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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第76話 逆鱗

 古賀と祭服の男は、凄まじい速度で互いに拳を打ち込む。

 全体的に男の猛攻が目立つが、古賀は最小限の動きで打撃を捌いていた。

 古賀の攻撃は未だ直撃していないものの、男に少なからずプレッシャーを与えている。


「隙だらけだよ」


 低い姿勢から繰り出された裏拳が男の腕を弾いた。

 男は即座に膝蹴りで反撃するも、古賀は余裕をもって受け止めてみせる。


 その展開に苛立ったのか、男は目を血走らせて吼えた。


「古賀ァッ!」


「邪魔するんじゃないよ」


 古賀の掌底が男の顎を掠める。

 衝撃が脳を揺さぶり、男がよろめいた。

 そこに追撃の蹴りが襲いかかり、無防備な鳩尾にめり込む。


 膝をついた男は吐血して呻く。

 目の焦点が合っておらず、苦しげに腹を押さえていた。


「ぐっ……」


「そこで寝ときな」


 古賀のアッパーカットが男の顔面に炸裂した。

 宙を舞った男は壁に激突して動かなくなる。


 それを見届けた古賀は、仲間の男達に指示を出した。


「後片付けは頼んだよ」


「うっす」


「任せてください」


「今日も楽な仕事だぜ」


 古賀の仲間達は、軽口を叩きつつ発砲した。

 彼らは接近してくる半裸の人々を射殺し、上原を護衛しながら進んでいく。

 床に倒れる死体を見て、上原が古賀に問う。


「あの、この人達って何なんですか」


「朽津間教の信者だよ。このビルそのものを信仰してる変人の集まりさ。特に二十五階を神聖視して、誰も近寄れないようにしているんだ」


「なるほど……」


「さっきアタシに殴りかかってきたのが代表の野村だ。執念深い性格で――」


 説明の途中、一発の銃弾がアメジストの結晶を砕いた。

 甲高い音が鳴り響き、発砲した男は渋い顔をする。


「うわ、しまった……」


 直前まで背を向けてフロアの奥へ逃げていた信者がぴたりと止まる。

 彼らはアメジストの残骸を見た瞬間、豹変した。

 信者は鬼のような形相で古賀達を睨みつける。


「壊した」


「罪だ」


「罰を与えろ」


「逃がすな」


「殺せ」


「殺せ」


「殺せ」


「殺せ」


 怒り狂う信者達が、一斉に古賀達へ突進した。

 男達は慌ててフルオートの銃撃を浴びせるが、彼らは死を恐れずに走る。

 先頭集団を盾にした信者達は、間合いを詰めて古賀達に掴みかかることに成功した。

 そのまま男達の銃を奪って殴る蹴るの暴行を始めた。

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