火狐の種族
「それで、どうしてあの男たちに追われてたんだ?」
俺は、アリシア・アーデスという獣人の女の子を匿ってあげた後、なぜ追われていたのかを聞いた。
「・・・私の種族は火狐族なの」
「火狐族?」
俺は、火狐族とは何か知らなかった。
獣人大陸について本を読んでいた時も、獣人には多種多用な種族がいるとしか書かれてなく。そこまで詳しく種族のことについて書いてはいなかった。
「火狐族とは、獣人の中でも希少な種族なの・・・」
火狐族について俺が知らなそうにしていたのでアリシアは、火狐族についての説明をしてくれた。
そして火狐族について分かったこと。
火狐族は、獣人大陸で数の少ない希少な種族である。
火狐族は、獣人大陸の山奥の村に集団で生活をしていて、滅多に見ることのできない種族である。
火狐族は、生まれ持った才能により炎属性の魔法の扱いに長けている。
その威力は強大で、並みの炎魔法の使い手が数人いてもその威力には及ばないという。
そして火狐族の最も特徴的なところは、その若さである。
火狐族は、寿命はあまり人間と変わらないがある若さまで成長すると、そこからは歳をとっても老いることがない種族で、奴隷にされるとその特性上、結構な額で取り引きされる。
これが、火狐族について教えてもらったことだった。
つまり、その話からするに先程の男たちは奴隷商人で、この娘は奴隷として売られるところを逃げてきたというわけか。
「あれ?でも、なんで1人だけで捕まってたんだ火狐族は、いつも集団で行動するんだろう?」
「えっと〜、それは〜、あの〜」
アリシアは、何故か言うのが恥ずかしいみたいにもじもじしながら答えた。
「火狐族の習性とか、仕来りとかが嫌になって1人で村から飛び出したところをさっきの男たちに捕まってしまって・・・」
なるほど、つまりは家出少女という訳か。
「お前、自分で家飛び出してすぐ捕まるとかアホだろ」
「ううぅ・・・」
アリシアは、涙目になりながら俺を睨みつけてきた。
ぐぅぅぅ〜
「あ!?」
少しの間、アリシアに睨まれて少し言い過ぎたかなと思い謝ろうと思っていたが。
アリシアの大きいお腹の音により言えなくなった。
「・・・何か食べるか?」
「うんッうんッ!」
仕方がないので俺は、バックパックの中からいくつかの食べ物と飲み物を取り出してアリシアに渡した。
パクッパクッ、ムシャッムシャッ、ごくッごくッ。
するとアリシアは、余程お腹が空いていたのかそこそこの量があった食べ物と飲み物を一瞬のうちに平らげてしまった。
「そんなにお腹空いてたのか?」
「だって獣人大陸からここに来るまで何も食べてなかったから」
なるほど、それなら納得だわ。
獣人大陸からここまでに何日かかったかは知らないけど馬車なんかで移動しても2日以上はかかるだろう。
2日以上も何も食べてないんじゃ腹も空くか。
そして俺は、アリシアがまだ食べたそうな顔をしていたので、もう少し食べ物をあげることにした。
「いや、これは蓮の食べ物なんだからこれ以上受け取れないよ」
「・・・その割には、体は正直だな」
「はッ!」
アリシアは、これ以上受け取れないと俺に言ったが、体は正直に俺の持っていた食べ物を握っていた。
そしてアリシアも我慢の限界だったのかそれからは、何も言わずに勢いよく食べ始めた。
その姿は、とても面白く。とても可愛かった。
「アリシアは、これからどうするんだ?」
俺は、お腹が膨れて満足していたアリシアにこれからどうするのかを聞いた。
「私?うーん、特に決めてないかな。蓮は、どうするの?」
「俺は、今旅の途中で獣人大陸に向かってるところだから、そのまま獣人大陸に向かうつもりだ」
「そうなんだ、じゃあ私が一緒に行って案内してあげる。さっきのお礼ということで」
「え、良いのか?」
「うん。良いよ。」
アリシアは、助けてくれたお礼に獣人大陸に案内してくれると言った。
それは凄く助かるので俺も頼むことにした。
「なら、頼むよ」
「うん、わかった。・・・それで、こっちも頼みたいことがあるんだけど」
「ん?なんだ」
アリシアは、俺に頼みがあると言ってきた。
獣人大陸まで案内してくれるんだから俺も頼みごとくらい聞いてあげようと思い聞いてみた。
「私も旅がしてみたいから蓮と一緒に旅をしてもいい?」
「は?」
アリシアの頼みごととは、俺の旅について行っていいかということだった。
「私が家を飛び出したのは、仕来りなんかが嫌になったのもあるけど、世界を旅してみたいって理由もあったの、だからついて行ってもいい?」
アリシアは、世界を旅がしたいらしい。
確かに1人で旅をするより、2人の方が話相手がいるし良いのかもしれない。
なので俺も、その頼みごとは願ってもない頼みごとだった。
「アリシアがそれで良いんだったら、俺からもよろしく頼むよ」
「本当!なら私のことは、アリスって呼んでいいよ。村のみんなからは、そう呼ばれてたから」
「わかったよ、じゃあ改めてよろしくな。アリス」
「うん!よろしく。蓮」
アリスは、旅ができることを喜びそのまま俺に抱きついてきた。
少し驚いたがあまりにも嬉しそうな顔をしていたので何も言わずにしておいた。
評価等よろしく^_^