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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第77話 扉

 信者が数人がかりで男をリンチする。

 指で眼球を抉られたり、刃物で腹部を切り裂かれている者もいた。

 奪った銃を掲げる信者は、何事かを喚きながら乱射する。

 味方に当たろうがお構いなしだった。


 混沌とした状況の中、上原を担いだ古賀が疾走する。

 すぐさま信者が押し寄せるも、鋭い打撃で首の骨を砕かれて沈んでいく。

 飛び散った血が顔にかかり、上原が声を上げた。


「うわっ!?」


「死にたくなかったら、じっとしてな!」


 年齢を一切感じさせない速度で古賀は駆ける。

 振り返った彼女は、仲間の男達に命令を飛ばした。


「このまま道を戻って時間稼ぎだ! 死ぬんじゃないよ!」


「りょ、了解っ!」


「まったく、簡単に言ってくれるぜ……!」


「生き延びて酒飲むぞォッ!」


 奮起した男達は信者を振り払い、全速力で逃げ始めた。

 信者は半狂乱になって追いかける。

 わざと騒ぎ立てる男達に気を取られたせいで、古賀と上原に注目する者はいなかった。


 その間に古賀はフロアの奥にある通路に辿り着く。

 古賀は通路の入り口を閉めて施錠する。

 誰も侵入できないようにしたところで、彼女はようやく上原を降ろした。


「重いよ。もっとダイエットしな」


「す、すみません……」


 謝る上原は通路を見渡す。

 幅三メートル、長さ十メートルほどのそこには、無数の絵画が並べられていた。

 ベッドや本棚といった生活用品の他に、水や保存食も置かれている。


「ここは野村の私室だよ。最上階に近い場所を独占したかったんだろうね。つまらない男だ。昔はあんなんじゃなかったんだが……」


「仲が良かったんですか?」


「一緒にビルで暮らしてた仲だよ。あんたの母親が死んだ時、狂って宗教を始めたんだ。精神的に限界だったんだろうね」


「…………」


 通路の奥には、豪勢に飾り立てられた扉があった。

 その扉こそ、二十五階に繋がる道だった。


「この扉は指紋認証でしか開かないんだ。登録されてある指紋は管理者とその娘だけ……つまりあんたには管理者の資格があるってわけさ」


「私だけ……」


「どうして娘の指紋まで登録したのかは知らないがね。いずれ継がせるつもりだったのかもしれないね」


 古賀は顎を撫でつつ推察する。

 上原は複雑な表情で自分の指を見つめた。

 まだ見ぬ父親に対し、彼女は得体のしれない不安と恐怖を抱いた。

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