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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第90話 収集家

 カトウは後ずさった。

 己の手を見つめてうわ言を洩らす。


「お、俺……俺が探偵……沢田……」


 カトウは膝をついて低い声で唸り出す。

 そんな彼に上原は淡々と説明する。


「三十年前、私達はこの朽津間ビルに来ました。前管理者……私の父である田宮の策略により、あなたは重傷を負って記憶喪失に陥りました。以来、最上階に向かうという目的意識だけ保ち、何度も何度もビルに挑戦しているのです」


「そう、か。俺は……ずっとビルを上がろうとしていた……二十五階に向かっていたんだ」


「朽津間ビルは過酷な環境です。あなたは数え切れないほど死にかけて、挫折し、やがて自分が何者かも分からなくなりました」


 横で話を聞いていたイリエは納得する。

 彼女はこれまでカトウに抱いていた謎を振り返っていた。


(この人は妙に戦い慣れていた。武器の隠し場所も知っていた。ただの偶然じゃない……私達がビルに巻き込んだんじゃなくて、最初からビルの関係者だったんだ)


 上原が屈み、カトウの顔を覗き込んだ。

 彼女は優しい口調で問う。


「どうですか、先生。そろそろ記憶の整理はつきましたか?」


「くっ、あぐ……ま、てよ……もうすぐ、で……ッ!」


 カトウは目と鼻から血を垂らす。

 ひときわ大きな声で苦しみを訴えた後、カトウは急に静かになった。

 乱れた呼吸を整え、彼は顔の血を拭う。


 記憶を取り戻した男、沢田は苦笑しつつ上原の肩を叩いた。


「ある程度……全部じゃないが、思い出せた。上原……久しぶりだな……すっかりババアになっちまいやがって」


「先生こそお爺ちゃんじゃないですか」


「はは、情けねえよ」


 沢田と上原はおかしくなって笑い合う。

 戸惑う他の者達を見た上原は、咳払いをして話を軌道修正した。


「勝手に盛り上がってしまいすみません。皆さんには話しておきましょう。三十年前のあの日、何が起こったのかを――」


「そこはわたくしがご説明しますね」


 壁の一部が回転し、そこから車椅子に乗った老人が現れた。

 痩躯で眼帯を着けた男は、白髪を七三分けにしている。

 右腕は木製の義手だった。

 男は胸に義手を当てて丁寧に名乗る。


「はじめまして、わたくしの名前はコレクターです。以降お見知りおきを」


 刹那、沢田が拳銃をコレクターの額に押し付けた。

 怒気を露わにした沢田はコレクターを罵る。


「よくもまあ、俺の前に顔を見せられたな、クソ野郎」


「お久しぶりです、沢田さん。お元気でしたかね。この三十年であなたの使っていた武器も集めたのですよ。よければ見ていきますか」


「黙れ。お前を殺してとっとと終わらせてやる」


 静観していた松本が、沢田の拳銃を鷲掴みにした。

 発砲を妨害された沢田は松本を睨む。


「止めるな」


「俺は過去の話を聞きたい。こいつを殺すのはその後でいい」


「さすが松本さん。ご理解に感謝します。あなたには知る権利がありますからね。当然の主張です」


「…………」


 コレクターの発言に、松本は険しい表情で舌打ちした。

 構わずコレクターは笑顔で話を続ける。


「ではご説明しましょう。三十年前、管理者が変わった日について」

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