アーモンドと封印
私が通うのは全寮制の女子高です。
一学年百人程で三百人程が共に暮らします。
寮長は各学年に一人。
私の学年の寮長は黒く長い髪が美しい私の親友です。
ある休日、私は校内の裏庭を散歩していました。
麗らかな日射しが降り注ぐ穏やかな午後でした。
突然、私は後ろから殴られたのです。
目覚めると私は保健室に寝ていました。
泣いている親友がベッド脇にいます。
「ごめんね」
謝る親友に私は戸惑いました。
「どうしたの?貴女のせいじゃないでしょう?」
「私のせいよ。あそこに何かがいるのは知っていたの。
でも対処していなかった。
私では出来なかったから。ごめんね」
幸い、怪我は大したこともなく、すぐに治るでしょう。
「兄を呼んだからアレを封じてもらうわ」
そう言って親友は何故か眉を潜めたのでした。
親友の兄は五つ歳上だそうです。
親友によく似た優しい顔をしています。
「なるほどね。まったく、もっと早く呼べばいいものを。
ここまで放置するとは、お前が悪いね」
そう言うと親友の兄は、あの場所に何かを植えました。
するとすぐに芽が出てきて、あっという間に大きくなり、一本の木になると小さな白い花を咲かせました。
不思議がる私の顔を見て「アーモンドだよ」と親友の兄は言いました。
「アレの力を吸収しているから、もう悪さはしないだろう。
だから大丈夫」
親友の兄が微笑みました。
小さな白い花は風が吹くと簡単に散っていきます。
それはまるで雪のように美しい光景でした。
「またね」
そう言って手を振ると親友の兄は帰って行ったのでした。
私達は土地に潜む悪しきモノを封印する力を持っているの、と親友は告げました。
悪しきモノは人に危害を加えてしまうから封印しなければならないそうです。
「兄が一番力が強いの。
アーモンド一つで封印してしまうんだもの。
私はただ見えるだけ」
だから反論出来ないの。
親友はとても悔しそうに呟きました。
木が枯れない限り、悪しきモノは出てこれないそうです。
私はホッとしました。
「でも気にくわないわ。
兄は貴女を気に入ってしまったもの!
きっと理由をつけてまた会いに来るでしょうね」
忌々しげに親友が呟きます。
「そんなことないと思うけど?
少ししか話してないし。
今日初めて会った人だよ?」
「兄が初対面の人と会話することが珍しいのよ。
しかもまたね、なんて!
会いに来る気満々じゃない!」
騒ぐ親友を横目に私はアーモンドの木を見上げました。
とても綺麗なアーモンドの白い花。
美しい木は悪しきモノを封印しているようにはとても見えません。
私はアーモンドを植える親友の兄を思い浮かべました。
優しい微笑みが印象に残っています。
また会えるかもしれない、そう思ったら私は嬉しくなったのでした。




