第1章
一ヶ月頑張ります。多分
その根っこは見えない
その見えないところに大事な点がある みつを
「お兄ちゃん目を覚ましてよ!死なないで!」
左耳に甲高い声を感じて僕は目を覚ました。
「あぁ。なんだ…」
「あーー!父さん!目覚ましたよ!!」
後から聞いた話によると僕は3日眠っていたらしい。マンションの5階から落ちたのだ。しかし重傷というほどではなく、気絶してただけだった。
「お父さん迷惑かけてごめんよ」
僕は頭をしっかり下げて謝った。せっかく私立の進学校に入ったのにこんな問題を起こしてしまっては退学の恐れがあると思ったのだ。
「はっはっはっ、大丈夫だよ。先生とは話をつけておいたから。」
さすがお父さん、と思い、同時に自分の頬が緩むのを感じた。うちは金持ちだった。
あと、さっき僕に声をかけていたのは広夢という。弟だ。広夢はちょっとポッチャリしてるが可愛らしい。小学3年生なのだがご飯は毎日3杯おかわりするから驚きだ。
「広夢もごめんな。心配かけたよな。」
僕は広夢の頭を撫でながら言った。すると広夢は
「大丈夫だよ!ひろくんお兄ちゃん起きるの信じてたもん!」
「そうか。それは良かった。」
そして1時間の検査を終えて無事に退院をした。退院と同時に、もう悪ノリでマンションの5階から落ちたりしないと心に決めた。
帰りにセブンイレブンに寄った。ポッキーを広夢に買ってやった。
「これで今日のことは忘れろよ。」
「うわーー!お兄ちゃんありがとう!」
広夢は無邪気にはしゃぎながらポッキーをポキポキ食べていた。
優しい心をもち、愛らしい姿をした広夢は世界一可愛い「弟」だと思う。そんな弟を持って僕は誇らしかった。
しかしこの時僕はまだ知らなかった、たった1年という年月でこの関係が崩れ去ることを。