬の出来事で不覚だった。それよりもはや猶予ならないぞ。奴は自慢の芸で見物客を集め、花吹雪をまき散らそうとしていた。ほおって置けば疫病患者は増える一方だ。今回は私も油断してしまったが、奴を見つけ次第仕留めるんだ。感染被害を防ぐにはそれしか方法はなさそうだ」


「わかりました。私も手伝いますよ」


「ところで、お前に頼んだ伝令の件はどうだった」


「はい、使節と面会し陛下の命令を伝えました。その結果、ほとんどがロンバード王国に引き返しました」


「と言うと・・」


「お父さんの言ったように、リーラ王妃だけは公邸に戻られました。先ほどまで一緒でした」


「やはりな。彼女の性格からするとバイブルやタミアが心配で、指示に従うわけにはいかないからな。残念だが今は祈るしかない」


アモンもリーラ妃の悲愴な表情を思い出し心から同情した。


「それじゃあ、花弁を処分してすぐに出掛けよう。百面相芸人を探しに」


リーラは疲れきっていた。

侍従や侍女、公邸内に居住している使用人達を見舞いに回ったが、思った以上に深刻な状況であった。

特に別邸に彼等の私室が割り当てられているが、ほとんどの部屋に病人が横たわっている有様であった。いずれも突然のリーラ妃の慰問に大いに感激していたが、重症の患者は声を掛けても反応がなかった。

バイブルと同様に既に息を引き取った者も数人いた。

その部屋はとりあえず入室禁止の処置がなされている。

いずれも先日の演芸の催しに出席した人達で、バイブル王の計らいで出来るだけ多くの従者にも楽しんでもらおうと見学を勧めたが、その配慮がかえってあだになった。

リーラもアモンや典医からその場にいた者全てが未知の疫病に感染したことを耳にしていた。

もちろん彼等だけでなく、二次感染者も既に出始めており、各部屋とも病人であふれ、別邸はさながら緊急病棟の感があった。

リーラの指示で公邸の客室も利用することになり、動ける者は分散して静養することとなった。

感染の恐れがあり、病人の世話は今まで及び腰であったが、リーラの一心不乱の介護に回りの者も影響され、ある程度元気な侍従や侍女も献身的に動くようになった。

かといって病気を治す妙薬や療法などは現時点で何もなかった。典医と外部の医師団との情報交換でも朗報は皆無である。

ただリーラの励ましの言葉、


「頑張るのよ。必ずこの病を治す方法が見つかるから。それまでの辛抱よ」


を信じて、体を冷やしたり、水分を与えたりして、考えられる手厚い看護をする以外なかった。

けれども患者の数が多く、ほとんどの者が疲労困憊の極にあった。


一通り見舞いを終えて、典医や侍従の勧めもあって、リーラも休息することになった。

今日一日を振り返ると、目一杯馬を走らせて乗り詰めで公邸に辿り着き、そして夫バイブルとの悲劇的な対面、娘タミアや公邸の患者達への見舞いと気力を使い果たしていた。

疲れた体を引き摺るようにバイブル王の安置されている部屋に入る。

彼の亡骸は自室の寝台にそのままの状態で横たわっていた。

タミア等の疫病患者を救うことが、バイブルの遺志でありリーラの願いでもあって、弔いの手はずより、災いを無くすことが先決と判断したが、解決の目当てがある訳ではなかった。

ただ、タミアが目前から消えてしまったことで、過去の世界から祖先のデリアが蘇り、力を貸してくれるものと期待しているに過ぎなかった。

しばらく、バイブルの冥福を祈り、ひとしきり涙に暮れた後、一縷の望みを胸に秘めタミアの部屋に移った。

けれども出て行った時と同様、娘の姿はなかった。

もはや頼みの綱はデリアだけであった。医師達は懸命の努力をしているものの、現在の医術では疫病の克服は困難に思えた。

時間が経てば経つほど犠牲者の数が増えることは間違いなかった。

けれども今出来る事といえば、ひたすら待つことだけであった。

タミアは帰ってくるのか。それともデリアその人が現れるのか。

いや、彼女はもはや肉体は存在しないはず。

ではどのような姿で現れるのか。

もしかしたら、彼女でさえ手に負えない病かもしれないし、いやデリアの支援そのものも幻想に過ぎないのかもしれない。

タミアの寝台に体を横たえたリーラは、心の中で不安と期待が駆け巡り、鬱々とした状態で次第に睡魔に引き込まれていった。


 どれくらいの時間が経過したのか定かではなかったが、彼女の額や腕を触れる指の感触があった。

ひんやりした手触りが思いのほか気持ちが良かった。

夢うつつのの状態で、侍女の誰かが心配して世話をしてくれているものと推察した。

ところが首筋に金具のようなものが押し当てられ、様子が違うと感じた。

意識がもとに戻り、目を開けると、一人の女性が彼女を覗き込んでいた。


「目を覚まされたようですね。お願い、もう少し動かないでいて下さる」


その女性の顔にリーラは見覚えがなかった。

更に言葉遣いそのものも明らかに侍女のものとは異なっていた。


「あなたは誰?」


リーラはそのままの姿勢で尋ねた。

聡明そうな瞳は彼女が知っている女性と瓜二つであった。


「もういいですよ。体に異常は見当たりません。幾分過労気味ですね。あなたに回復薬を差し上げましょう。すぐに元気になりますよ。そうそう自己紹介するのが先決ですね。私の名前はパット。医師の卵と言ってもいいのかしら」


まだ年若い女性であった。リーラに向かって屈託のない笑顔を見せた。


「もしかしたらデリアと関係が・・」


「ええ、デリアは私の母よ。子供の頃はパジルって呼ばれていたわ。ということは、あなたはリーラね。レアから聞いているわ」


リーラは思い出していた。

昔彼女の代わりに異世界に移った娘がいて、その名前がパジルであったことを。

リーラは起き上がった。

そして彼女を見ると、明らかにこの世界の着衣と異なるものを身に着けていた。


「あなたはここの出来事を知っているの。疫病が蔓延していることを」


「ええ、知ってるわ。私はそのために別世界からやってきたの。母からの依頼で。病気に罹っている人を助けるために」


「ああ、神様、ありがとう。願いが届いたのだわ。やっぱりデリアは私達を見守ってくれていた」


嬉し涙を目に浮かべ、リーラはパットの手を両手で握り心から感謝を表した。


「レアから聞きました。王であるご主人がお亡くなりになられたそうで、大変お気の毒でお悔やみ申し上げます」


「ええ、でもあなたが来てくれたことをバイブルも喜んでいるに違いないわ。でも娘のタミアがいなくなったの・・」


「ああ、彼女なら無事よ。祖母が治療した甲斐があって順調に回復してるわ」


「良かったわ、何と言ってお礼をすればいかわからないわ」


リーラは胸のつかえが消え安堵した。


「でもまだ多くの患者がおられるようですね。重態の人もいるって聞いているわ。早速治療に回ります。出来るだけのことはするつもりです」


「私が案内するわ。この館の病人にはひと通り見舞っているから大体の症状はわかるつもりよ。でも大勢いるから大変ね」


「そう。だから医師の方にも一緒に回ってほしいの。私も知っている限りの治療方法を伝えるようにするわ。お薬も多量に用意してきたから」


「わかったわ。あなたの言う通りにする。必要なものはなんでも揃えるようにするわ」


「でも、リーラさん。加減のほうは大丈夫なの」


「ええ、あなたが来てくれて疲れなど吹っ飛んだわ。さあ、皆が待ってるわ。一緒に行きましょう」


そして、リーラは大声を張り上げた。


「誰かいる。すぐに来てくれる。それと全ての医師の人達も呼んでほしいの」


彼女の声は病を乗り越えようとする意気込みに溢れていた。


 サライとアモンの親子は街中を疫病の実行犯探しに駆け回っていた。

けれども相手は顔形を作り変えることが出来る奇人で、捜査は困難を極めた。

とりあえず軍関係者に協力を求め、許可無く市中で大道芸を見せる者を検挙することにした。

そして、怪しい能力の持ち主には近寄らないよう市民に注意を呼びかけた。

又、巡回部隊に厳重に主な街路や施設を見張らせ怪しい人物をチェックさせた。

その結果、市民の多くが疫病の発生を知る事となり、日常の行動や人との接触に用心しはじめた。


ところが半日が過ぎても犯人の有力な情報はない。

サライ達は焦った。

相手が誰かに化けているかもしれないし、その場合、見分けることは大変難しい。

もし一般市民に紛れ込み、病原菌の拡散を無差別に行った場合には、爆発的に疫病が広まる恐れがあるのだ。

一刻も早く探し出し、犯人を取り押さえる必要があった。

従って、出会った一人ひとりの身元を確め、相手によっては尋問を行った。

面倒な作業ではあったが、疫病の拡大を防ぐためにはやむおえなかった。


「どうだ、何か変わったことはなかったか」


「いえ、西地区を巡回していますが今のところ異常はありません」


「そうか、ご苦労だが引き続き調査を頼むよ」


「かしこまりました、サライ殿」


すれ違った隊員には必ず報告を求めた。

サライからの依頼で多くの兵士が動員され、主要道路はもちろん脇道もくまなく監視されていた。


「奴はどこに隠れたんですかね」


「これだけ見張りをすれば大胆な犯行は難しいだろうが、かえって警戒するかもしれんな」


「もしかしたら、郊外に出て行ったかもしれませんね」


「そうなるとますます捕らえるのは難しくなるな」


二人とも追跡が手詰まりに陥っていることを認めないわけにはいかなかった。


市街地や幹線道路のチェックは一通り終わり、郊外にも足を伸ばそうと決心したが、移動の途中で新たな巡回兵士と出会いサライは声を掛けた。


「ご苦労さん。変わったことはなかったかね」


単独行動の兵士は一瞬戸惑ったようであったが、幾分間を置いて返答した。


「特に問題はありません」


「大変だが、宜しく頼むよ」


彼は会釈をしながら遠慮気味に通り過ぎようとした。

兵士の数も多く動作振る舞いも様々であったため、制服を着用しておればサライやアモンも不審を抱くことはなかった。

ところが、尾行者の出現でその正体が暴かれることになる。

彼等の目前に不意に一匹の山猫が現れた。

大柄で牙が鋭く、明らかに通常の飼い猫や野良猫ではなく野生的な体型をしていた。


「なんだ、お前は、どこから来た」


アモンは行く手に立ちはだかった山猫に面食らい、その場に釘付けとなった。


「ニャーゴ」


山猫は唸り声を発して、彼等を威嚇した。

今にも襲いかかりそうな気配である。

それに対してアモンは身構えた。

ところが予想外のことが起こった。

攻撃の対象は二人ではなく、いきなり真横まで来た兵士に飛びかかっていく。


「危ない!」


サライとアモンは交互に声を掛けたが、間に合わなかった。

山猫は兵士の顔に爪を突立てた。


「ギャー」


兵士は顔に傷を負い、両手を持ち上げて叫ぶ。

彼にとっては思いがけない災難いがいの何者でもなかった。

山猫は彼の前に立ちはだかり再度攻撃のポーズを取った。

兵士は思わず片腕を前に出し、防ごうとした。


「何ということだ」


アモンも武器を手に取り、兵士を助けようと山猫に向かって行った。

その時、サライから声が掛かった。


「待てアモン、彼の顔を見ろ」


アモンが振り向くと、兵士の顔に驚くべき変化が生じていた。

傷ついた頬がみるみる崩れていく。

まるで固まっていた砂がこぼれていくように、鼻口目の順でなくなっていく。

しかもそれを当の本人が気が付いている様子がない。

そして顔のあった部分がのっぺりした土の塊だけに変貌してしまった。


「こいつだ。こいつが犯人だ。間違いない」


サライが指を突きつけた。

兵士は顔の変形にようやく気が付き修復を試みた。


「キキー、キキー」


喋れるように口を作ろうとするが、咄嗟のことでうまくいかないようだ。

アモンも警戒する一方で、その様子を唖然と見守っている。


「油断するなアモン。こいつは人間ではない。化け物だ。いや、人間に化けられる異生物だ」


兵士、いや変身した異生物はわずかに口を取り付けただけで、諦めその場から逃れようと試みた。


「逃がすな。捕らえるんだ。それが駄目なら倒す以外ない」


サライ、アモン、そして山猫は三方から取り囲んだ。

それに対して異生物は腰に身につけている剣には見向きもしなかった。

奇声を発しながら口の部分から粉のようなものを取り出し、親子に投げつけた。


「危ない、気をつけろ。恐らく毒だ。降りかかるとまずいぞ」


サライとアモンは粉塵を避けるのに躍起になった。

ただ、山猫だけが猛然と飛び掛っていき、再び顔の部分を傷つけた。

口は塞がり粉は取り出せなくなった。


「今だ、もはや倒すしかないぞ」


サライとアモンもがいている異生物に近づき両側から剣で体を切りつけた。

明らかに手ごたえがあり、異生物の体は大きく傷つき、悲鳴が上がった。

ところが裂け目から人間のように血が流れる訳ではなかった。

顔と同様に体が崩れていく。そしてしばらくすると全体が土色の四足生物に変化してしまった。

やがて形態が整ったのか再び動き出そうとする。


「くそ、これでどうだ」


再度切りかかったが結果は同様であった。

体を変形させ再生を試みた。


「お父さん、これは一体」


「どうやらこの異生物は切っても突いても死ぬ事はなさそうだ」


「じゃあ、どうすればこいつをやっつけることができるんだ」


その時、山猫が竹筒のような物を口に咥えてアモンに駆け寄ってきた。

当惑しながら受け取ったが、栓がしてあり中に液が満たされているようだった。


「なんだ、それは」


「ええ、どうやら油のようです」


サライは瞬時思い巡らしそして理解した。


「そうか、分かったぞ。アモン、それをこいつの頭の上に放り投げろ」


「あ、はい」


彼は言われた通りに再び動き出そうとしている異生物の真上に投げつけた。

即、サライは正確に剣で真っ二つに切断する。

中の油が異生物に降りかかる。

そしてすぐさま、発火具を取り出し点火した。

油まみれになった異生物は見る間に炎に包まれてしまった。


「キーイー」


悲鳴と思えるような甲高い叫び声が上がった。

体内に粉塵等の可燃物質が充満しているようで、火の回りは速く、のたうち回っている。

二人とも近づくのは危険と直感、距離を置いて見守った。

そして全身火だるまになった異生物は、火花が輝くと同時に爆音が鳴り響き砕け散ってしまった。

辺りに燃え殻が散乱する。

この様子を二人は用心深く観察したが、もはや生命体の影も形もなく再生する気配はない。


「どうやら化け物は消滅したようですね」


「ああ、あの異生物は火には弱かったようだな。体内に人間に有害な毒素を溜め込んでいたようだが、一方でそれは発火源でもあったようだ。いずれにせよ、この世の生き物ではなさそうだ」


「じゃあいったいどこから来たのでしょうね。そういえばあの猫は・・」


彼等は周囲を見回したが、山猫の姿はどこにもなかった。

異生物と同様にその場からかき消えていた。

アモンにとってはまるで夢を見ているようであった。


「あれは猫なんかではないさ」


「では何だったんでしょう」


「あれは救世主で、山猫の姿を借りた我々の祖先に違いない」


サライはようやく全て納得がいった。

異生物との戦いの勝敗によって、人類の生き残りがかかっていたことを。


「お父さんが以前に話してくれたあの人が現れたのですか」


「その通り、彼女は我々の窮地を救いに来たのだよ」


サライは確信して言った。

異生物はもはや名残を留めていなかった。

二人は煙となって消滅していくのを目にしながら、今回の惨事を振り返り、犠牲となった人々を悼んでいた。


 公邸にパットが現れて三日が過ぎていた。

その間、彼女はリーラと一緒に精力的に患者の治療に回った。

彼女自身、まだ医学生で実際の医療活動は初めての経験ではあったが、祖母であるパジル博士から教えられた療法を懸命に思い出しながら、その症状の度合いに応じて相応の治療薬を与えていった。

基本的には経口薬ですんだが、重症患者の場合は冶具を使用して体内に抗菌剤を投与していく。

また、感染していない者にはワクチンを勧め、その他、体力回復剤も用意してあった。

その甲斐あって患者は徐々に回復に向いつつあった。

そして、彼女の回診には医師達が同行し、治療方法を修得していった。

パットの世界では彼女の医学知識は初級レベルであったが、この世界では驚天動地の医療技術であった。従って、彼等にとっては今まで学んだことも、取り扱ったこともない治療方法に戸惑いながら、又、皆彼女より年配ではあったが一言一句聞き漏らさず熱心に吸収していった。


公邸の患者の治療が一通り終えて、市中の感染者が次の対象となったが、彼女から学んだ医師達が市街地に診療のため出て行った。

そして大半が良化の兆しが顕著となり、疫病は沈静化に向かった。

パットからすれば、まだ知識のない別の伝染病の発生を恐れたが、サライから今回の惨事の元凶を排除したとの報告があり、胸を撫で下ろしたのであった。


「リーラ様、リーラ様、タミア様がお戻りになりました」


「え、タミアが」


侍女からの連絡でリーラは大急ぎでタミアの部屋に向かった。

中に入るや否や以前と変わらぬ元気な姿のタミアが彼女に駆け寄り抱きついた。


「お母様、お母様」


と言うなり泣きじゃくる。


「ああ、タミア、無事でよかったわ。心配してたのよ。あなたに会えてこれほど嬉しいことはないわ」


「お父様が、お父様が・・」


「驚くのも無理はないわ。私もよ。バイブルは逝ってしまったわ。最後まであなたの事を気に掛けていらしたわ」


親娘は共に思いがけない不幸を嘆き悲しんだ。そしてお互い身に降りかかった災いを慰めあった。ひとしきり泣きはらしたあとようやく落ち着きを取り戻しリーラが尋ねた。


「どう、体の具合は、大丈夫なの」


「ええ、もうすっかり、向こうで女性のお医者さんと、そのご主人にすごく親切にして頂いたわ。二人ともとてもいい人達だった。元気になってから私が別世界に移った経緯を聞いたわ。こちらにはご夫妻の娘さんが病気を治すために来られていることも」


「ええ、私達に襲いかかった疫病を治すことが可能になったわ。全て彼女が来てくれたおかげよ。感謝してるわ。もともとあなたの呼び掛けがデリアに伝わった事が、彼女の救済が得られたきっかけだったのだわ」


「確か、パットと言う名前だって聞いたわ。ご夫妻のお孫さんで、デリアが彼女の本当のお母さんだということも。もう会えたのかしら」


「いいえ、まだコンタクトはないそうよ。患者の治療や医師達への説明に忙しくしているけれど、なんとなく寂しそうね。もちろん私もデリアとは話ししていないわ。もし二人が再会するにしてもどういう形になるんでしょうね」


「私はデリアと連絡が取れる媒体だそうね。もし必要であれば喜んでこの体を使わせてあげるわ」

「ええ、その時が来ればお願いするわ。彼女は私達の恩人よ。願いを叶いさせてあげたいわ」


親娘は久し振りの会話で無事を確かめ合った。



 その頃、パットは束の間の休息を取り、公邸の庭園を散策していた。

砂利道の左右には手入れの行き届いた花壇が配置されていて、バラやアヤメ、キキョウ等が美しい花を咲かせていた。

樹木もふんだんに植えられ、松やウメ、モミジの枝があちこちに目につき、四季折々の鮮やかな景観が見られることだろう。

蓮池等の趣向を凝らした水場や小川の流れもあり、気持ちも休まり目の保養となった。

人工的に手を加えられていたが色彩豊かな自然の趣は、彼女が現在暮らしている世界の景色とは明らかに違っていて、印象深いものがあった。

もともと彼女の生まれ故郷であり、十数年ぶりに多種多様な植物が育つ大地や芳香豊かな空気を満喫したのであった。


しかしながら彼女が元の世界に戻る時が近づいていた。

リーラや地元の医師達と一緒にほとんどの疫病感染者の診療、処置も終え、事態は収束の方向にあった。多くの人々を助けることが出来、感謝や労いの言葉を掛けられた。

今までこれほど感激したことはなかった。また、彼女の認識している医学知識も出来る限り人々に伝えた。もともとこの世界の識者は素養も学習意欲もあり、彼女の教えもすばやく理解していった。

レアが材質をコピー精製して、薬剤もふんだんに用意してあった。

もはや彼女の役目も充分果たしと思える。

彼女の養父母であるパジルやハワードも彼女が戻るのを心待ちにしていることだろう。

けれども彼女には心残りがあった。

母親デリアとの再会。

今はパットの望みの全てはそれにあった。

彼女がこの地を離れてから5百年以上の歳月が過ぎていることは知っていた。

母親がもはや精神体としての存在にすぎないことも聞いていた。

けれどもどのような姿であるにせよ、声を掛けて欲しかった。

子供の頃から成長した今の自分を見て欲しいと思った。

その気持ちを胸に秘め、期待を込めて一人で庭園を歩いていた。


「ニャーゴ、ニャーゴ」


彼女の耳に猫の声が聞こえて来た。


「あら、飼われている猫かしら、それとも迷いこんだのかしら」


辺りを見回したが姿は見えない。樹木や茂みに潜んでいるのかもしれない。


「ニャーゴ、ニャーゴ」


声だけであったが懐かしい響きがあった。

まるで彼女の心を見透かし共感しているような鳴き声に思われた。


 一週が過ぎ、王城前広場では大規模な葬儀が行われていた。

会場には入りきれないほどの市民が参加し、祭壇には何体もの棺が祭花に囲まれ安置されていた。

いずれも今回発生した疫病で犠牲になった人達であった。

バイブル王をはじめ、王族、侍従、要人等の催しに出席した人々、軍関係者、サライやアモンの知り合いの北辺の居住者のものもあった。

ただ、実際には遺体は既に焼却もしくは土葬されていた。


葬儀長であるパスカル卿の主導の下で、兵士達の葬送行進、しめやかな楽団演奏、聖歌の後、司祭の祈祷、弔いの儀式を経て一般市民の拝礼、献花が行われていった。

それを見守る参列者として、中央壇上に新しい王となるパリス王子、その傍らにリーラ妃がいた。

彼女は王子が成人になるまで後見役になることが決まっていた。

市民の誰もが彼女を慕っており、疫病の鎮静化にも尽力し、異論のある者などなかった。

更にその横には今回稀有な体験をして、一命を取りとめたタミア王女がいた。

その近くにはサライとアモン親子の姿もあった。

もともとサライはバイブル王の従兄弟で、今回の難敵を倒したのも彼であり、多くの市民や兵士から尊敬されていた。軍上層部を疫病で失ったため、リーラ妃のたっての願いで軍の要職に就くことになった。

国外からの参列者も多く隣国ロンバード王国からは、八世王自らの弔問で彼は同国で待機していたパリス王子と一緒に首都カンビアに乗り込んだのである。

いうまでもなくリーラ妃は彼の妹で、入国制限が解けてすぐさま見舞ったのであった。

もちろん大国であるギリア国王の葬儀ということもあって、各国の元首クラスが顔を揃えていた。

いずれも先般のロンバード王国の皇太子の婚儀に出席したばかりで、華やかな祝典から一転して輪禍に立ち会うことになり皆驚きを隠せなかった。

参列者は全てが悲しみに包まれ、バイブル王をはじめ非業の最期を遂げた人々を悼んだ。



会場近くの城壁の上で、二匹の山猫が見下ろしていた。一匹が相手に声を掛けた。


『亡くなった方にはお気の毒ですが、これでようやく元の姿に戻りますね』


「許せないわ」


『ええ、あの異生物は別世界の下等な生き物で、体内で細菌類を養殖しますし、再生機能を持っています。次の段階では、自ら分裂して数を増やし、放っておけば大変なことになったでしょう。そうならない内に倒せたのはあなたのお蔭ですよ』


「そうじゃないわ。あの異生物は言ってた。私も操られているって。私が許せないと言ったのは背後にいる存在よ」


『というと私の敵である、いわゆる破壊者のことですか』


「そうその通りよ。今回はなんとかママの力を借りて事無きを得たけど、このまま放っておけばまた別の手段で襲われるに違いないわ」


『かといってあなた方人間のように話して通じる相手ではないですよ。彼の者の行動規範は単なる破壊ではなく調整することで宇宙の秩序を守っているという論理です。逆に私達がルールを乱していると見做されているようです』


「だったら、戦うしかないわね。守るだけでは能はないわ。こちらから攻めるのよ。もう二度と手出しできないように打撃を与えるのよ」


『おお、デリア、あなたは大変無謀なことを言い出しますね。彼の者は私と同様に永遠の生をもつ存在です。止めを刺すことは不可能なんです』


「あなたと同じであればある種の知性を持っているはず。やり方によっては方針を変更させることは出来ると思うのよ」


『そう単純なことではありません。戦うにも次元の問題、攻略方法、更に攻撃対象そのものが定かでありません。一つ一つクリアしていく必要があります』


「それはあなたにお願いするしかないわね。指示に従うわ」


『どうやら本気のようですね。今までの相手とはわけが違います。もし反撃された場合、肉体はともかく、精神的なダメージを受けるかもしれませんよ』


「それは覚悟の上よ。待っているだけじゃあ能がないわ。相手に一泡吹かせるのよ」


『わかりました。決心は変わらないようですね。少し時間を下さい。どういう方法が取れるか考えてみましょう』


「ええ、いいわよ。私には時間がたっぷりあるから」


『ああ、どうやら一本取られましたね。ところで話は変わりますが、あなたの娘さんとはあれで良かったのですか』


「ええ、あれでいいのよ。パットは立派に育ってくれたわ。パパとママに感謝してるわ。私のことより新たな未来を築いていくことが大切よ」


その言葉は母親としての強い愛情が含まれていた。

レアもそれを察してそれ以上の感想を伝えることはなかった。

彼等の前の会場では、哀悼を捧げる長い行列が出来ていた。



 ハワード、パジル夫妻は今日も居間で語り合っていた。

話の内容は様々であったが二人の関心は共通していた。

彼等の孫で養女でもあるパットが無事でいるか、何時帰って来るかが最も重要な問題であった。

夫のハワードはパジル博士から連絡を受け、急遽出張先から帰って来たが、既にパットは異世界に転送されていて、彼女に会えなかった。

それ以来自宅を一歩も出ず、戻ってくるのを毎日心待ちにしていた。

それはパジルも同じで、再び彼女の顔を見るのを楽しみにしているのであった。

二人とも実の娘のデリアが姿を消してしまった過去の悪夢が頭を離れなかった。

その時は代わりにパットが現れ、悲しみが和らいだが、かけがえのない一人娘を失くしたことはショックであることに違いはなかった。

その分夫妻はパットを眼に入れても痛くないほどに大事に育てた。

ところが、異世界からの依頼で今度はパットが旅立ってしまった。

役目を果たせばすぐに帰って来るとの約束であったが、何分にも未知の世界のことで何が起こっているのか定かでない不安があった。

創造者は必要な時以外は現れなかった。

病気が回復し元気になったタミアに言付けを託して見送ったのが、両世界を結ぶ唯一のパイプとなった。それ以来ひたすら待つことが二人の日課となった。


夫妻はお互い慰め励ましあいながら毎日を過ごした。

とりとめのない会話が尽きるとそれぞれの仕事や趣味に意識を集中したが、パットのことが気になり長くは続かない。

なにしろまだ医学生の身分で難病に対処できるのか。

治療がうまくいってないのでは。

事故でも起こっていないか、等々。

次々と心配のタネが浮かび上がるのである。

二人にとっての関心の全ては、大切な子供の消息以外なかった。


 そして、その日も夕刻まで何事もなく過ぎていき、今日も戻る気配がなく消沈気味に居間で語り合っていた最中に、突然警報ブザーが鳴り出した。


『表玄関に侵入者があります。二体の侵入者を確認しました』


レアの報告で夫妻はソファから飛び上がった。


「もしやパットでは」


ハワードが言う前にパジルは玄関に駆け出した。


「ニャーゴ、ニャーゴ」


警告音とともに、どういうわけか猫の鳴き声がする。

二人が表の扉を開け外に飛び出すと、明るい笑顔のパットが立っていた。

ところが妙なことにその前に大きな野生猫がいて二人を見上げている。


「まあ、なんてこと。猫ちゃんまでついてきちゃったようね」


パットは創造者のミスだと思い、幾分困惑気味に言った。

野生猫は夫妻を見ながら何回か首を上下させて、


「ニャーゴ、ニャーゴ」


と嬉しそうに鳴いた途端、その場から消えてしまった。


「あら、行っちゃった」


ハワードとパジルの二人はその様子を胸に刻み込んでいた。


「パパ、ママ、ただいま。今帰ったわ」


パットが元気な声で呼びかけると、二人の顔はみるみる満面笑みが溢れた。


「お帰り、心配したのよ、良かったわ」


「何かあったんじゃないかと気が気じゃあなかったよ。元気そうでなによりだ」


「大丈夫だったわ。とてもうまくいったの。皆から感謝されたわ。ママのお蔭よ」


「そら良かった。行った甲斐があったな」


「でも疲れたんじゃないの。中に入って休んだらどう」


「話すこといっぱいあるわ。珍しいことばっかりよ」


それぞれ抱擁を交わした後、三人は建物の入り口に向かった。

夫妻にとっては久し振りの楽しい団欒であった。

その時外部から通信が入って来た。


「誰?」


『はい、ビリー氏からです』


パジルが苦笑しながら言った。


「あなたが行ってから毎日問い合わせがくるのよ。まだ戻ってないかって」


パットは頷き応じた。


「レア、つないでくれる」


彼女の前にビリーの映像が浮かび上がる。


「ハーイ、ビリー、久し振りね」


「やあ、帰って来たんだね。いつ?」


「たった今よ。パパとママに挨拶したばかりよ」


「お二人とも喜ばれただろうね。毎日心配されてたからな」


「わかってる。これから土産話をきいてもらうの」


「ああ、僕にも聞かせてほしいな、いいかい」


「ええ、もちろんよ」


「ところで覚えてる、君が向こうに行く前に約束したことを」


「覚えてるわ、生物博物館に連れてってくれるって」


「僕の休暇は明日で終わりなんだ」


「私、明日でも構わないわ」


「オーケー、じゃあ、明日迎えに行くよ」


二人の会話はその後も続いた。その様子を夫妻は微笑みながら見守っている。

ハワードが言った。


「見たかい、あの猫を」


「ええ、見たわ、あれはあの娘に違いないわ」


「ああ、私達に会いに来たんだね。それとも別れを言うためなのかもしれないな」


「私にはパットをよろしくって聞こえたわ」


「ああ、そうかもしれないな」


ハワード、パジル夫妻には山猫とデリアの顔が重なって見えていた。

二人は寄り添いながら振り返り、彼女が消え去った辺りを眺めていた。







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