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十五・五「幼女ショッピング」

 私とナビィちゃんはお兄ちゃんと離れ、市場へと向かった。

 ナビィちゃんは普段から買い出しをしているかのように慣れた手つきで必要材料を集めていた。


 「……どうしたのラフィーちゃん。アタシの顔になんかついてる?」


 「あ、ううん。なんもだよ。ボーっとしてただけ」


 ちょっと見過ぎてたなぁ。

 ナビィちゃんは目敏く、視線に敏感だ。

 私は、どっちかと言うと鈍感だからナビィちゃんの反応に度々驚かされる。

 さっきも変な人に声を掛けられそうになったけどナビィちゃんが視線を感じて睨んでくれたおかげで助かったし。

 ナビィちゃん……かっこいいなぁ。


 「って、置いてかれてる! 待ってよナビィちゃーん!」


 ナビィちゃんは数店舗先の出店にいた。

 ちょっとは待ってくれないかなぁ……いや、ボーっとしてた私も悪いけどさ!

 友達と歩いてる時に靴紐結んでたら先行かれたのと変わらないくらい悲しかったんだけど!


 ナビィちゃんの後を追うと、何やら店主と話していた。


 「おっちゃん! このドゥーラム鉱石の一等ある?」


 「あるけどよ……嬢ちゃん。金あんのか?」


 そういやナビィちゃん、さっきの買い物でスッカラカンになってなかったっけ。

 ナビィちゃんは後先考えないタイプの買い方するよね。私は見て回ってから選択するタイプだけど。


 「うーん。手持ちはないけどさ。アタシの店にツケといてくんない?」


 えっ、お父さんのお店だよね?!ダメじゃない、勝手に借金作っちゃ!

 ていうか!普通はツケとか出来なくない?


 「……あぁ。どっかで見たことあると思ったら嬢ちゃん、スミスの倅かい」


 え、スミスさんって案外、名の知れた名工なの?ここら辺で有名なの?


 「そゆこと。いいよね?」


 店主の人は快く承諾してくれて、皮袋に鉱石を入れてくれた。

 って、持つの私なんだ……


 「じゃあ買い物も終わったし、戻ろっか!」


 「……そうだね、早く戻ろっか。お兄ちゃん、待ってるし」


 この鉱石って何に使うんだろ。やっぱ鍛冶だと思うけど……作るのかな?他のと合わせるのかな?

 私は鍛冶の知識はほぼ無いが、日頃剣を扱う分、多少なりど剣についての補足で知っている事はある。

 だから、この鉱石の用途は分からないが鍛冶に使うならどちらかだろう。

 この鉱石の効果もわからないしね。


 「って! だから待ってよぉーナビィーちゃーん!!」


 お兄ちゃんへ。私、置いてかれがちです。


 # # # # # #


 私達はスミスさんのお店へ着くと中には入らず、外で待っていた。

 私は中に入ろうと言ったんだけど、ナビィちゃんがいいって言ったから待機してます!


 多分、スミスさんの顔を見ると心が変わりしそうなのかな? 私もミカさんの顔を見て、やっぱりやめようかなって何回も思ったことあるし。


 「遅いね。アタシ呼んでくるよ」


 ナビィちゃんが痺れを切らして、扉に手をかける。

 けれど、扉を開けなかった。

 ナビィちゃんの顔を覗くと、恥ずかしがってるような強がってるような不思議な表情をしていた。

 店内から何か聞こえたのかな?


 「どうしたの?」


 「やっぱアタシじゃなくてラフィーちゃんが開けなよ。その方がお兄ちゃんも喜ぶだろうしさ。アタシは、ほら、荷物の確認とか、馬の状態とかも確認しないといけないし、色々と忙しいからさ! ちょっと馬車のとこまで行ってるから早く連れてきてね。頼んだよ! じゃ!」


 わわ、急に捲し立てられてビックリしちゃった。

 ナビィちゃんの姿はもう馬車へ隠れていた。

 せめて拒否権くらいくれないかなぁ……

 まぁ、私のお兄ちゃんだから呼ぶのは私の仕事か……まぁいっか。よし、行こう!

 私は大きく息を吸い込んで、声を大きく出す。


 「おにーちゃーん! 行くよー!」


 # # # # # # 


 1人、馬車の状態を確認するフリをして、熱くなった表情を冷やす幼女がいた。


 「はぁ……バカ親父。普段は面と向かって言わない癖に……アサタンに言いやがって……バカ……」


 幼女は店の扉を少し開けたせいで、中の声がハッキリと聞こえていた。


 『ホント……娘を頼んだぞ』


 「だぁぁ! もう! なーんでああいう時だけ優しい顔してんのさ……アサタンも『安心しろよ』じゃ、ねぇーーよ! こっちの不安を返せゴラぁ!」


 荷物を小さな手で殴って落ち着きを取り戻そうとする彼女。

 案外、ツンデレなところもあるようで。

 そんなところはお父さんやアサヒ達に見せれないようで。

 髪色と同じく、顔は真っ赤に染め上がっていた。


 「はぁ……ムカつくから煽ってやろう」


 少女が落ち着きを取り戻した所でラフィーとアサヒと合流した。

 アサヒ達には聞こえないところでボソリ、呟きが聞こえた。


 「安心……させろよ? 勇者様」


 2人はその声には気付かない。

 けれど、旅路は始まるのであった。


 

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