その7
暇だ。
ダンジョンを作ったはいいが、何もなくて暇すぎる。
「そうだ、モンスター召喚しよう」
なんかかわいいモンスターいないかなぁ?とモンスター事典をペラペラと眺める。
「ここはやはり王道を行く、スライムですかね」
コストも安い。なんかひんやりしてそう。色々と便利そう。と言う事でスライムを召喚する。
ダンジョン用魔力、まぁ今後はDMPとしておこう。それは結構余っている。一年間使わずに放置していたからな。結構大規模なダンジョンだが、それを使ってもまだそこそこ残っている。だが、呼び出せるモンスターは相変わらず変わらない為、強力なモンスターは呼び出せない。
ついでにダンジョンの核はコアと言い、パソコンの内部パーツに組み込んでいる。そこから消費されて出現する。
とりあえず部屋の隅あたりに出現させる。
……なんか思ってたのと違う。
もっとなんかプルプルしてるものかと思ったが、ベトベトしい。粘体っぽい。砂糖溶かしてる最中みたいな感じだ。
色は水色だが微妙に透き通っていて石の色が混ざってるように見えてなんか色が気色悪いし。
そして進み方がナメクジみたい。凄い気持ち悪い。
「あー…まぁいいか」
これ以上DMPを使うのも面倒臭い。と言う事で遊んでみる。
~10分後くらい~
「面白いなお前」
体の感触を変える事が出来るらしく。ずぶずぶと沈んだりぽよんぽよんとしていたり面白い。あとボールみたいにして上にのっかるとひんやりして気持ちいい。
スライムは反応が分かりずらいが、なんとなく喜んでいるような気がする。
「ダンジョンの散歩でも行くか」
立ち上がると、足元にスライムが這いよってくる。
「お前も行くか」
とりあえずダンジョン内にワープする。場所はダンジョン最奥。
「結構凝って作ったよなぁ」
改めてそう思った。天井からツタに見せかけた爆薬ロープとか。落下機動とか計算作ったのが馬鹿らしい。
しかも思ったより爆発力が強くしている。具体的には一本で巻きつければ10m四方の立方体を破壊できる程度の威力だ。勿論人間の至近距離で爆発すれば即死である。
「ぬお!」
足元の石の一つが外れる。
地味な嫌がらせである。戦闘中にこれが起こったら中々に致命的なので、ちょっとした段差を何個か作っているのだ。たまにローションみたいなものが塗ってあるものもある。凄くウザい。
で、やっと最後のボス部屋予定の部屋を脱出する。因みにボスはまだ決めていない。シナジー効果も考えず作成したのは流石に阿保だと思った。というか最初から巨大なダンジョン作って何になるというんだろうか?
今になって考えればそこそこバカな事をしたと思う。何故地道に拡大していく道を選ばなかったのだろうか。需要に合わせて進化していく過程も必要なのに。経験のない奴が「出来た」と言って作ったもの程信頼性が薄いものはないだろう。
そもそも、このダンジョンが成功するというのだって机上の空論である。
スライムがそこらへん動きまわっているのが結構怖い。ふとした瞬間床が外れたりするダンジョンだからな。しかも外れたらまず生き残れないだろうし。
因みに召喚したスライムは、レッサーブルースライムという種類である。初期の奴は大体レッサーから始まる。勿論戦闘能力はずば抜けて低いし、直接戦闘にはまず使えないだろうが、体液を何かしらに利用できる可能性もあるし、まぁ癒しが欲しかったので召喚した。
ボス部屋の扉を開くとまず目に入るのは通路である。まぁ横に青酸カリが塗ってある矢が飛び出してきたりするトラップがあるが、注意深く進めばまず死ぬことはない。
精々半身不随程度だろう。
だが、流石に中にいるモンスターたちが哨戒できないというのは若干不味いと思ったし、敵をパソコンで見つけてもそこにモンスターが向かえないという事態にならないように一応だが道は作ってある。
スライムは俺の後ろにぴったりついてきている為、罠にはかかっていない。
様々な場所を回ってみたが、何処にも不具合らしい不具合は見当たらなかった。ダンジョンツクールの性能は証明された。今後も使って問題はないであろう。罠の起動条件もしっかりと設定された通りになっていたし、文句はない。
「あー…楽する為に苦労したかいがあったぜ」
楽する為に苦労する。世の中の真理であろう。
10の作業を本来10の力だったものを5の力でこなす為には、5の力を削減しなければならない。つまり、その5の力を削減する為にどれだけの力がかかるかだ。
例えば、削減する為に100の力をかけたとしたら、20回以上その作業を行わないとトータルではマイナスになってしまう。
つまり、面倒臭くとも、普通にやった方が最終的には特な場合も多いのだ。
今回の場合は、かなりの削減と、その為にかなりの時間と力をかけた。それなりの成果が上がったし、さらにこのシステムはダンジョンの運営していく上で必要不可欠だろうから、トータルではそれなりに特になっているはずである。
「よし、さっさと待つ作業を続けるか」
ダンジョンの管理室に帰還する。魔法という物は便利で、瞬間移動という物が出来る。まぁ原理的には、身体を一度分解し、その分解した体を前いた場所、前いた位置、その時していたポーズそのままの場所に再構成するという荒業である。ミスれば勿論死ぬ。
だが、俺の死に対する補正は意外にすさまじく、このような場合は死なない。まぁ内臓一個がずれたりする事はあるそうだが、死につながることは一切ないそうだ。
起動したパソコンで、ダンジョンの時間を高速化する。どうやらこれはそれなりの範囲を高速化できるようなので、便利に使わせてもらおう。
ダンジョンの世界で睡眠を取った後、元の世界に帰ってスーツに着替え、会社に出かける。
いつも通り自転車はギチギチと唸っている。そろそろ買い替え時かな?とも思いながら下り坂を自転車で下っていく。
坂を下りた後すぐにあるコンビニ立ち寄り適当な朝食を揃え、コンビニのビニール袋をぶら下げて会社に向かう。
会社は中々に大きな不動産系の会社で、それなりの利益を持っている。
そこでそれなりの地位で、それなりに仕事をこなし、それなり以下の社内の評判の俺。まぁ給料がもらえているから問題はない。最近はダンジョンを作っていたせいでそこまで金を使う機会はなかったので、一年分くらいの貯金が通帳に残っている。
社会の経済の循環に気を遣えない男である。
「さて、今日も頑張りますか」
「先輩、おはようございます」
後輩が話しかけてくれる。最近入ってきたばかりだが、俺の付き合いの悪さを気にも留めずに話しかけてくる。はっきり言ってウザったらしい。美人、と言うよりも美少女というイメージを受ける。桃色と言う非常に珍しい髪の色をしている。
一体どんな染色をすればこんな色になるのだろうか?なんかやけに地毛っぽいし。
「ああ、おはよう」
淡泊に返すと、彼女はニコッと笑って返してくれる。
周囲の目線がつらい。さらに社内の評判が落ちていっている気がする。もともと滑空しているニワトリ程度の社内の評判がこいつが入ってきてから土の中を動き回るミミズ程度にまで落ちた気がする。
まぁ社内評判がどうなろうがそこまで関係があることではないが、はっきり言って居心地が凄く悪いのでこの女は疫病神なんじゃないか?と思い始めている。
「さて、今日は営業か」
不動産というのは中々に取引先が見つけにくい。新聞をかたっぱしから読んで結婚したとかそういう情報を集めて電話かけたりを繰り返す。
一件でもいいから見つかると良いなぁ。