異世界チーレムは男のロマン…だろ!
俺の名前はアルキス=デニス。18歳。皆からはアルと呼ばれている。
容姿はと言うと、紫がかった黒髪に瞳も紫に近い黒色で身長はあまり高くはないが、それでも女子に比べると断然高い方だ。肌はけっこう白くて日に焼ける事もない。同年代の男達と比べても肌はすべすべで、女子からはよく羨ましがられている。
ちなみに自分で言うのも何だが格好いい。いや、謙遜は美徳ではないな。はっきりと言おう、イケメンであると。
あ、そこ石投げないで、痛いから。
そんな訳で、いきなりだが俺には前世の記憶がある。俗に言う前世の記憶持ちと言うやつだ。
ちょ…マジ石投げないで!当たると血が出ちゃうから。
アレだよアレ!今流行りの異世界転生ってやつだよ。
そんな異世界転生にご多分に漏れず、俺も便乗していたようだ。
しかも、イケメンに。
もうね、アレだわ。初めて前世の記憶を思い出した時には震えたね。ちょ…ついに俺の時代が来ちゃった?!って感じで。
前世の俺は日本に住んでいて、なんだかよく分からない内に高校生で死んでしまったようだった。よくある異世界行きのトラックにでもはねられたのだろう。
それから気が付いた時にはアルキス=ベニスとして生きていた。ちなみに憑依とかの類いではない。歴とした俺自身として、今の世界で生きている。
それから少しずつ前世の記憶を思い出していく内に、俺には一つの壮大な野望が出来ていた。
そう、異世界ハーレムを作るという野望をだ。
俺が暮らしている世界は、剣と魔法と冒険と言う素晴らしい三大要素が蔓延している、厨ニ病には堪らない世界なのだ。
もうね、前世で厨ニ病ならぬ高ニ病を患っていた俺には最高の世界だと、記憶を取り戻した時には興奮して寝られなかったものさ。
し、か、も、俺ってばイケメンだけではなく異世界転生にはお約束の超絶チート持ちだったわけだ。
魔法を使わせたら院内では右に出る者は居らず、勉強でも常に学院ナンバーワン。
教師達からは神の申し子と言われ、学院の生徒達からは学院始まって以来の天才と言われている。
もうね、天は二物を与えない――とか言うけど、そんな事はなかったぜ。
これは、学院を卒業したら冒険者となって各地を巡り、沢山の女性達と知り合ってハーレムを作ってやるぜ。ドュフフなフラグだろ、と。
そう思っていた時期が私にもありました。
俺は虚弱体質だった。
体育の授業で体育館の中を走れば館内の暑さで意識を朦朧とさせ、走っている内に気が付いたら意識を失い、目を覚ますと医務室の寝台の上。
じゃあ外での球技なら!と意気込んで外に出ると肌が真っ赤に日焼けして次の日に地獄を見る。
学院での授業も、長時間椅子に座ったままだと知らない内に意識がなくなっている。
魔法の授業だけでも!と呪文を詠唱していると、酸素不足になるのか失神する。それならば魔法の詠唱カットじゃワレー!チート舐めんな――と詠唱無しで魔法を唱えると、威力の強さに体が着いていかず倒れる始末。
日焼けを治そうと自身に回復魔法を使えば、みるみる内に肌まで真っ白になり、それを見た女子が妬ましげにこちらを睨んでくるし、学科授業担当の教師達も意識を失う俺に疲れたのか、授業は通信制にしろと言ってくるし…。
体育の授業や魔法の授業では倒れた俺を医務室に連れて行く役割で、男共が拳と拳の戦いを始めるし。
どうしてこうなった!
18歳で学院を卒業するまでそんな日々が続いた。
◇◇
俺は今、自宅の寝台の上から学院で友人となった仲間達からの手紙を読んでいる。
『冒険先で出会った美人と付き合える事になった』
『色黒の男の人ってワイルドで素敵よね。あ、アルは色白な方が似合ってるわよ』
『三か国渡り歩いているが、何とか現地妻を作りたいと思います』
ふざけるな!
俺の、異世界チーレム漫遊記を返せ!
そんな俺は現在、健康作りの為に乾布摩擦やってます。
効果はまだない。