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その1

目を開くと、時間が停止しているであろう空間にいた。


簡素な石の部屋である。周囲は石垣のように積まれた石で囲まれている。

壁には本棚が3個程埋め込まれており、その中には俺が要求した事典類が詰まっていた。


試しに生物事典・モンスター編第一巻を手に取って、軽く目を通してみる。


「……そう来たか」


事典という物は最初から大体なんでも書いていると認識していたが、どうやら神のようなものが用意した事典は別らしい。


最初のモンスターなどは普通に表示され、そのモンスターにどのような特性や習性があるのかが書いてあるが、書いていないモンスターが多々ある。


2巻、3巻も手に取ってみたが、巻を進むごとにどんどんと書いている数が減っていく。つまり次の街に進んだ程度のポケ○ン図鑑みたいなものである。


「チッ」


最初から全部書いてあり、その特性を吟味してからダンジョンの構築をしようと考えていたが、やはりそんな事はやはり無理だったか。


で、次に歴史などを見てみるが、ところどころノイズのようなものがかかっていたりする程度でおおまかな事は理解出来た。


まぁ神のようなものにもさらに下がいるらしく、それがいざこざを起こして消耗したところを漁夫の利的に人間がどちらも封印したような形でこの世界は成立しているらしい。


そして自分の封印した神を自己の正当化のために崇めているとかもう失笑ものである。で、自分たちが封印したという事を今の奴らは知らないと来た。本当にお笑いである。


で、次はお待ちかねの魔法である。


――結果から言うと、魔法は使えた。


ただし非常に面倒臭かった。


まず、専用の音を発音するか魔法陣を書く必要があるのだが、発音の方は舌の短い日本人には向かないようだ。さらに、魔法一つごとに相応の慣れが必要らしい。


魔力の特徴として、物理的に存在していない。専用の配置をすると効果を表すらしいが、そのままでは何にも使えず、空気中に常時、霧のようにまき散らされている。そして、決まった密度がない。密度は自由自在に変化させられるらしい。


それを音により専用の配置に移動させることで発動させるのが、発音タイプである。まぁ上記の通り日本人には向いていない。


もう一つは、物質の上に、その物質と全く同じ密度で魔力を専用の配置にする魔法陣である。少しでも魔力が配置されている物質と密度が違うと効果が一切発動しないというおまけつきである。

まぁ実は抜け道があったりする。液体はその密度と同等の魔力しか保有できない。つまりある程度粘性のある液体に魔力を混ぜると、それを専用の配置――この場合は文様と言った方がいいのだろうか?――を描くだけで即席の魔法陣が作れる。


ついでに固体が融解した場合、余剰の魔力は外部に排出される。気化する場合は周囲と等しい魔力比率になるように放出される。


つまりその空間が1の魔力を持っていて、固体xが空間に対して3の魔力を持った状態で気化すればその空間の魔力は2となる。


ちなみに魔力は空間の魔力が強いほど威力が強くなる。魔法使いは魔法の発音の効果の範囲が非常に広いらしい。

理屈は、魔法使いは10㎥分を一回で発音でき、1㎥につき魔力が1であり、その魔法の威力は消費魔力に等しいとすると、この場合1×1×1の空間に1の魔力があるため、魔法使いは10×10×10分の魔力を使う事が出来る。つまり魔法使いはこの場合1000の威力の魔法を放つ事が出来る。


改めて日本人が魔法の発音が苦手だという事を説明すると、舌が短いために威力として重要になる発音の効果範囲が短くなる上、そもそも魔法の独特の韻を発音しにくい。


つまり、発動しにくい上に、発動したところで威力はたかが知れているという事だ。おとなしく拳銃やライフルを使った方が余程強いであろう。


俺は時間停止した空間で1日程、火をただ出すだけの簡単な魔法の練習をしたが、しっかりと発動するまで6時間かかったし、1日練習したところでライターの火程度の威力しかなかった。


「人の夢って書いて儚いって読むんだよなぁ」


子供の頃、魔法使いになりたい、とか思ってた時期があったが、それが無理だと分かるとやはり悲しかった。が、まぁそこそこショックだったという程度である。


次、ダンジョンの作り方であるが、リソースがやはり限られていた。


どうやら魔力を消費するらしい。しかもそれ専用の。入手方法は自然に増えるかアイテムや生物をダンジョン内で分解するかである。


分解とかかなりエグいと思ったが、どんな理屈か死体じゃないとできないらしい。マニュアルにそう書いてあった。深く突っ込んでも仕様でしかないと思ったので、そういう物と納得しておく。


マニュアルは簡単なモノで、小学国語事典と同じ程度の厚さである。


「いや普通に多いわ。他の奴がポプ○ディア全巻と同じくらいだからと言って小学国語辞典全部暗記するのは流石に辛いわ」


若干文句が出てくるが、まぁこれも優しさだと思って適当に読んでみる。


まず、ダンジョンとしてやるべき事は、適当に迷宮を作り、モンスターやトラップを配置し、入ってくる奴らをぶっ殺し、それで魔力を手に入れてさらに拡張する、と言った感じである。タワーディフェンスのようなものであろうか?まぁ嫌いではないが、タワーディフェンスは勝ちパターンや絶対に突破できない布陣みたいなものがあるからそこまで好きではない。


そしてモンスターは大別して三つの種類、2つの召喚方法があるらしい。


生物、無機物、アンデッド。それが三つの種類である。はっきり言って大別しすぎだと思う。生物や無機物はそれなりに――まぁ軽く3桁以上は――分岐しているが、アンデッドはそこまで分岐していないようだ。

生物とアンデッドは別物だという事だろう。仕様だ。


2つの召喚方法とは、召喚陣と個別召喚である。


召喚陣は、魔力を注ぎ込む事で、対応したモンスターが消費した魔力分召喚出来るという物だ。個別召喚と比べて魔力効率はいい。

だが、設置するのにも専用の魔力を消費する為、すぐに軌道を切り替えた場合採算が取れない場合がある。


個別召喚は通信販売みたいなもので、指定したモンスターを指定した数だけ、指定された料金で手に入れられるものだ。

試用としては使い安いかもしれない。精鋭部隊などに使ってもいいかもしれないし、使い道は豊富だが大量に使うモンスターは召喚陣の方がいいだろう。


さらに一つ、不味そうなものを発見した。

悪しき課金仕様、ガチャっぽいものである。


その名はランダムポータル。ピンからキリまで様々なモンスターを提供してくれると書いてあるが、明らかに雑魚モンスターの排出率の方が高い上に設置するのにかなりの魔力を持って行かれる。かなり余裕が出てきたら設置しても面白いかもしれないが、序盤も序盤に設置する馬鹿は中々いないだろう。


で、今のところ気になっているのは、生物系ではコストの低いゴブリン系統、スライム系統、下等獣類、下級妖怪類。無機物系では小型ゴーレム系統くらいである。アンデッドはスケルトンなどがあるが、召喚陣が他と比べて高額なので、もう少し余裕が出来たら検討しようか?という程度である。

そもそも骨が歩くダンジョンなんて個人的に作っていて嫌である。


さて、肝心なのは例の神への通信手段である。


どうやら、机の上のメモのような紙に書けば伝わるらしい。


とりあえず今日は

『伝える紙を大きくできないか?』

『他の奴がどのように作っているかを参考程度に』

『元の世界の道具を持ち込む事は可能か?』


この程度にしておこう。


まだ時間は進めない。部屋の一つすらできていない状態だしな。


そして元の世界に戻るには、本棚のすぐ横にある扉をくぐれば、俺の元の世界の居住施設に出るらしい。これは俺以外には認識できず、利用できないらしい。向こう側でも認識できるのは俺だけだそうな。


一切進まない展開。所謂説明会って奴さね

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