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第9話 熱烈歓迎

 沢田と上原は黙々と階段を上がる。

 その途中、沢田はふと眉を寄せて立ち止まった。

 彼は上原の足元を指し示して告げる。


「そこで止まれ」


「何ですか?」


「ゆっくりと下がるんだ。落ち着いて動けよ」


 上原は言う通りに行動する。

 彼女が数段ほど下りたところで、沢田は近くの石を拾った。

 それを階段に向かって投げる。


 石が階段に触れた瞬間、ロープに繋がれた斧が落下してきた。

 遠心力を乗せた斧は、振り子のように前後する。

 そこはちょうど上原が止まって下がった位置だった。


 斧を目にした上原は血相を変える。


「こ、これって……」


「油断した人間をぶっ殺す罠だな。斧がちょうど頭の高さに来るよう調節されている。人喰いビルってのもぴったりのネーミングだ」


 沢田は嘆息し、壁の一角に注目する。

 そこには剥がれかけた数字の「3」が貼り付けられていた。


「今が三階……これが二十五階まで続くなら拷問だな。やっぱエレベーター使うか」


「えっ、でもエレベーターだって罠かもしれませんよ? 中に目玉とか指が落ちてましたし」


「冗談だ。あれこそ見え透いた罠じゃねえか。地道に進むのが一番安全だろう。何か気付いたら報告しろよ」


「了解です!」


 二人はより注意を払って階段を上がっていく。

 各階はいずれも暗く、おまけに視線や人の気配を感じる空間ばかりだった。

 沢田達はそれらを確認せずさっさと進む。

 探索自体がリスクなので、二十五階まで最短で向かうことにしたのであった。


 ところが彼らは六階の踊り場で行く手を阻まれた。

 そこには無数の家具がバリケードのように積み重なっている。

 巻き付けた有刺鉄線で固定されており、解体するのは時間がかかりそうだった。


「よじ登るのは……無理だな。別のルートを探すか」


「そう都合よくありますかね」


「なけりゃビルの壁でも登るか」


「ぜ、絶対に嫌です!」


 沢田と上原は六階の探索を始めた。

 階段から離れた途端、二人の鼻孔に飛び込んできたのは濃密な血の臭いだった。

 積み上げられたゴミが遮蔽物となり、廊下の奥や各部屋の様子が分からない。


(やべえな……下の階に行くべきか……いや、どこも一緒か)


 沢田は拳銃の引き金に指をかける。

 その時、前方の扉が開いた。


 ぺたぺたと音を立てて現れたのは、血だらけのタンクトップを着た屈強な男だ。

 短パンにサンダルというラフな格好で、顔は穴の開いたガスマスクで隠している。


 上原は怯えた様子で後ずさった。


「せ、先生……」


「目を合わせるな。声も出すな。あいつを刺激せず、静かに引き返せ」


 会話中、ガスマスクの男は壁に立てかけられた大型のハンマーを掴み取る。

 それを肩に担いで二人に近付いてきた。


 沢田は素早く拳銃を構えて警告する。


「動くな。撃たれてえのか」


 男は止まらず、むしろ咆哮を上げて駆け出した。

 鳴り響く銃声。

 弾丸は男の肩に命中したが、その動きを止めるまでには至らなかった。

 突進を強行した男は、ハンマーを振り回して二人に襲いかかる。


「無理だ、逃げるぞ!」


「はいっ!」


 沢田と上原は踵を返して走り出した。

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― 新着の感想 ―
こえぇぇ、大ハンマー持った怪人とか嫌すぎる。ホッケーマスクでは無いだけ救いかな。
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