第81話 最上階
崩れ落ちた田宮は、頭部の大部分が欠損していた。
辛うじて残った眼球は虚空を眺めている。
爆散した破片を浴びた上原は、顔面蒼白で震えていた。
「あっ、うあ……お、お父さん……が……」
沢田が上原の肩を掴んだ。
彼は乱暴に揺さぶって呼びかける。
「なあ、おい! しっかりしろ!」
「先生……」
「怪我してないか!? 無事なんだな!」
「へ、平気です」
「じゃあさっさと進むぞ! 俺だって混乱しているが、こいつのことを考えるのは後回しだ!」
沢田は二十五階へと続く扉に触れる。
彼は力任せに開こうとするがびくともしない。
「くそ、鍵はどこだ!?」
「確か指紋認証って言ってました……」
上原が恐る恐る手を伸ばし、扉の端末に指を当てる。
電子音が鳴り、扉が自動で開いた。
沢田は上原の手を引いて先へと進む。
白い階段を駆け上がりながら、彼はふと呟いた。
「お前の指紋が登録されてるってことは、やっぱり親子なんだろうな」
「…………」
上原は下を向いて黙り込む。
己の失言を認識し、沢田は誤魔化すように言葉を続けた。
「五分後にビルが爆発するらしいからな。あいつの思惑に乗るのは癪だが、お前が管理者になって止めるしかねえ」
「えっ、でも私を管理者にするための嘘かもしれませんよ」
「そうだといいんだがな。もし本当だったら全員死ぬ。リスクを考えりゃ阻止した方がいい」
「実に懸命な判断ですね! 説得する手間が省けて助かります!」
二人の背後から元気な声が飛ぶ。
笑顔で追走するのはコレクターだった。
コレクターは髪の分け目を撫でつけながら解説する。
「管理者の田宮さんは有言実行の権化です。こういう時につまらないブラフは使いません。五分後のビル爆破は事実でしょう」
「なんでお前までついてきてるんだ!?」
「二十五階に侵入する機会なんて滅多にありませんから! お宝を入手するチャンスを逃がすわけがないじゃないですか!」
コレクターは目を輝かせて主張する。
場違いな熱意を目の当たりにして、沢田はそれ以上の言及を控えた。
階段を上がった先には、モダンな内装のフロアがあった。
これまでの混沌とした空間とは異なり、清掃も行き届いている。
死体や血痕はなく、鼻の曲がるような異臭もせず、まるで別世界のように整然としていた。
「すげえな……ここが二十五階か」
感心する沢田は一本道の廊下を走る。
廊下には三つの扉があった。
プレートにはそれぞれ1号室、2号室、3号室と表記されている。
沢田はすぐさま封筒の依頼内容を思い出した。
「朽津間ビル25階3号室……ここだっ!」
沢田は目の前の扉をタックルで開いた。




