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その2

とりあえず元の世界に戻ってみる。


本棚の隣にある明らかにこの部屋とはつり合いの取れていない、窓のついていない、ドアノブだけがついた質素なドアを開けると、その先はいつも暮らしていたマンションだった。


狭いスペースに敷かれた布団と、端には作業用のデスク。その上にはそこそこの性能をしたPCが置いてあり、向かいには買ったままロクに読んでもいない本が積んである。

汚そうに見えてそこそこ整頓されており、埃はいくらか溜まっているが、ゴミはそこまで溜まっていない。実は買う暇がなかったりスナック菓子をそこまで食べなかったりするだけだったりするが、置いておこう。


時計の針は1分ほどしかたっておらず、実際に時間が止まっていた事を俺に教えてくれた。


「さて、仕事行くか」


背伸びしてから、スーツに着替えて資料をまとめてカバンに詰めて出社する。


思いのほか体に疲れはない。そもそも疲れるような生活リズムをしていないが、それでもいつも以上にスッキリしている気がする。

何と言うか、頭から不純物を抽出したような、そんな感じがする。いつもより効率よく仕事を消化出来た気がする。まぁ誤差レベルだが、気分と言うのは重要である。モチベーションと言い換えてもいいかもしれない。


いつも通りタイムカードを刺して家に定時で帰宅する。残業するのは決められた時間までに仕事を終わらせられない奴らがやることなのだ。無駄話をせずに自分の仕事に集中していれば周囲の社員に『付き合いが悪い』というレッテルを貼られるが、しっかりと定時で帰宅できるのだ。仕事は仕事、プライベートはプライベートでしっかり分けるのが人生のコツと言っても過言ではないだろう。

それ以上に重要なのはいかに容姿がいいか、と言う事なのは言うまでもないが。


まぁそれは持つ者の特権なので、持たない俺は『仕事にマジメ』という評価ではなく、『付き合いが悪い』というレッテルが貼られているのが現状の仕事の不安だろうか?まぁ転職する気はないけれど。


全く、顔面偏差値と言うのは理不尽である。まぁ顔面整形すれば上げられるが、個人的にはそこまでする意味はないと思う。転職時くらいだろうか?やるタイミングをあえて挙げるとすればだが。


「ただいまー」


とは言っても返事してくれる奴がいるわけでもなく。まだまだ夏に入ったばかりで、温い、というか蒸されているような感じでベタつく空気はスーツを着ていると地味に嫌である。


すぐにスーツを脱ぎ、クローゼットにかけなおす。Yシャツのままだが、昨日時間が止まったまま放置しているダンジョンに向かう。

やはり違和感しかないドアである。本棚の隣、窓の横についているのである。木製のドアが。


あっちから来るときは鉄のドアで、こっちから行く時は木製のドアなのが若干意味不明である。


「あ~涼し~」


ドアを開けると、ひんやりとした空気が流れ込んでくる。


石の部屋は思ったよりひんやりとしている。まぁおそらく地下に埋まっているだろうし、土はそこまで熱を通さないからであろう。


ふと机を見ると、A4用紙ほどの紙が2枚置いてあった。


1枚目は昨日の質問に対する回答、2枚目は質問用紙のようだ。とりあえず回答を読んでみる。


『伝える紙を大きくできないか』

『今回からある程度大きくしました。それでも不安があるのなら贅沢のしすぎでしょう』


ふむ。いきなり手厳しい。まぁ譲歩してくれたようだし感謝しておこう。


『他の奴がどのように作っているかを参考程度に』

『プライバシーって知ってる?』


神のようなものにそんな事を言われたくはない。


『元の世界の道具を持ち込む事は可能か?』

『基本的に可能。常に稼働条件を満たすように調整しておいたので、手で持てるものならばダンジョン内に持ち込むことが可能。梱包はあり』


ふむ。ありがたい。早速ノートパソコンでも持ち込もうか?いやここはデスクトップパソコンを持ち込もう。


ノートパソコンとデスクトップパソコン、どちらも必要なのが社会人のつらいところである。ノートパソコンではどうしてもスペックが足りない。重い3D系のソフトを起動し、動かしたりするとカクカクでストレスが溜まったりする。しかも相応のスペックを求めると普通に高いのだ。金額的な意味で。


と言うわけで、早速元の世界に戻り、パソコンを段ボールに梱包してダンジョンの中に持ってくる。


丁度机の大きさが同じだったので、机の上に開封したパソコンを配置する。コンセントなどはどこにも接続されていない。


で、試しに起動してみたところ、何故か普通に起動出来た。だがまぁ当たり前のようにWi-Fiは通っていないようである。残念。


「というかダンジョンってどうやって作成するんだ?」


ここまで来てやっとその事を思い出す。


昨日は魔法の練習したマニュアル読んだりしただけだ。しかもマニュアルは斜め読みしただけなので、内容はそこまで把握していない。


マニュアルをもう一回最初から読み直すと、しっかりと書いてあった。


――イメージしろ――


以上。ふざけるな!と声を大にして叫びたい。イメージなんて曖昧なモノの頼っていられるか。絶対に数値化する。


で、イメージ、と言う事は、パソコンでどのように作るかをイメージすることも可能なのではないか?と思いついた俺は、早速その作業に取り掛かってみた。


また結果論になるが、出来た。


1ヶ月も使ってしまったが。


神のようなものとの一日一度の質問で取引やら要求やら提案やらをしまくる必要があった為である。


ダンジョン制作作業開始一か月、進展0。


途中で神のようなものからの用紙に他がどれだけ進んでいるか?についての回答がたまに答えてくれた時もあったので、それを元に推測してみると、早い奴らではもうダンジョンを制作、稼働させている奴らもいるらしい。いやー早い。きっと想像力がたくましいんだろう。しかし俺にはそのような逞しい想像力もなければいきなりイメージで作るなんて博打じみた事は俺には出来ない。


その事について神のようなものに聞いてみたら、年齢は12歳~30歳でこの実験はやっているらしい。


因みに俺が最高年齢である。つまり三十路突入していると言う事だ。


若い奴らは決断力が凄まじいな、と驚きながらも進める事柄は可能な限り正確に、どれだけ時間をかけようともミスはしたくないという性分の俺はマイペースに作業をすすめる。


ゲームに本気なる奴とか言われていた高校時代の時期を思い出す。ゲーセンにて数少ない友人を格闘ゲームでぼっこぼこにして20連勝ち越しをやっていたことを思い出した。


時間制限がないのならば、可能な限り最高の状況、最高の条件で挑みたいのだ。


やっとまともに稼働するようにしたパソコンを起動する。


そして、俺が神のようなものと共同で作り上げた、ダンジョン制作専用ツール、『ダンジョンツクール 4.2』を起動する。


試行錯誤を繰り返し、1ウィンドウ目で3Dのポリゴンでダンジョンの中身を投影し、2ウィンドウ目は現状ダンジョン内のモンスターがどのような状態であるかを表示し、3ウィンドウ目でどのように拡張するかをリアルタイムで更新する。


――1年後――


今の状態は、ダンジョンを一切建造していない状態である。


通常、ダンジョンは出現位置は、完全にイメージなのだが、俺の場合は違くなった。


PCでこの世界の歴史などから大体の地図を作製し、それを神のようなものに修正してもらってを繰り返し、完璧な惑星の地図、異世界星儀を作ったのだ。


それを神のようなものにも提供したところ、褒賞として、『どの位置に、どのようにダンジョンを作成するか』を無制限に選べるようになったのだ。


さらに歴史の年表やらなにやらを作成しまくり、それを提供するを繰り返し、自分がこの世界にどんどんと詳しくなると共に褒賞を受け取り、お互いwin‐winの関係を作っていた。

次回から説明回です。

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