赤いハガキ
ダメよ。
絶対に、目をあけちゃダメよ。
どうして?
トゥールが家にきたとき、目があうとつれていかれちゃうの!
お母さんが言っていた言葉。たしかあれは六年前。
私が小学校の4年生の
ころ。
「あかり?」
お母さんが部屋に来た。
「なぁに。」
「今日ね、何年の何月何日?」
どうしてそんなこと聞くのかな。
「3012年の、5月7日だよ?」
言うと、お母さんは悲しそうな顔をした。
「ど、どうしたの?」
「あかりは覚えてない?六年前のこと。」
いま、思い出していたところだけど。
「んー、覚えてないかっていわれても、なんのこと?もしかして、トゥールとやら?」
こくり。
お母さんは頷く。
「それがどうしたの?私、トゥールってなんのことかわかんないんだよね。」
「そうね…。教えてないわね。あのね、私たちが住んでるこの国日本は、二十年前からトゥールという知的生命体におびえてるの。」
「知的生命体…。」
宇宙人って、ことだよね。
「それでね。トゥールはずーっと日本中の家
を夜、たずねるの。ううん、たずねるっていうか、忍び込むの。耳も聞こえない。感触もわからない。でも目は見えてね、人間と目が合うと、その人間を自分の星に連れていくのよ。」
ふーん。
よくわからないけど、とにかく怖いものなんだ。
「そのトゥールの一人が、今日うちにやってくるの!」
「どうしてわかるの?」
黙ってお母さん私ハガキを渡してきた。
赤い。
今日、二宮京子さん、雅史さん、あかりさん
、友也さんの住む家にトゥールがやって来ます。どうぞ、ご注意を。
トゥール研究所