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その5

「おし、終わった」


いつも通り定時で仕事を終了させ、タイムカードを刺し帰宅する。


慣れで、普通なら若干キツイと思う量でも普通にこなせるようになっている。

しかもいつでも休憩を取れる。流石時間停止空間だ。


ダンジョンを作っていない事だけが現状の問題だがな。


「先輩、なんでいつもそんなに早いんですか?」

「頭がいいから。要領がいいから。それに尽きるな。どれだけの能率で作業を消化できるかを計算して物事に取り組むようになれば自然に出来るようになる」


後輩の質問に的確に返す。どの仕事をどれくらいでこなせるか、自分の得意な仕事はどれか、時間のかかる仕事はどれか、それらを全て考慮出来るようになれば自然と作業能率は上がっていく。


他の奴らと話しながらやっていると自然と能率は落ちていくからどれだけ作業に集中できるかも大事かもしれないな。


「仕事を仕事と割り切ってますねぇ」

「仕事は仕事だ。趣味は趣味で分ける事だ。定時で帰りたいならな。楽しんで仕事をするなんぞ一部の才能のある奴らしか出来んよ」


何の覚悟も無しに、楽に楽しい仕事に就けるとでも思っているのだろうか?そも、そういうのは手に入ったらすぐに飽きるものだ。余程の執着がなければ。


金塊だって、節約生活を1年間ぐらい我慢すればそれなりのものが買えるし、ベンツも中古であれば300万もあれば買える。


手に入ったらそこで失望するか、それに執着するかの二択しかないのだ。


「それに、定時で帰れるようになれば、趣味の時間も取れるようになる」

「そうですかー。その境地にはたどり着けそうにないです」


まぁ会社の人間関係が悪くなるからな。何事にも代償が必要である。代償のないものなぞ存在しないのだ。


さて、家に帰るか。


会社の駐輪場に止めてあるチャリのうち一つのカギを開け、快速で飛ばしていく。


吹き抜けていく風が気持ちいい。これでスーツを着ていなければ最高だったな。

夏で蒸されたスーツの気持ち悪さと言ったら、汗でぬれた学ランにも相当する。


「ただいまー」


つってもいつも通り誰もいるはずもなく。


「おう。おかえり」


ラーメン食ってる神のようなものがいた。


「それ、俺の取っておいた高い奴じゃね?」

「おお、道理で旨いと思った」


カップ麺勝手に作って食っていた。しかも明日の朝食用のお高い奴である。


「まぁダンジョンで結構協力してもらってたから今回は許すが、今度食う時はなんか一報入れてくれ」

「ああ、善処しよう」


ズルズル、ズルズルと俺の朝食が奴の腹の中に消えていくのを見ているのは癪だが、まぁいつも協力してもらっていて、こっちはあっちの実験結果を報告どころか一切実験に協力していないのだからまぁ仕方がないと言えば仕方がない。


「で、なんで神のようなものさんがここにいるんですかね」

「ああ、その名前長いから、ファラって呼んで。そっちの方呼ばれ慣れてるし」

「ちなみに本名は?」

「神に本名もクソもないよ」


そうか。まぁ名前なんぞ人間が勝手に決めるものだし、個体区別が出来ていれば神はそういうのはどうでもいいんだろうな。


「そうか。で、もう一度聞くがなんでここにいるですかね?」

「暇だから。神のようなものって基本仕事ないし。あんたら達で言うところの半ニート状態って感じだ」

「で、俺の部屋漁ってたと」


俺の部屋の惨状を見渡す。


後で食おうと思っていたスナック菓子の袋が散らかされ、テレビのリモコンは適当な場所に放られている。

はっきり言って凄く汚い。


「掃除するからちょっとどいてください」

「ああ、すまないな」


女の姿してんだから家事ぐらい出来るだろう。食ったんだから掃除も自分でやれ、と言いたいがとりあえず自分が掃除をする、と言ってしまったので掃除を開始する。


1時間で大体の掃除が終了する。思ったより時間がかかった。


「で、今日の要件なんだが、まぁ暇つぶし、というのはさっき言った通りなのだが、それ以外にも一応ダンジョンを視察するという名目があるんだ」

「ダンジョンの部屋一個すらできていないのに?」

「だからだ。もう1年と2か月だぞ?そろそろ作業に取り掛かってくれ。神様もなんかイライラしておられるし」

「そうかぁ、もうそんなにかぁ」


神様の仕事を受け始めて約1年。一度も報酬を受け取っていない、というか要求していない。途中で何かないか?とか聞いて来たが、適当に流している。


まぁ相手は神だし、思考は読まれているだろうが社交辞令と言うのは意外と大事である。


いかにも嫌そうな顔をされても、笑顔で対応すること、はっきりと断られるまであきらめない事が営業のコツだと、先輩に習った事を思い出しながら断っていた。


「さて、ではさっさとダンジョンの部屋に移動してもらおうか。私も助言くらいはさせてもらおう」

「まぁ構図はほぼほぼ完成しているんだがな」

「だったら早く作れ」


ファラに突っ込まれる。


早速石室に移動する。もう見慣れた光景すぎて、こんな非日常的な光景を見ていてもなんとも思わなくなってきた。


パソコンを起動し、持ち込んだ回転する椅子に座り、いつもの態勢に入る。


「ふむ。これがいつも作業しているパソコンという物か」

「実際に見るのは初めてでしたっけか」


パスワードを打ちこみ、ダンジョンツクールを起動する。


「おお、大分完成しているな」

「ああ、ここまで仕上げるのに大分苦労したがな」

「そして、この落とし穴の下を通路にしているのはなんだ?」


落とし穴の直下は約100m程の直線通路になっている。勿論垂直の。


「そりゃもちろん即死用トラップですよ。人間100mの高さから落ちたら死にますし」

「そういう話ではなくてだな、何故落とし穴の下に作る必要があったのだ?」

「色々と検証してみたんですが、落とし穴が一番発動する確率が高くて、そこそこの隠密性があったからです」

「だが、スキルに引っかかるぞ?」

「スキル?」


忘れていた。これは異世界だという事を忘れていた。スキルとかレベルとかがあるという事を忘れていた。


どんな世界かは分かっているが、この世界はどのようなシステムで構成されているかを理解していなかった。


「なんだ、調べていたと思ったが、調べていなかったのか?」

「いやそんなもの事典に書いてませんでしたし」

「ふむ。そうだな。では簡単に説明しよう」


そこから簡単に、と言っているのに長ったらしいスキル講座が始まった。


「簡単に言うとスキルと言うのは、本人の技能における習熟度によるボーナスだ。例えばお前の場合、かなり高度な教育を施されているから、ほぼすべてのものを理解することが出来るようにボーナスがかかっているし、頭の回転も速くなっている。この世界だけではなく、そちらの、地球?だったか?そちらでも微妙に作用しているはずだ。

 まぁそこまでの影響はしていないはずだ。精々頭がすっきりしていたりする程度だろう。

 さて、それではスキルの種類について説明しよう。スキルには先天性と後天性がある。簡単に言うと生まれついた才能と後から習得した技能だ。前者の方が強力な物が多いが、特化している場合もある。後者は様々な分野に応用できるが、先天性に比べるとたかが知れている程度の効果しかない。

 お前の場合で言うと、先天性は効率的思考、という物がある。後天性は魔法だ。まぁはっきり言って今の段階だとぎりぎり一般人が程度の力しかないが、まぁ習熟していけばそこそこのモノに仕上がるだろう。

 で、まぁここからも分かれる訳だが、スキルにはさらに二種類に分かれて常時発動型パッシブ能動発動型アクションがある。読んで字の通りだな。基本的に先天性は能動発動型アクションが多く、後天性は逆だ。

 スキル派生とかの話もあるが、そこの話は今は置いておこう。それではスキルについて最低限の説明を今からしていくぞ。

 まずは――」


こんな感じで3時間くらい話が続いた気がする。


どうやらこの異世界はスキル、という物が非常に大事なものらしい。まぁ前線で戦わず、後ろで考えているだけだしそこまで重要ではないだろう。

思ったよりうっかりさんだった主人公君。

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