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黒い、小さな魔獣を硬い鉄のヒールで踏み潰す。

甲高い断末魔を上げて消滅していく。


皇子が無理やり取り寄せた剣で黒い犬を上から真っ二つに斬り捨てる。どれだけ鍛錬したところで、私はまだ若い女で重力や遠心力でも味方につけたとしても、支援魔法無しで骨まで断つことは難しい。

なので、この剣には皇子に支援魔法を埋め込んでもらった。


「ルリ、一人で戦うなと何度言えばいい」

「ダメです。皇子は魔獣と戦わせません」


なんとか、最奥の魔石を砕いて戻ってきたところで皇子に迎えられた。よかった、すごくギリギリだけど追いつかれなくて。


だってストーリー上、皇子は魔獣の瘴気にどんどん当てられていって、塔から出られるようになった時には手遅れで、最終的にラスボス化してしまうんだもの。それを救うヒロイン!でも好感度が足りない場合はラスボスとして討伐されちゃうんだよなぁ。

そんな未来にさせないためにも、皇子は魔獣と戦わせらんない。

そもそもこの世界は生まれ持った色彩で魔力の系統が決まるというルールがある。

金や銀は光属性、黒や紫は闇属性、赤や茶色は火属性、青や水色は水属性、緑は風属性、の5属性。

魔獣はもちろん闇属性、皇子の光属性と相性は最悪で最強である。

ちなみに他の属性は火<水<風<火と三つ巴だ。

バトルありの乙女ゲームだったからね!それなりに設定組まれてたわ!

閑話休題


トリップした私はどの属性もなく、そもそも魔力が無いという逆チート。

無力である。ただし、逆に言うと魔獣の瘴気にあてられることもなく、魔法による弱体効果も受け付けないという利点もある。

せっかくファンタジーの世界なのに魔法が使えないのはとてつもなく悔しかったが。

悔しかったので見よう見まねと、男兄弟の中で培ったケンカスキルで不恰好ではあるものの魔獣を倒せるまでになった。最初は魔獣と分かっていても、殺すことに戸惑いもしたし、嫌悪もした。

見た目はグロテスクだけど、意志をもって動いてくるのでどうにも生き物のように感じてしまったせいだが。

魔獣を切り裂いたところで、血が流れることもなく、魔獣の骸は塵となって消えていってくれるおかげで割と早い段階でその抵抗は薄れていったのだけど。


今日、やっと最奥の魔石を砕くことが出来て、この場所から強い魔獣が生まれることは当分なくなった。


瘴気に当てられて黒くなってしまうはずの皇子の髪は毛先の方が黒メッシュになっている程度で済んでいる。

これならラスボス化は免れると思う。

浄化魔法で間に合うはず。


来月には皇子にゲームの舞台である学園からの迎えが来る。やり切ったな、という思いと、これから私はどうなるのかという不安が湧き上がる。

この幽閉塔は閉鎖的であり、皇子がかくまってくれていたから黒髪黒目という私の姿でも、不便を感じることはなかった。

けれど、皇子が学園に行ってからはどうなる。

この世界で黒色は忌避色。まともな生活はできないと、闇属性キャラのストーリーでは大変悲惨なことになっていた。


「ルリ、どうした?」

「いえ、そろそろ皇子も学園に通う年頃ですね」

「そうだな、昨日入学書類が届いていた」

「寂しくなりますねぇ」

「何故だ?」

「え、だって皇子ここから出てっちゃうじゃないですか」

「ルリも連れて行くに決まっているだろう?」

「は?」


にっこり、と笑いかけられ、拒否権なんてないことを私は理解した。

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