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前世の記憶?厨二ノート?無駄に派手な異世界冒険譚!  作者:
【第4章】やりたかったこと

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【44話】思わぬ才能

とりあえず、三人で向かい合って座った。


机が、やけに小さく見える。

原因は明らかで、向かいに座る男――ドランの体格のせいだった。


「……で、用件は?」

俺がそう切り出すと、男は背筋を正した。


「あなたの手伝いができないかと思いまして」


即答だった。

理由も、前置きもない。


「……手伝い?」


「はい」


迷いがない。

そのせいで、逆に嘘っぽさがない。


リュカが、視線を外さずに言う。

「……怪しくはない、けど」


「圧はある」


「それは否定しません」

ドランは淡々した調子で認めた。


そのタイミングで、扉が開く。


「トウマ様、少々よろし――」

戻ってきたセラが、室内を見て一瞬で空気を変えた。


視線が鋭くなる。

完全に、戦闘前のそれだ。


「……こちらの方は?」


「落ち着いて」


俺は立ち上がり、セラの横に寄る。

そして、声を落として耳打ちした。


「……セラと、同じ存在だ」


一瞬。

本当に一瞬だけ、セラの目が見開かれた。

次の瞬間には、いつもの穏やかな表情に戻る。


「……承知いたしました」


ガルドを改めて見て、軽く一礼。


「セラ・アルク=ノクスと申します。本日は、どのようなご用件でしょうか」


「ドラン・ヴェルナーです」

ドランも同じように、丁寧に頭を下げた。


「お話しできて光栄です」


……重戦士系の見た目で、この礼儀正しさ。

やっぱり、前世の俺の趣味が滲み出ている。


「それで」

俺は話を戻す。


「手伝いって言ったけど、今やってるのは地味な作業だぞ」


「構いません」


「布を切って、調整して、魔力をほんの少し通す。戦闘でも力仕事じゃない」


「問題ありません」


あまりにも即答なので、逆に試してみることにした。


「……じゃあ、これ」


作業台の端に、拭き布一式を置く。


「今、俺たちが作ってる商品だ」


リュカが補足する。

「順番を間違えると、性能が落ちる」


「闇属性は最後」


「出力は最低限」


ドランは、説明を最後まで聞かなかった。


正確には――

聞きながら、もう手を動かしていた。


布を取る。

裁つ。

折る。

調整する。

その一連の動きが、やけに静かで、やけに速い。


「……え?」

リュカが、思わず声を漏らした。


俺が一枚目の布に闇属性の魔力を流し終えた、その時。

作業台の反対側で、布が積まれていた。


「……ちょっと待て」

俺は手を止める。


「今、何枚だ?」


ドランは手を止めずに答える。

「十枚です」


「……」


リュカと顔を見合わせる。

俺たちが、集中して一枚。

その間に、十枚。


しかも――


「高品質だ」


リュカが一枚ずつ手に取り、淡々と確認する。

「ムラがない。手順も、完全に守ってる」


ドランは、ようやく手を止めた。

「問題がありましたか?」

本気で分かっていない顔だった。


「……いや」

俺は、正直に言う。

「問題しかない。良い意味で」


セラが、静かに息を吐いた。

「これは……想定以上ですね」


「速度もですが」

視線を布の山に向ける。

「この量を、この精度で維持できるのは――普通ではありません」


「慣れているだけです」


ドランは、平然としている。


「前線では、装備の整備が遅れると人が死にます。速度と精度は、同時に求められていました」


……重い理由を、さらっと言うな。


「じゃあ」

俺は、観念して言った。


「一つ頼む」


「何でしょうか」


「この拭き布を作れる分作ってくれ」


一瞬も迷わない。

「承知しました」


その直後。

作業場の空気が変わった。

音が、一定になる。

動きが、流れになる。


俺とリュカが一枚仕上げる間に、

ドランの前には、十枚ずつ、きれいに揃った拭き布が増えていく。


数えるのをやめた。

意味がない。


セラは、穏やかに微笑んでいた。

「これなら、供給は安定しますね」


良すぎるタイミングでの助っ人の登場、思うところはあるが、今は考えないことにした。

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