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朽津間ビル25階3号室  作者: 結城 からく


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第72話 コレクター

 沢田は眼鏡の男にレンチを向ける。


「誰だ」


「お初にお目にかかります! わたくし"コレクター"と申しまして、この朽津間ビルで商いをしております!」


「商いだと……?」


 顔を歪めた沢田は、田宮に目で問う。

 田宮は控えめな口調で説明した。


「か、彼は殺人鬼の遺品を愛する収集家です。コレクションに見合う物を渡すと、対価として物資や情報、人材を提供してくれます」


「そんな変人までいるのか……」


「いやはや、お恥ずかしい限りでございます!」


 コレクターを名乗る男は、嬉々として前に進み出る。

 レンチを向けられた状態でも平然と全身を晒してみせた。

 沢田は微塵も油断せず、いつでも攻撃できるように意識して尋ねる。


「それで変態野郎が何の用だ」


「ヨネさんの刀を譲っていただきたいのです。わたくしのような人種にとっては喉から手が出る逸品でして」


「見返りはあるんだろうな?」


「もちろんでございます! あなたの要望に可能な範疇で応えましょう!」


 コレクターは胸を張って宣言でした。

 沢田はまっすぐな瞳で述べる。


「じゃあ俺の助手……上原の居場所を知りたい。情報を寄越せ」


「ええ、いいですよ!」


「は……?」


「あなたがビルに入ってきた際、一緒にいた女性の方ですよね。位置情報は概ね把握しております!」


 コレクターは「こちらへどうぞ!」と言って勝手に歩き始めた。

 沢田はついていくか迷った後、舌打ちして彼の後を追う。

 田宮はヨネの刀を拾ってから追従した。


 移動中、沢田は険しい表情を崩さず、コレクターの背中を睨みつけていた。

 その様子に田宮が不安そうに訊く。


「どうしました……?」


「話がスムーズに進みすぎだ。どう考えても怪しすぎるだろ。そもそも上原の居場所をなぜ知っている。俺達を騙す罠か、それともあいつ自身が上原を……」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


 殺気立つ沢田を慌てて田宮が止めた。

 沢田は乱暴に制止を振り払う。


「何だよ」


「コレクターは嘘が大嫌いなんです! 彼はビル内でも中立的な立場で、率先的に危害を加えるタイプではありません」


「だからと言って、上原の居場所を知ってるのはおかしいだろ」


「か、彼の情報網は一流です……それでチェックしていたのかと」


 田宮の推測を聞いた沢田は唸る。

 彼なりに説明を吟味し、どうすべきか判断に悩んでいるようだった。


「とにかく、ここは穏便にいきましょう……! コレクターの協力が得られるのは貴重なのでっ!」


「……分かった。我慢する」


 沢田は渋々と頷く。

 一連のやり取りを聞いていたコレクターは、髪の分け目をなぞって笑った。

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