Prologue.穏やかな日々
「ようやく給料も安定して、こうやって休みも取れるようになったよ」
久々に城から帰ってきた一番上の兄が額の汗をタオルで拭いながら笑う。休み、と言いつつも実家に帰ってくるなり畑仕事を手伝う兄はやっぱり孝行者だと思う。
兄が18の年を迎え、城に一般兵として勤めだしてから5年。兄の収入の半分以上は私達兄妹を扶養させるために使われていることを私は知っている。
正直5人も兄弟がいるから兄の気遣いはありがたかった。向かいの放蕩息子とは違う。兄は本当によくできた人だ。
「オッド、いつもありがとうね。父さんもわたしも助かってるよ」
「いいんだよ、母さん。それよりもう父さんも母さんも年なんだから、あんまり無理しないようにね」
「何を言うかオッド。わしはまだまだ元気だぞ」
「もうすぐ50になるってのに何言ってんだ。……ほんと、身体には気をつけろよ。これからうんと親孝行したいんだからさ」
兄が穏やかな顔で言うと、母は息を詰まらせたかのように涙ぐみ、父は気恥ずかしいのか「年寄り扱いするな」と文句を言った。
兄が戻ってくる日は夕飯がいつもよりも少しばかり豪華になる。一番下の10歳の弟は1週間ぶりの豚肉を霧中でほおばっていた。母は忙しなく台所と食卓を行き来し、酔っ払った父は兄に絡んでいる。
父も母も息災で、優しい兄やわんぱくな弟妹がいる。金持ちではないけれど、これほど幸せな家庭もないだろう。
その日も、次の日も、穏やかな日々が続いた。
「えーっ、兄ちゃん帰っちゃうのー?!」
「仕方ないだろ、これでも俺には長期休暇だったんだ」
「やだやだーっ、兄ちゃん帰ったらつまんない!」
「ったく……俺が仕事しなきゃうまい飯食えなくなるだろ? ただでさえウチは父子家庭なんだから」
「父ちゃんのメシ最初っからまずいもん」
「こらっ! 今まで男手一つで育ててきてもらったんだぞ。そんな親不孝なこと言うなっ」
城へ帰ろうとする兄と、末っ子の他愛ないやりとりを聞いて、思わず笑ってしまう。一番下の弟の素直な言葉を聞けば、父はたいそう落ち込むだろう。
もう何年も前から母はいないのだから、父の料理の腕もいい加減上達しても良さそうなのに。まぁ、でも、父には感謝しても仕切れない。
父と、兄と、弟妹。金持ちではないけれど、これほど幸せな家庭もないだろう。
次の日も、穏やかな日々が続く。
ついに始めてしまった見切り発車連載……。
完結させるまでは投稿しまいと思い、もう30件以上の未投稿のエピソードが埋まってます(もちろんこの連載だけではありませんが)。執筆中小説の数をへらすためにも、そろそろ連載はじめようかと。
ということでダークな作品です。ハッピーエンド? そんなもんは知らん! 両思い? よし死亡フラグだ! ヤンデレ? お前だけは生かしてやろう! ……ってノリです。はい。
まぁヤンデレが出る予定は今のところありませんけどね。ただ私のヤンデレの基準だいぶおかしいらしいんで、他の人から見たら十分病んでるかもしれん。
主人公は逆ハー目指します。敵から味方から引っ張りだこで「私を取り合わないで!」(血なまぐさい)状態になると思います。
逆ハーといっても、物語の都合上、男キャラ一杯出すので、その全員に好かれるという展開はありません。複数のキャラから言い寄られる、程度に考えてください。
物語全体として、あんまり主人公に優しい展開にはなりません。ご承知置きを。あと味方も敵も男性陣が紳士じゃないんで、女性としての尊厳がかなり踏みにじられます。これもご承知置きを。
こんなのは恋愛じゃない! と苦情がくる可能性が高いので、恋愛カテゴリではなくファンタジーカテゴリにしてます。ただこんなのはファンタジーじゃない! と苦情が来る可能性も……。バッドエンドカテゴリーとかできないかなぁ……。
とりあえず今日は3話までは一気に投稿します。最初は展開早めにしていきたいです。