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二枚目

 僕が教室に駆け込むと、明はすでに着席して何事もなかったかのように一時間目の授業を受けていた。

「相戸君も遅刻……っと」

 担任兼理科教師の野々宮先生が出席簿にマークを付ける。よかった、一時間目が野々宮先生の授業で。野々宮先生は遅刻しても黙って成績を引くだけで、怒鳴ったりねちねち指摘したりはしない。遅刻常習犯からはそのことで逆に恐れられてるみたいだけど、一回きりなら大丈夫。

「ま、今日は僕も遅刻しちゃったしね。遅刻は大目に見るよ。それじゃ、席について」

 よし! ついてる! 僕は言われたとおりに席に向かった。僕の席は最後尾なのであまり目立たない。

「どうしたの? 藤棚君はいつものことだけど、相戸君が遅刻なんて」

 隣の席の巽エリカが振り向いた。ツインテールがさらっと靡く。大きな吊り目がこちらを見つめた。

「あー、実はさ」

 どう説明したものかと迷っていると。

「あなた! 遅刻してきた祐輝様を心配するそぶりを見せて、ワタクシから祐輝様を取ろうというおつもりですか!」

 いきなりハムエが巽に噛みついた。比喩でなく、腕にがぶっと。

「痛っ!」

「こら、ハムエ。やめろって」

「うーっ」

 僕はあわててハムエを巽から引き離す。犬か猫みたいに巽を威嚇するハムエ。一目ぼれでこんなに夢中になれるものなのかな、女子って。怖い。

「だってこの女が」

 だってって……普通に声掛けただけじゃないか。

「ちょっと、何よその子」

 巽が僕を肘でつついた。

「ワタクシの許可なく祐輝様に触っちゃいけませんー」

 ハムエが顔を真っ赤にして巽と僕の間に入る。教室中の視線が僕とハムエに集まった。

「こいつは……」

 どう説明したものか迷っていると。

「ああ、こいつ、『藤棚ベーカリー』の食パンで作ったハムエッグトースト! 俺の朝飯だったんだけど、どういうわけかこんなになっちゃってさー。やっぱりうちのパンがウマすぎたのかな。ちなみに、祐輝と絶賛恋愛中だから応援よろしく! ついでに『藤棚ベーカリー』も応援よろしく!」

 明が割り込んできて説明、もとい、宣伝した。助けてくれたんじゃなくて、宣伝が目的らしい。

「はいはい、みんな、そこまでそこまでー」

 わらわらとこっちに集まってくるクラスメイト達を、野々宮先生が制する。

「そりあえず、ハムエちゃん、だっけ。適当に空いてる席に座って、授業受けられるかなー?」

 いや、先生。なんで生徒にする気満々なんですか。

「空いてる席ですか?」

 この教室で空いている席といったら最前列の窓際だよな。

「異議あり!」

 何故か明が声を張り上げた。ご丁寧に指を突き付けるポーズも込みで。

「あんな埃っぽいカーテンの横じゃ、うちのハムエッグトーストに埃がかかります!」

 いや、なんでそんなことを力説?

「あっ! それじゃあ、アタシが前の席に移りまーす」

 巽が席を立つ。

「わざわざ明のいうことなんか聞いて席移んないでもいいって」

「いいのよ。ちょうど最近視力が落ちてきて黒板が見えにくかったし、アタシの席ならハムエちゃんも相戸君の隣になれるでしょ」

 ハムエがぽっと頬を赤らめる。

「じゃあ、巽さんとハムエちゃんは席を動いてね。ちょっと時間食っちゃったから少し駆け足で説明するよ」

 野々宮先生が黒板に向き直り公式を書き出した。やばい、途中参加だから意味不明だ。後で誰かに教えてもらうか。


野々宮先生、フルネームはもちろん野々宮宗八(裏設定)w

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